ブロムシュテット

2012年09月27日


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世界屈指の名門オーケストラ、シュターツカペレ・ドレスデンを指揮してブロムシュテットが成し遂げた金字塔、シューベルト交響曲全集録音から2大名曲のカップリング。

まず、《未完成》はその昔に流行したウィーン情緒を強調した演奏でもなく、最近の古楽器演奏に代表されるような奇抜な響きを追い求めたものでもない。

スコアに書かれた情報を可能な限り忠実に再現したものであり、非常に中庸な解釈とも言える。

テンポの配分も適正であり、オーケストラの渋く落ち着いた音色も魅力的である。

一方の《ザ・グレイト》の解釈の基本は同じである。

特に印象的なのは第2楽章の中間部の清潔な表情であろう。

過度なロマン的表現は、それこそいっそう凡長な印象を与えかねない。

第4楽章のきっちり整えた響きも、たいへんに新鮮である。

音楽そのものは完全にロマン派なのだが、シューベルトの基本はやはりモーツァルトやベートーヴェンなどの古典派の枠組みである。

それを謙虚に描いたのがこの演奏ではないか。

《未完成》に聴かせるメロディアスな歌、《ザ・グレイト》にみせる緊密な構築。

これほど気高く、交響的な美感をもって、シューベルトの本質を衝いた演奏はない。

ブロムシュテットとシュターツカペレ・ドレスデンのコンビが残した最高の成果である。

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2012年08月05日


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このコンビの来日公演があまりにすばらしかったので、思わず買ってしまったが、予想通りの名演であった。

ゲヴァントハウス管の魅力満載のディスク集で、決して優れたソリストを擁している(ベルリン・フィルのように)というわけではないが、全体としてとても性能が高く表現力が高い。

シャイーが振ると「巧い」だけのゲヴァントハウス管が、魂の音楽を奏でており、とにかく実に細部に至るまで念が入っている。

決して情緒に浸らないところはブロムシュテットらしいが、それでいて表情の彫りが深くダイナミックだ。

昨今、特にシャイーが就任してからのゲヴァントハウス管は、どうも響きが雑になってしまった。

しかし、ブロムシュテットの時代は違う。

オケのポテンシャルを自然体で引き出すブロムシュテットに引導され、知・情・意の見事な均衡を見せている。

特にメンデルスゾーンが素晴らしい。

メンデルスゾーンはこのオケの十八番中の十八番として知られているが、いくらそのような曲でも、指揮者の解釈如何によっては名演にも駄演にもなり得てしまう。

例えばコンヴィチュニーは遅めのテンポをとっており、仄暗くも壮大なスケールに仕上げているが、見方によっては緊張感の不足を感じてしまうだろう。

最近出たシャイーも、歴史考証自体は面白いが、オケの響きが乱雑で、テンポも拙速に過ぎている。

ではブロムシュテットはというと、彼らしく“中庸”である。

しかし決して面白みに欠けることはなく、キビキビとした運びで、よく躍動し、しかも歌うところではよく歌うといった具合に非常にバランスがよいのだ。

他に、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーといったドイツ本流の作曲家も秀逸。

少しの奇の衒いもない、正攻法の表現は、個性ばかり出そうと躍起になる余り曲の魅力を損ねることの多い昨今の音楽界にあって、大変貴重と言えよう。

録音も、いぶし銀の重厚なサウンドをよく捉えた硬派な仕上がりである。

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2012年06月18日


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ブロムシュテットのブラームス「第1」というと、N響への客演が記憶に新しく、そちらを絶賛される方もいる。

しかし、映像を確認して頂きたいのだが、ブロムシュテットと共にもう一人、著名なヴァイオリニストが客演していたことにお気付きだろうか。

そう、シュターツカペレ・ドレスデンの首席コンサートマスター、ペーター・ミリングである。

あれはN響の実力というよりも、シュターツカペレ・ドレスデン縁の2人に支えられた所以の名演だったのだ。

さて、当CDはN響のそれより十数年前のシュターツカペレ・ドレスデンの録音だが、やはりN響とシュターツカペレ・ドレスデンでは響きの格が違う。

勿論N響も核心に迫っていたが、シュターツカペレ・ドレスデンの内声部の充実ぶりは追随を許さない。

音の層が幾重にも折り重なるような独特のサウンドであり、どんなに微弱な音にも魂を宿らせる。

全ての音が有機体のように相互作用しつつ、しかも全体のまとまりにも事欠かないという希有な合奏能力!

もっともライヴゆえ、ややアンサンブルが乱れるところもあるが、作品に真摯に向き合う姿勢は、ややするとルーティンワークになりがちな有名曲でさえ、今まさに出会うかのような新鮮さを感じさせる。

音質はややヒスノイズがあるものの概して良好である。

因みに“シュターツカペレ・ドレスデンでブラームスの「第1」はザンデルリンクだけ”というのは誤りで、実際にはケンペ盤やハイティンク盤もある。

個人的には、廃盤となったハイティンク盤の再発売を望むが、ブロムシュテット盤も中々聴かせると思う。

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2011年09月08日


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2005年7月1日〜2日にかけて行われた、ブロムシュテットのカペルマイスター退任記念コンサートのライヴ録音である。

旧東ドイツの名門オーケストラと新しい世代のドイツ系指揮者ががっぷり組んだ構築あふれる名演。

ゲヴァントハウス管弦楽団の美しい響きとブロムシュテットの棒の精彩とが、高次元で合体している印象が素晴らしい。

深みのある弦と金管とのブレンドが美しく、落ち着いた佇まいをもった、端然とした演奏である。

ウィーン風のふくよかで雄大ながら愚鈍な趣のブルックナーともドイツ風のどこか無骨な巨人のようなブルックナーとも違う、ひきしまってガッチリした壮大かつ精緻なブルックナーが聴ける。

すこぶる格調の高いブルックナーでり、精緻な構図の中ですべてが自然体にまとめ上げられ、味わいとこくに満ちた世界が展開している。

豊かな叙情を第一の特色とした演奏といってよいと思うが、同時に金管のフォルティッシモも実に重厚で強烈、この交響曲の魅力を過不足なく引き出す要因となっている。

精緻さと質感を十二分に備えた名演である。

加えてテンポ設定にも説得力があり、全曲を通じきわめて適確な曲運びを示す。

アンサンブルそれ自体が自発的に有機的な音楽を歌っているが、指揮者もゆたかな感興で音楽を起伏させている。

最良の意味での普遍的な演奏と評するべきか。

これは、神と対話するオルガン的な宗教サウンドのブルックナーではなく、コンサート・ホールで交響曲としてサウンドさせるシンフォニック・ブルックナーの理想形のひとつかも知れない。

特に終楽章の大聖堂のような充実した構築性は素晴らしい。

こうした自然体のブルックナーは、探してみるとその実なかなか見当たらない。

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2010年12月02日


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ブロムシュテットが、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督に迎えられた時、その顔合わせによる最初のレコーディングにヒンデミットの作品を選んだということはきわめて興味深い。

1995年の生誕100年を通じてその存在が再認識されたとはいえ、ヒンデミットの音楽は、一般的にいってわが国では、まだまだ充分に評価され、認められているとはいえない。

それでも、いくつかの作品については眼が向けられてきたが、オーケストラ作品の中で最も親しみやすいのは、やはり《ウェーバーの主題による交響的変容》であろう。

それは、彼がいわば"おもしろい音楽"を書いた時期に属するが、ブロムシュテットもそれを親しく聴かせてくれる。

サンフランシスコのオーケストラが、完全に磨き上げられ、ソロイスティックな面とアンサンブルが、ほどよいバランスと明快さをもって、密度の高い構成感とともに好演を生み出しているのである。

明るく楽しい面での技巧性という意味では、ブロムシュテットの新しいヒンデミット解釈の特徴があると感じられる。

ヒンデミットの録音を積極的に行っているコンビであるが、《画家マチス》の柔らかく繊細で、感受性に富んだ演奏には特筆に値する新鮮さが感じられる。

ブロムシュテットならではの解釈であり、サンフランシスコ響ならではの響きだ。

ふくよかな弦の響きを生かしながら、管の潤色を充分に施した第1楽章から出色の出来ばえである。

繊細な弦が絡む第2楽章も素敵だ。

ぐっとスケール感と重量感の増す第3楽章の扱いも見事で、息も長くたっぷりと歌われる旋律は、ヒンデミットが決して一介の無味乾燥な即物主義者にとどまらなかった事実を裏づけているようで興味深い。

そうした特徴は《葬送音楽》でさらに内容的な深まりを示している。

それに続き、中でも最も聴き応えのあるものは《いとも気高き幻想》などである。

オーケストラのアンサンブルはよく整えられており、独特の対位法的な書法も線的に描き出すと同時に、音楽の構成上の均衡や一つの抒情的要素も生かしながら、3つの楽章をじっくり聴かせてくれる。

終曲のパッサカリアの構成的な運びは、とくに魅力的である。

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2010年11月05日


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第40、41番に続くブロムシュテットのモーツァルト/交響曲シリーズ第2作。

シュターツカペレ・ドレスデンの特徴的な音質をよく示していて、柔らかな音ですすめられている。

ブロムシュテットも、この特徴を音楽面で生かすのに成功していて、角ばらない、柔らかさと滑らかさのある音楽を作っている。

両曲の両端楽章にもそういうことがいえるし、それでいて表現力は極めて豊かであり、緩徐楽章には優しさの中に特に燃えるような激しさがある。

録音のロケーションが教会ということもあるのだろうが、オーケストラの響きが若干ふわふわと聴こえる点で評価が分かれるかもしれないが、しかしブロムシュテットの表現そのものは極めて力強い。

特に《プラハ》は、堂々とリズムを刻んでゆく第1楽章の重量感といい、続くアンダンテの語り口といい、むしろ硬派の演奏になっている。

そのあと、引き締まったフィナーレがたいへん美しい。

第39番もスケールの大きな演奏だが、ここでは世界屈指のオーケストラの固有の魅力がいちだんと物を言っている。

中でも第1楽章導入部の後半やメヌエットのトリオなどには、それこそはっとするような美しい瞬間が続出する。

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2010年08月18日


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旧東独を代表する名手ペーター・ダムの代表盤。

大変生真面目なモーツァルトである。

いくぶん遊びやゆとりに乏しい感じはあるものの、緩徐楽章などそうした飾り気のなさが一種の素朴な美しさとして聴き手の心を打つ。

ダムの置かれた環境(旧東独)が、過小評価の一因となっているのであれば悲劇である。

ダムは20世紀屈指のホルン奏者に数えられるべき逸材である。

音色やテクニックはいうまでもなく、音楽作りの旨さには、熟練だけでは到底及びもつかぬ天賦のものを感じる。

ダムのソロは響きが柔らかく、豊かな広がりを生み出す。

解釈も素直でソノリティともども圧迫感がない。

そのために音楽は非常に温かい雰囲気を伴って再現される。

テクニックは完璧だが、それを感じさせないところに彼のすぐれた個性がある。

テンポの設定にも無理がなく、いたずらにソロをフィーチュアする意図が感じられない。

このような演奏で聴くと、モーツァルトの音楽が実に人間的な親しみを感じさせる。

ダムのモーツァルト協奏曲集には、もっと新しいマリナー指揮アカデミーとのレコーディングもあるが、こちらは彼がドレスデンの首席になってまだ日も浅いころのもの。

そもそもシュターツカペレ・ドレスデンの美しいホルン・セクションを聴くとああダムの音だと思うくらいだから、このソロとオーケストラがしっくりと溶け合っているのは当然と言うべきか。

それにしてもこのオケは素晴らしい。

ダムのソロは決して派手ではないし、テクニックもテクニックとして目立つ類いのものではない。

しかしホルン固有のまろやかな音色や、華やかさと何とも言えぬユーモアが同居するこれらの曲の味わいを、心ゆくまで楽しませてくれる演奏である。

また、モーツァルトのホルン協奏曲を学究的な態度でとりあげたものとして、モーツァルトの研究家やこの曲の演奏を志す人にも貴重なCDといえる。

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2009年12月30日


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ブロムシュテットの、よりモダンで力強く、多彩な表現をもった個性的指揮者としての主張が明確に表れている。

それぞれ異なった作風と内容を持つニールセンの6曲の交響曲で、ブロムシュテットはそのひとつひとつの特質を鮮明に表す演奏を行っており、ニールセンの音楽的道程を深く印象づけている。

表面的な音の効果にとらわれず、その内面にある孤高の本質をきびしく見据えているブロムシュテット以上に、ニールセンの交響曲を演奏できる指揮者はいないであろう。

ブロムシュテットは作品の本質をよく見きわめ、このニールセンの第1番と第6番の2つの作品の間に横たわる30年の歳月を実感させている。

第1番は内部に秘められた情熱を強い運動性で表出しており、すべての表情をよく手中に収め、デュナーミクも効果的だ。

第6番も楽想をきめこまかく表出しながらも、ディティールだけにとらわれず全体の見通しがよく、各変奏はそれぞれ興趣に満ちた表現で、この曲の真髄を知らしめる優れた演奏である。

第2番は強い確信をもった演奏で、強靭な意志力が曲全体にみなぎり、オケも重量感のある響きで指揮者に応えている。

第3番は動感豊かな、荒々しいといえるばかりの演奏だが、全4楽章が緊密・堅実に表現されているのは、やはりこの人の見識といえよう。2人の独唱者も好演。

第4番では終末的クライマックス形成のティンパニ、第5番では全編で重要な役割を果たしている小太鼓が、ニールセンのモダニズムを象徴しているが、管・打楽器に卓越した奏者を擁するアメリカのオケの起用が図に当たって、面白く楽しめる演奏が生まれた。

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2009年08月19日


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イプセンの戯曲《ペール・ギュント》への付随音楽は全26曲の構成。そのうちブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団による録音は、20曲を抜粋し、独唱、合唱、俳優による語りを加えて物語の全貌を把握できるように工夫されている。

生まれはアメリカだが、スウェーデン国籍を持ちストックホルムで教育を受けたブロムシュテットにとって、ノルウェーの国民的作曲家グリーグの音楽は近しく感じられるに違いない。

1988年にサンフランシスコ交響楽団を指揮して入れたディスクは再録音にあたる。

1977年にシュターツカペレ・ドレスデンを指揮して入れた原語による抜粋盤は組曲の形での演奏が広く行なわれていた当時、まさに画期的なものだった。

この旧盤を通して作品の魅力に開眼した人も少なくないだろう。

重厚かつ艶やかな音色を生かしたドレスデン盤もきわめて充実したものだった。

しかし、サンフランシスコ交響楽団の澄み切った音色はより作品の世界に似つかわしい。

また、そこには11年の間のブロムシュテットの円熟も如実に反映されている。

世界を駆け巡るペールの冒険譚をブロムシュテットは生き生きと描き出すとともに、北欧の音楽ならではの心に染み入るような抒情を醸し出す。

ウルバン・マルムベルイ、マリ=アンネ・ヘガンデルの独唱も北欧人の強みを生かしたすぐれたもの。

ノルウェー民話の世界に心おきなく浸ることが出来る名盤だ。

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2009年05月08日


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数多いベートーヴェン交響曲全集の中でも規範的な表現で、作品の原像をそのまま表出しており、作品自体に音楽を語らせている。

そこにブロムシュテットの自己主張があるばかりでなく、随所に豊かな感興を表している。

全9曲の全てが全く歪曲のない古典美の極致を描いており、ムラのない演奏を作っている。

オケの古雅な美感と洗練された精緻なアンサンブルも特筆すべき美しさだ。

世界最古のオーケストラで、400年という歴史をもつ、シュターツカペレ・ドレスデンならではの、落ち着いた響きが魅力の演奏である。

やや淡白ではあるが、作為的なところが少しもなく、旋律をごく自然に歌わせている。

弦楽器のひなびた音色と、やわらかな管楽器のからみあいが素晴らしく、全体にあたたかみのある演奏となっている。

指揮者の個性よりも、オーケストラの自発性が、巧みに生かされた好演だ。

ことに木管楽器は、このオーケストラ独特の響きで、そうした特徴は「田園」の第2楽章によくあらわれている。

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2009年03月26日


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シベリウスの交響曲全集では、ブロムシュテット盤がオーケストラの技巧も録音もとびきり優秀だ。

作品への愛情と理解ではベルグルンドにひけをとらず、彫りの深い明確な造形で、スケールの大きい名演となっている。

ブロムシュテット/サンフランシスコ響の一つ一つの音にこめられた透明感と陰影、磨き抜かれた音の壮麗さと奥深いダイナミズムによって繰り広げられる音楽の世界は、叡智と美の結晶体を思わせる。

外国のオーケストラにとってシベリウスは必ずしも理解し易いものではない。

しかしブロムシュテットはまず第4番と第5番を与え、彼の豊かな経験と学識、自身によって立つ北欧人の感性によって見事にしかも最高にシベリウスの世界を実現した。

全体に骨格がたくましく、ニュアンスが豊かな音楽に仕上がっている。

第4番は重厚さと独自の洗練性が特色で、第3楽章ではひとつひとつの楽想を吟味するように歌わせ、孤高の哀愁を漂わせる。

終楽章ではグロッケンシュピールの代わりにテューブラーベルズを用いているのがユニークだ。

第5番も秀演で、何よりもこの曲が牧歌的様相を持っていることを発見させられるのが興味深い。

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2009年03月07日


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このコンビによる初のモーツァルト/交響曲録音。

心が悦びで満たされ、聴き終えたあとの気持ちがすばらしく豊かになる演奏。

第40番は、テンポが遅く重厚すぎると感じられる部分もあるが、この交響曲にある悲愴美を余計なことをしないで自然に引き出しているのが良い。

とりわけ第1楽章第1主題の歌は胸に突き刺さる。

1音たりとも心から離れて浮遊する音のない、目のしっかりつんだ織地のよう。

表現は一貫して古典的で、特に両端楽章の端然とした豊かな表現は真に古典的なモーツァルトを聴く思いがする。

「ジュピター」は、ゆったりとしたテンポを基本にしたスケールの大きい演奏で、19世紀のモーツァルト観の現代版ともいえるロマンティックなものだが過剰な表現にはなっていない。

また、表現自体に丁寧かつ自然な流れがあるので説得力がある。

緩徐楽章の悠々たる優美さも同様で、メヌエットのトリオなどは、2曲ともまさに古典的宮廷舞曲の脈をひくリズムとテンポだ。

モダン・オーケストラでならこのような解釈もこの交響曲の魅力の一つとして十分に楽しめる。

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2008年10月15日


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アルプス交響曲は、登山の一日を描写する内容を持っている。そのため"頂上"など中間部に最大のクライマックスがある。

しかし、それは飽くまで音量的な盛り上がりであって、内容的には"日没"以下の後半が真のクライマックスと言える。

その点に加え全体が単なるパノラマ的描写だけではなく、純粋な音の組み立てのドラマとして如何に再現されているかも選ぶポイントとしたい。

ブロムシュテットの演奏は地味ながら強固な力感と、必要にして十分な緊張感をもって作品の本質に迫る。

ブロムシュテット盤のサンフランシスコ交響楽団は優秀で、その抜けの良い響きがブロムシュテットの引き締まった解釈と相まって、彫りの深い充実した演奏を生んでいる。

「アルプス交響曲」は膨大な編成によるオーケストレーションを見事に整理した上で、ふくよかさと明晰な響きを両立させ、ディティールを入念に表出している。

サウンド志向の人も満足させる実に豊麗な音質も特筆もの。

「ドン・ファン」も作品ののびやかさと音の繊細な効果をよく表現しており、劇的な力感も強い。

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2008年09月29日


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ブロムシュテット初のR.シュトラウスである「英雄の生涯」は、実に見事なR.シュトラウスの音の世界を作りあげている。

そのよく彫琢されたまろやかな響きは、まことに素晴らしい。

最もよい例が「英雄の敵」で、細部にまで神経を行き届かせながら、緻密に音楽を組み立てている。

特に感銘を受けた「英雄の伴侶」では、ミリングのヴァイオリン・ソロがよいムードを作り出していた。

指揮者と楽員の精神的一致が見事に開花した、快演といってよかろう。

「ツァラトゥストラ」はブロムシュテットの音楽的な成熟を感じさせる。

全体にテンポを遅めにとり、じっくりと腰を割り、1音1音かみしめるよう丹念に仕上げている。

またシュターツカペレ・ドレスデンも、まさにいぶし銀の音のすばらしさをきかせる。

「ドン・ファン」も冒頭のホルンから聴き手をひきつけ、旋律を十全に歌わせながら、しだいに興奮をかきたてていく語り口のうまさには感嘆させられる。

「メタモルフォーゼン」はややゆっくりとしたテンポで丹念に練り上げており、ブロムシュテットの表現力の豊かさもさることながら、このオケの重厚な響きに魅了される。

「死と変容」はひとつひとつの音を大切にしながら、生と死のはざまにある人間の心情を克明に描出している。

「ティル」は各場面を精緻に描出しているがあまりにも慎重になりすぎてか、多少生気に欠けるのが惜しい。

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2008年01月15日


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ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンが、気迫のこもった渾身の名演を聴かせる。

オーケストラの洗練されたアンサンブルを御して、ブロムシュテットは彫りの深い、宗教的ともいえる瞑想的な表現で迫る。

この指揮者は従来淡白な表現に特色があったが、ここではまるで別人のような燃焼を示しているのである。

彼もハース版を用いながら、ノヴァーク版の打楽器を盛大に鳴らしている。

だが単なる楽天主義というか、極楽トンボではなく、ドラマティックな効果を発揮しているのである。

第4番は実に壮麗な演奏で、ブロムシュテットの解釈には誇張や無用の作為がない。

しかも響きや表情が確信にみちあふれている。

特にテンポがよく、一種独特の推進力を感じさせるが、同時に金管の処理に厚味と華麗さをもっているのが、作品にふさわしい。

従って、開始から終結まで文字通り交響的であり、威容と抒情を兼ね備えている。

もちろん、こうした演奏を可能としたのは、シュターツカペレ・ドレスデンあってのことである。

第7番もすばらしく均整のとれた造形とまろやかにブレンドされた響きによる、充実した素晴らしいブルックナーである。

冒頭のトレモロから磨き上げたように彫りの深い表情をもち、第1主題は心にしみ込むようなニュアンスをもっている。

最強音でも鋭くならず、それでいて広大なディナーミクを表出している。

精妙でありながら、しかも人為の屈折を微塵も漂わせない。

これほど晴朗なブルックナーは滅多にない。

これはブロムシュテットの数多い録音の中でも、特筆される名演奏といえると思う。

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