R=コルサコフ
2020年03月08日
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キリル・コンドラシンがコンセルトヘボウ管弦楽団を指揮したオーケストラル・ワークは、ライヴ録音でフィリップスからの8枚とターラ・レーベル3枚の都合CD11枚分が残されている。
それらは結果的に両者の緊密なコラボの集大成となって、それぞれのコンサートが彼らの実力を示して余りあるものだ。
しかしセッション録音となるとここに収録された1979年のリムスキー=コルサコフの『シェエラザード』が唯一になる。
地元オランダでのコンドラシンのレコード制作販売が商業ベースに乗る前に彼が亡くなってしまったからだろう。
カップリングされたボロディンの交響曲第2番は1980年6月のライヴで、フィリップスからリリースされた8枚のライヴ集から同音源が使われている。
録音状態はフィリップスが誇った切れの良い音質で、俄然この『シェエラザード』が優っている。
さながらオリエントへの神秘な旅といった印象が強く残る演奏で、荘重な開始と共にエキゾチックな曲想が優雅にきめ細かく再現され、全体としてスケールの大きなドラマに発展させているのは流石だ。
冒頭と各楽章の始まりにヴァリエーションで繰り返されるヴァイオリンのテーマはコンサート・マスター、ヘルマン・クレバースのソロだが、繊細でいくらか冷やかな音色がかえってこの作品に特有の夢幻性を開いていて秀逸だ。
また曲中至るところに現れるフルート、オーボエ、クラリネットやファゴットなどの華麗なソロは当時のコンセルトヘボウの首席奏者達の水準の高さとアンサンブルの巧妙さを示している。
これは歴史的録音の名に恥じない名盤としてお薦めしたい。
一方ボロディンは客席からの咳払いや拍手等が混入したライヴなので、その点割り引いて鑑賞しなければならないが、音質自体はホールの響きを良く捉えた良好なものだ。
こちらもコンドラシンが最も手中に収めたスラヴ物だけあって、ロシア国民楽派の意気込みを象徴するような劇的な開始が特徴的だ。
また第3楽章アンダンテの『中央アジアの平原にて』をイメージさせるホルン・ソロの導入による如何にも大陸的な抒情表現が美しいし、終楽章の熱狂的な民族舞踏にもコンドラシンのスラヴ魂が感じられる。
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フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。
2017年06月10日
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プラガ・ディジタルスからのジェニュイン・ステレオ・ラブ・シリーズの新譜で、リムスキー=コルサコフの作品3曲が収録されている。
ピエール・モントゥー&ロンドン交響楽団の『シェエラザード』が目当てで買ったが、他の2曲の室内楽も機知に富んだ作曲家のアイデアと才能を示していて予想以上に楽しめるアルバムになっている。
弦楽のための六重奏曲及びピアノと管楽器のための五重奏曲はライナー・ノーツによればどちらもリムスキー=コルサコフがロシア音楽協会のコンクールのために提出した作品で、優勝は逸したが音楽性の豊かさと若々しい意欲的な作風に魅力がある。
前者は屋外で演奏する気の利いたセレナードのような清涼感があり、弦楽トリオをふたつ組み合わせる斬新な発想と第2楽章フガートではバッハの名前B、A、C、Hの4つの音を使った手の込んだ二重フーガ、第3楽章はイタリアの軽快な民族舞踏タランテッラ、更に第4楽章ではスラヴの抒情をクロスリズムの伴奏の上に歌わせるというかなり凝った作品だ。
演奏者はコチアン四重奏団にヨセフ・クルソニュのヴィオラとミハル・カニュカのチェロが加わる編成で、明快かつ溌剌とした推進力が見事な演奏だ。
一方後者は一種のサンプラーで、このCDの収録時間がトータル82分15秒とかなり詰め込んでいるにしても、第2楽章だけなのが惜しまれる。
プラハ木管五重奏団のメンバーにピアノのイヴァン・クランスキーが協演していて、管楽アンサンブルはどことなく垢抜けない音色だがスラヴの土の薫りをイメージさせるローカル色が聴きどころだろう。
モントゥー&ロンドン交響楽団の『シェエラザード』は1957年の良く知られたデッカ音源で、初期のステレオ録音だが新規のリマスタリング効果で分離状態の良い鮮明な音質が再現されていてノイズも殆んどなくなっている。
寓話「アラビアン・ナイト」の世界を説明的ではなく、音のみによって十分に描いた巨匠の腹芸のような含蓄の多い名演で、色彩豊かに、しかしナチュラルに表現している。
曲中4回に亘って登場するヴァイオリン・ソロによるシェエラザードのテーマはアイルランドの名手ヒュー・マクガイヤーの妖艶というよりは、むしろ清楚で可憐な表現に好感が持てる。
この作品はヴァイオリンの他にもフルート、オーボエ、コーラングレー、クラリネット、ファゴットやチェロなどのソロも大活躍する華麗なオーケストレーションに仕上げられているが、モントゥーのテンポは快速で、部分的な拘泥を避けてストレートな物語性を描き出し、クライマックスでのブラス・セクションの惜しみない咆哮も効果的だ。
この辺りにも彼の多くの新作初演の経験から鍛えられたスコアへの鋭利な洞察力が示されている。
レギュラー・フォーマットだが古いCDと聴き比べると見違えるような音質の向上が特筆される。
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2017年05月23日
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この3枚にはレ・ヴァン・フランセーの古典から20世紀に至る迄の幅広いウィンド・アンサンブルのレパートリー8曲が収められている。
レギュラー・メンバー6人(フルートのエマニュエル・パユ、オーボエのフランソワ・ルルー、クラリネットのポール・メイエ、ホルンのラドヴァン・ヴラトコヴィチ、ファゴットのジルベール・オダン、ピアノのエリック・ル・サージュ)の個人的な実力だけでなく、彼らの合わせのテクニックや音色の輝かしさ、また変化する陰翳の豊かさと軽妙洒脱な表現力が鮮やかに示された極めて充実したアルバムになっている。
バジェット価格に抑えられているので彼らの演奏を初めて聴く方のためのサンプラー盤として、また室内楽の入門者にも是非お薦めしたいセットだ。
CD1は彼らが最も得意とするフランスの作曲家の作品集で、流石にその磨き抜かれた音色と精緻だが柔軟で瑞々しいアンサンブルが美しい。
アンサンブルから醸し出されるカラフルでコケティッシュな雰囲気は水を得た魚のような彼ら独自の世界を展開している。
3枚の中でもメンバー全員の洒落っ気と遊び心が最高度に発揮されているアルバムだろう。
こうした演奏に魅力を感じる方なら、別途にリリースされているピアノの加わらない管楽器奏者5人のみによるフランス及び世紀のウィンド・アンサンブル作品集の2枚組も欠かすことのできない選択肢になるだろう。
幸いこのCDとの収録曲のだぶりがないのもコレクターにとっては好都合だ。
CD2はモーツァルトとベートーヴェンのピアノと管楽器のための五重奏曲で、この2曲に関しては過去にも名盤があった。
例えば前者にはフィリップスのモーツァルト・エディションにも加えられていたブレンデル、ホリガー、ブルンナー、バウマン、トゥーネマンの名演があるし、後者で興味深いものを挙げれば、彼らと同様フランス系のアンサンブルとしては1993年に巨匠リヒテルとモラゲス管楽五重奏団が協演した素晴らしいフィリップス盤が存在する。
聴き比べるとリヒテルの泰然自若として流麗なピアノが扇の要になってモラゲスとの調和が絶品で、気品においてもまた高い音楽性でも決して引けをとっていない。
またもう少し古い例ではドイツ・グラモフォンのベートーヴェン・エディション第14巻にレヴァインとアンサンブル・ウィーン=ベルリンの演奏があり、そちらもシェレンベルガー、ライスター、ヘーグナー、トゥルコヴィッチという錚々たるメンバーの卓越した演奏が聴き逃せないだろう。
尚レ・ヴァン・フランセーのベートーヴェン・アルバムにはこの曲は収録されていない。
CD3はテュイユの六重奏曲とリムスキー=コルサコフの五重奏曲で、前者は多少時代遅れなロマンティシズムがやや凡庸な印象を与えるが、聴き進めていくとテュイユの楽器の特性を熟知した流麗でしかも手馴れた対位法のテクニックが示された秀作だと思える。
寓話的なラルゲットから終楽章ヴィヴァーチェは、6人のメンバーによってテーマが次々と引き継がれる華麗な展開部が聴きどころだ。
一方後者はリムスキー=コルサコフがロシア音楽協会のコンクールに提出した作品で、作曲家の若々しい推進力を持った一風変わった奇抜な楽想を良く反映して、意気揚々としたパッセージが快適に再現されている。
中間楽章はレ・ヴァン・フランセーの暖色系で洗練を極めたアンサンブルではスラヴの抒情というわけにはいかないが、むしろ諧謔的で活発な終楽章ロンドに彼らの本領が発揮されていると言えるだろう。
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2015年06月06日
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カラヤンはロシアものも大変巧かったが、このディスクに収められた曲目はそのよい例で、カラヤン&ベルリン・フィルのコンビの実力を如実に示した卓抜な演奏だ。
本盤に収められたR・コルサコフによる交響組曲「シェエラザード」の演奏は、カラヤンによる唯一の録音である。
カラヤンは、同じロシア5人組のムソルグスキーによる組曲「展覧会の絵」やチャイコフスキーによる3大バレエ音楽の組曲を何度も録音していることに鑑みれば、実に意外なことであると言えるであろう。
その理由はいろいろと考えられるが、何よりもカラヤン自身が本演奏の出来に十分に満足していたからではないだろうか。
それくらい、本演奏は、まさにカラヤンのカラヤンによるカラヤンのための演奏になっていると言えるだろう。
この曲の交響的な性格と標題音楽的な性格の中間をいくような表現で、カラヤンは全編をシンフォニックに華麗に仕上げながらも、そこに東洋的なムードを巧みに盛り込み、音による豪華絢爛たる絵巻を繰り広げている。
第1曲の「海とシンドバッドの船」は、テンポが少し速いような気がするが、第2曲以後は余裕をもった指揮ぶりでアラビアン・ナイトの世界へ聴き手を誘ってくれるかのようだ。
本演奏は1960年代後半のスタジオ録音であるが、これはカラヤン&ベルリン・フィルの全盛時代に相当している。
ベルリン・フィルにとってもあまたのスタープレイヤーを擁した黄金時代であり、健康状態にも殆ど不安がなかったカラヤンによる圧倒的な統率の下、凄みのある演奏を繰り広げていた。
鉄壁のアンサンブル、金管楽器のブリリアントな響き、木管楽器の超絶的な技量、肉厚の弦楽合奏、雷鳴のようなティンパニの轟き(もっとも、この時はフルトヴェングラー派のテーリヒェンが演奏していたが)などを駆使しつつ、これに流麗なレガートを施したいわゆるカラヤンサウンドとも言うべき圧倒的な音のドラマを構築していたと言える。
こうしたカラヤンサウンドは、本演奏においても健在であり、おそらくはこれ以上は求め得ないようなオーケストラの極致とも言うべき演奏に仕上がっている。
加えて、当時世界最高のコンサートマスターと称されたシュヴァルベによるヴァイオリンソロの美しさは、抗し難い魅力に満ち溢れており、本演奏に華を添えていることを忘れてはならない。
また、オペラを得意としたカラヤンならではの演出巧者ぶりは同曲でも存分に発揮されており、各組曲の描き分けは心憎いばかりの巧さを誇っており、ことに劇的にまとめた終楽章は圧巻だ。
このような諸点を総合的に勘案すれば、本演奏は非の打ちどころがない名演と評価し得るところであり、カラヤンとしてもこの名演を凌駕する演奏を行うことは困難であることを十分に自覚していたのではないかとさえ考えられるところだ。
併録のイタリア奇想曲や大序曲「1812年」も、カラヤン唯一の録音であるが、これまた全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルの演奏の凄さを感じることが可能な素晴らしい名演だ。
イタリア奇想曲は、次から次へ現れる親しみ易い旋律展開は全くカラヤン向きと言えるところであり、ベルリン・フィルの演奏技術とカラヤンの劇的な演出に圧倒される。
カラヤンは、大序曲「1812年」において、冒頭にロシア正教による合唱を付加している。
さらに終結部にも付加すればより効果的であったのではないかとも思われるが(デイヴィスやマゼールなどの演奏に例あり)、十分に堪能できる名演であり文句は言えまい。
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2015年05月31日
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近年では健康を害して指揮台に立つのも難儀をしている小澤であるが、小澤の得意のレパートリーは何かと言われれば、何と言ってもフランス音楽、そしてこれに次ぐのがロシア音楽ということになるのではないだろうか。
ロシア音楽について言えば、チャイコフスキーの後期3大交響曲やバレエ音楽、プロコフィエフの交響曲やバレエ音楽、そしてストラヴィンスキーのバレエ音楽など、極めて水準の高い名演を成し遂げていることからしても、小澤がいかにロシア音楽を深く愛するとともに得意としているのかがわかるというものだ。
R=コルサコフの最高傑作でもある交響組曲「シェエラザード」も、そうした小澤が最も得意としたレパートリーの1つであり、これまでのところ3度にわたって録音を行っている。
最初のものが本盤に収められたシカゴ交響楽団との演奏(1969年)、2回目のものがボストン交響楽団との演奏(1977年)、3回目のものがウィーン・フィルとの演奏(1993年)である。
いずれ劣らぬ名演であり、とりわけウィーン・フィルとの演奏については、オーケストラの魅力ある美しい音色も相俟って、一般的な評価も高いし、演奏全体の安定性などを総合的に考慮すれば、ボストン交響楽団の演奏が、小澤による同曲の代表的名演と評価することもできよう。
それらに対し、シカゴ交響楽団との演奏は、まだ30歳代半ば、小澤のEMIレーベルへのデビュー当時の録音であり、若き小澤が世界に羽ばたこうとしていた熱き時代のものである。
1963年のラヴィニア音楽祭での共演以来、頻繁に共演を繰り返していたシカゴ交響楽団というこの上ないパートナーを得て、若き小澤がこの名門オケを大胆にリードし、この上なく新鮮でみずみずしい、颯爽とした「シェエラザード」に仕上がっている。
この当時の小澤の演奏は、豊かな音楽性を生かしつつ、軽快で躍動感溢れるアプローチに加えて、エネルギッシュで力強い生命力に満ち溢れていた。
トゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫と力強さは圧倒的な迫力を誇っており、切れば血が噴き出てくるような熱い情感に満ち溢れている。
同曲の随所で聴かれるロシア風の抒情的な旋律の歌い方もいささかも重々しくなることはなく、瑞々しさを感じさせてくれるのが素晴らしい。
同曲には様々な指揮者による多種多彩な名演が目白押しであるが、小澤の演奏は、得意のフランス音楽に接する時のような洒落た味わいと繊細とも言うべき緻密さと言えるのではないかと考えられる。
とりわけロシア系の指揮者に多いと言えるが、ロシア風の民族色を全面に打ち出したある種のアクの強さが売りの演奏も多いが、小澤の演奏はその対極に位置しているとも言える。
ロシア系の指揮者の演奏がボルシチであるとすれば、小澤の演奏はあっさりとした味噌汁。
しかしながら、その味噌汁は、あっさりとはしているものの、入っている具材は実に多種多彩。
その多種多彩さはボルシチにはいささかも劣っていない。
それこそが、小澤による本演奏の特色であり、最大の美質と言えるだろう。
要は、演奏の表層は洗練されたものであるが、どこをとっても洒落た味わいに満ち満ちた独特のニュアンスが込められるとともに、聴かせどころのツボを心得た演出巧者ぶりにも際立ったものがあると言えるだろう。
こうした若き小澤の統率の下、卓越した技量を発揮したシカゴ交響楽団による名演奏も素晴らしい。
とりわけ管楽器の技量とパワーは桁外れであり、巧みなオーケストレーションが施された同曲だけに、本名演への貢献度は非常に大きいと考える。
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2015年01月18日
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アルメニア出身のロシア人作曲家であるハチャトゥリアンは民族色溢れる作風で知られており、様々なジャンルの作品を作曲したが、交響曲の分野においても名作を遺している。
3曲ある交響曲の中でどれを随一の傑作と評価するのかについては意見が分かれるところであるが、最も個性的な作品は衆目の一致するところ、本盤に収められた交響曲第3番ということになるのではないだろうか。
3管編成の大オーケストラにオルガンやハープ、パーカッションまでが加わる類例の見ない巨大な編成であり、何よりも15本のトランペットによる壮麗なファンファーレが印象的な大胆な作品だ。
曲想も、かかる迫力満点の大音響の箇所と、中央アジアの大自然を彷彿とさせるような抒情的な箇所が巧みに組み合わされており、内容的にもハチャトゥリアンが作曲した最後の交響曲に相応しい極めて充実したものとなっている。
本演奏は、ストコフスキーがシカゴ交響楽団を指揮したものである。
確かに、演奏内容としては本演奏よりも優れた名演(例えば、コンドラシン&モスクワ・フィルによる名演(1969年)など)が他に存在しているとも言えるが、ストコフスキーの聴かせどころのツボを心得た聴かせ上手な演奏は、同曲の魅力を味わうのに十分であると言えるし、シカゴ交響楽団の卓越した技量も本演奏の大きな魅力であると言えるだろう。
加えて、このような壮麗なサウンドや大音響を特徴とする楽曲だけに、録音が優秀であることが必要不可欠であると考えられるが、その意味でも本盤のようなXRCDは理想的と言える。
本盤は1968年のスタジオ録音であるが、今から40年以上も前の録音とは思えないような鮮明な音質を誇っており、同曲のトゥッティにおいても各楽器が明瞭に分離して聴こえるのはほとんど驚異的ですらある。
いずれにしても、XRCD化が、本演奏を素晴らしい名演とするのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。
併録の序曲「ロシアの復活祭」も、ストコフスキーのエンターテイナーとしての才能が発揮された名演であり、R=コルサコフならではの華麗なオーケストレーションをXRCDによる鮮明な高音質録音で味わうことができることも含めて高く評価したい。
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2014年10月18日
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若きプレヴィンによる素晴らしい名演と高く評価したい。
プレヴィンは、本演奏の13年後にウィーン・フィルとともに交響組曲「シェエラザード」を録音(1981年)しており、それも円熟の名演とも言えるが、楽曲の頂点に向けて畳み掛けていくような気迫や力強い生命力においては、本演奏の方が数段勝っており、両演奏ともに甲乙付け難いと言ったところではないだろうか。
プレヴィンは、クラシック音楽の指揮者としてもきわめて有能ではあるが、それ以外のジャンルの多種多様な音楽も手掛ける万能型のミュージシャンと言える。
したがって、そのアプローチは明快そのもの。
楽曲を難しく解釈して峻厳なアプローチを行うなどということとは全く無縁であり、楽曲をいかにわかりやすく、そして親しみやすく聴き手に伝えることができるのかに腐心しているように思われる。
したがって、ベートーヴェンなどのように、音楽の内容の精神的な深みへの追求が求められる楽曲においては、いささか浅薄な演奏との誹りは免れないと思うが、起承転結がはっきりとした標題音楽的な楽曲では、俄然その実力を発揮することになる。
交響組曲「シェエラザード」は、そうしたプレヴィンの資質に見事に合致する楽曲と言えるところであり、前述のような若さ故の力強い生命力も相俟って、素晴らしい名演に仕上がったと言っても過言ではあるまい。
聴かせどころのツボを心得た演出巧者ぶりは心憎いばかりであり、プレヴィンの豊かな音楽性が本演奏では大いにプラスに働いている。
クラシック音楽入門者が、交響組曲「シェエラザード」を初めて聴くに際して、最も安心して推薦できる演奏と言えるところであり、本演奏を聴いて、同曲が嫌いになる聴き手など、まずはいないのではないだろうか。
いずれにしても、安定した気持ちで同曲を味わうことができるという意味においては、第一に掲げるべき名演と評価したい。
併録の歌劇「サルタン皇帝の物語」からの抜粋2曲も同様のアプローチによる名演だ。
そして、さらに素晴らしいのはXRCDによる極上の高音質録音である。
本盤の録音は1968年であるが、とても45年も前の録音とは思えないような鮮明な高音質に仕上がっている。
プレヴィンによる素晴らしい名演を、現在望み得る最高の音質で味わうことができることを大いに歓迎したい。
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2014年10月14日
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本盤には、R・コルサコフの超有名曲である交響組曲「シェエラザード」を軸として、グラズノフのバレエ音楽「ライモンダ」の抜粋が収められているが、同様に発売されたプロコフィエフの管弦楽曲集と同様に、演奏の素晴らしさ、録音の素晴らしさも相俟って、まさに珠玉の名CDと高く評価したい。
フェドセーエフは、近年では、同じくロシア系の指揮者である後輩のマリス・ヤンソンスやゲルギエフなどの活躍の陰に隠れて、その活動にもあまり際立ったものがないが、1980年代の後半から本盤の演奏の1990年代にかけては、当時の手兵であるモスクワ放送交響楽団とともに、名演奏の数々を成し遂げていたところである。
本盤に収められた演奏も、そうした名演奏の列に連なるものであり、フェドセーエフ&モスクワ放送交響楽団による一連の録音は、現在ではほぼ撤退したキャニオンのクラシック音楽録音の旗手の1つとして、その存在感には非常に大きいものがあったとも言えるところだ。
演奏自体は、意外にもオーソドックスなもの。
旧ソヴィエト連邦時代のロシア人指揮者と旧ソヴィエト連邦下の各オーケストラによる演奏は、かの大巨匠ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによる数々の名演を除いて、およそ洗練とは程遠いようなロシア色濃厚なアクの強いものが主流であった。
これには、オーケストラ、とりわけそのブラスセクションのヴィブラートを駆使した独特のロシア式の奏法が大きく起因していると思われるが、指揮者にも、そうした演奏に歯止めを効かせることなく、重厚にしてパワフルな、まさにロシアの広大な悠久の大地を思わせるような演奏を心がけるとの風潮があった。
メロディアによる必ずしも優秀とは言い難い録音技術にも左右される面もあったとも言える。
ところが、旧ソヴィエト連邦の崩壊によって、各オーケストラにも西欧風の洗練の波が押し寄せてきたのではないだろうか。
本演奏におけるモスクワ放送交響楽団も、かつてのアクの強さが随分と緩和され、いい意味での洗練された美が演奏全体を支配しているとさえ言える。
もちろん、ロシア色が完全に薄められたわけではなく、ここぞという時のド迫力には圧倒的な強靭さが漲っており、これぞロシア音楽とも言うべき魅力をも兼ね合わせていると言えるだろう。
特に、R.コルサコフの交響組曲「シェエラザード」における木野雅之によるヴァイオリン・ソロは、とろけるような美しさを有しており、本名演に華を添える結果となっていることを忘れてはならない。
いずれにしても、本盤の演奏は、全盛期のフェドセーエフによる、いい意味での剛柔のバランスのとれた素晴らしい名演と高く評価したい。
音質については、キャニオン・クラシックスという録音でも定評のあるレーベルであるだけに、従来盤でも十分に良好なものであったが、今般、ついに待望のSACD化がなされることになった。
音質の鮮明さ、音場の幅広さ、そして音圧のいずれをとっても超一級品の仕上がりであると言えるところであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、フェドセーエフによる素晴らしい名演を高音質SACDで味わうことができるのを大いに喜びたい。
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2014年08月28日
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最近では体調を崩し、多くのクラシック音楽ファンをヤキモキさせている小澤であるが、小澤の得意のレパートリーは何かと言われれば、何と言ってもフランス音楽、そしてこれに次ぐのがロシア音楽ということになるのではないだろうか。
ロシア音楽について言えば、チャイコフスキーの後期3大交響曲やバレエ音楽、プロコフィエフの交響曲、そしてストラヴィンスキーのバレエ音楽など、極めて水準の高い名演を成し遂げていることからしても、小澤がいかにロシア音楽を深く愛するとともに得意としているのかがわかろうというものだ。
R.コルサコフの最高傑作でもある交響組曲「シェエラザード」も、そうした小澤が最も得意としたレパートリーの1つであり、これまでのところ3度にわたって録音を行っている。
最初のものがシカゴ交響楽団との演奏(1969年)、2回目のものが本盤に収められたボストン交響楽団との演奏(1977年)、3回目のものがウィーン・フィルとの演奏(1993年)である。
いずれ劣らぬ名演であり、とりわけウィーン・フィルとの演奏については、オーケストラの魅力ある美しい音色も相俟って、一般的な評価も高いが、演奏全体の安定性などを総合的に考慮すれば、本盤に収められた2回目の演奏こそは、小澤による同曲の代表的名演と評価してもいいのではないだろうか。
同曲には様々な指揮者による多種多彩な名演が目白押しであるが、小澤の演奏は、得意のフランス音楽に接する時のような洒落た味わいと繊細とも言うべき緻密さと言えるのではないかと考えられる。
同曲には、とりわけロシア系の指揮者に多いと言えるが、ロシア風の民族色を全面に打ち出したある種のアクの強さが売りの演奏も多いが、小澤の演奏はその対極に位置しているとも言える。
ロシア系の指揮者の演奏がボルシチであるとすれば、小澤の演奏はあっさりとした味噌汁。
しかしながら、その味噌汁は、あっさりとはしているものの、入っている具材は実に多種多彩。
その多種多彩さはボルシチにはいささかも劣っていない。
それこそが、小澤による本演奏の特色であり、最大の美質と言えるだろう。
要は、演奏の表層は洗練されたものであるが、どこをとっても洒落た味わいに満ち満ちた独特のニュアンスが込められるとともに、聴かせどころのツボを心得た演出巧者ぶりにも際立ったものがあると言えるだろう。
ボストン交響楽団も、小澤の統率の下、見事とも言うべき技量を発揮しており、シルヴァースタインによるヴァイオリン・ソロの美しさも相俟って、最高のパフォーマンスを発揮していると高く評価したい。
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2014年04月22日
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本盤に収められたR・コルサコフによる交響組曲《シェエラザード》の演奏は、カラヤンによる唯一の録音である。
カラヤンは、同じロシア5人組のムソルグスキーによる組曲「展覧会の絵」やチャイコフスキーによる3大バレエ音楽の組曲を何度も録音していることに鑑みれば、実に意外なことであると言えるであろう。
その理由はいろいろと考えられるが、何よりもカラヤン自身が本演奏の出来に十分に満足していたからではないだろうか。
それくらい、本演奏は、まさにカラヤンのカラヤンによるカラヤンのための演奏になっていると言えるだろう。
本演奏は1960年代後半のスタジオ録音であるが、これはカラヤン&ベルリン・フィルの全盛時代に相当している。
ベルリン・フィルにとってもあまたのスタープレイヤーを擁した黄金時代であり、健康状態にも殆ど不安がなかったカラヤンによる圧倒的な統率の下、凄みのある演奏を繰り広げていた。
鉄壁のアンサンブル、金管楽器のブリリアントな響き、木管楽器の超絶的な技量、肉厚の弦楽合奏、雷鳴のようなティンパニの轟き(もっとも、この時はフルトヴェングラー派のテーリヒェンが演奏していたが)などを駆使しつつ、これに流麗なレガートを施したいわゆるカラヤンサウンドとも言うべき圧倒的な音のドラマを構築していた。
こうしたカラヤンサウンドは、本演奏においても健在であり、おそらくはこれ以上は求め得ないようなオーケストラの極致とも言うべき演奏に仕上がっている。
加えて、当時世界最高のコンサートマスターと称されたシュヴァルベによるヴァイオリンソロの美しさは、抗し難い魅力に満ち溢れており、本演奏に華を添えていることを忘れてはならない。
また、オペラを得意としたカラヤンならではの演出巧者ぶりは同曲でも存分に発揮されており、各組曲の描き分けは心憎いばかりの巧さを誇っている。
このような諸点を総合的に勘案すれば、本演奏は非の打ちどころがない名演と評価し得るところであり、カラヤンとしてもこの名演を凌駕する演奏を行うことは困難であることを十分に自覚していたのではないかとさえ考えられるところだ。
併録の歌劇《イーゴリ公》からの抜粋である「だったんの娘の踊り」や「だったん人の踊り」なども、これまた全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルの演奏の凄さを感じることが可能な素晴らしい名演だ。
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2013年09月17日
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最近ではチョン・ミュンフンも大人しい演奏に終始することが多くなり、すっかりと目立たない指揮者になってしまっているが、1990年代の演奏はどれも凄かった。
例えば、ベルリオーズの幻想交響曲、ビゼーの組曲「アルルの女」&組曲「カルメン」、ドヴォルザークの交響曲第3番&第7番、そしてショスタコーヴィチの交響曲第4番など超名演が目白押しだ。
とりわけ、ショスタコーヴィチの交響曲第4番については、現在でもラトルによる超名演と並んで、同曲演奏史上最高の名演と言っても過言ではあるまい。
本盤に収められたR・コルサコフの交響組曲「シェエラザード」とストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」も、そうした飛ぶ鳥落とす勢いであった全盛期のチョン・ミュンフンならではの素晴らしい名演だ。
両曲ともに華麗なオーケストレーションを基調とするロシア音楽であるが、チョン・ミュンフンは、変幻自在のテンポ設定や思い切った強弱の変化などを大胆に駆使して、ドラマティックな演奏を展開している。
各曲のトゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫溢れる力強さやダイナミックな躍動感は、圧巻の迫力を誇っている。
それでいて、「シェエラザード」の第3楽章などにおけるロシア風のメランコリックな音楽における豊かな情感においてもいささかの不足もなく、必ずしも勢い一辺倒ではないチョン・ミュンフンの桁外れの表現力の幅の広さを感じることが可能だ。
また、当時はチョン・ミュンフンと良好な関係を築いていたパリ・バスティーユ管弦楽団の卓越した技量も、本名演に大きく貢献していることを忘れてはならない。
録音は通常盤でも十分に満足できる高音質ではあったが、今般のSHM−CD化によって音質はより一層鮮明になるとともに、音場が幅広くなったと思われる。
チョン・ミュンフンの全盛時代の超名演を、SHM−CDによる高音質で味わうことができるのを大いに喜びたい。
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2013年07月13日
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最近では、SACDとSHM−CDを組み合わせた盤が登場したことから、やや影が薄くなった面もあるが、従来CDということになれば、やはり、このXRCDとSHM−CDを組み合わせたCDがダントツの高音質と言えるだろう。
本盤については、数年前にXRCD盤が出ており、それも高音質であったが、鮮明さや音場の広がりにおいて、本盤の方に一日の長があると言える。
1950年代後半という、ステレオ録音初期の音源を、これほどまでに鮮明に再現されるのには大変驚かされた。
マスターテープの保存状態もかなり良かったものと拝察されるが、この時代の後のCDでも、音質の劣悪なものが出回っているのを見るにつけ、それらのCDも、マスターテープに遡ったリマスタリングを実施して欲しいと願う聴き手は筆者だけではあるまい。
演奏も、超をいくつも付けたくなるような名演だ。
コンドラシンの覇気のある骨太の演奏は選曲のマッチングと相俟って、楽しいアルバムを生み出している。
コンドラシンが、ソヴィエト連邦の国外ではいまだ無名の時代のものであるが、後年の発展を予感させるに十分な圧倒的な指揮ぶりと言えるだろう。
両曲ともに、曲想が目まぐるしく変化するが、各場面毎の描き分けも見事で、終結部に向けての猛烈なアッチェレランドの激しさは、スタジオ録音とはとても思えないほどだ。
最新録音に優るとも劣らない驚異の音質で、まさに時空を越えて蘇った不滅の名演・名盤と言えよう。
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2013年01月30日
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どちらもウィーン・フィルにとって初録音となった珍しいレパートリー。
『展覧会の絵』は意外なことにプレヴィンにとっても唯一の録音。
プレヴィンはウィーン・フィルという、この2曲に関しては意表を衝くオケを起用して、実にエレガントでかつストーリーテラー的な、巧みのある表現を聴かせている。
全体に軟調で絢爛豪華な味わいとは無縁の、淡彩な演奏に終始しているが、各曲の標題を彷彿とさせる絵画的表現は、映画音楽で鳴らしたプレヴィンの強みであろう。
そして何よりもプレヴィンとウィーン・フィルの相性は抜群だと思う。
R・シュトラウスの管弦楽曲などの名演でも明らかであるが、それは、プレヴィンがウィーン・フィルをがんじがらめに統率するのではなく、むしろウィーン・フィルが望む演奏方法、解釈をできる限り尊重して、伸び伸びと演奏させていることによるものと考える。
本盤も、そうしたプレヴィンの長所が出た名演であり、ウィーン・フィルが実に伸び伸びと楽しげに演奏していることがわかる。
もちろん、ウィーン・フィルに伸び伸びと演奏させているからといって、プレヴィンが野放図にしているわけではなく、要所ではしっかりと手綱を締めていることがよくわかる。
『展覧会の絵』にしても、『シェエラザード』にしても、全体のスケールは雄大であるが、造型をいささかも弛緩させることなく、各場面の描き分けを巧みに行って、重厚な中にも情感溢れる演奏を繰り広げている点を見過ごしてはならない。
それにしても、本盤に聴くウィーン・フィルの音色の美しさは格別。
すっきりとした流れの中に洗練された表現を美しく浮かべており、洗練された響きと色彩も美しい。
ライナー・キュッヒルの絶美のソロと相まって、本盤の価値を更に高めることに貢献している。
SHM−CD化により、音響に一段と拡がりが出た点も見過ごすことができない。
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2010年03月17日
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ロストロポーヴィチが初めてパリ管とコンビを組んで録音したのがこの「シェエラザード」だ。
その最優秀の録音と相まって、「シェエラザード」のレコードをたった1枚ほしい、という人に第一にお薦めできよう。
ロストロポーヴィチの指揮は、音楽のダイナミック・レンジが広大で、色彩的でかつドラマティックである。
豊かな表情、華やかな色彩美の点で申し分なく、問題があるとすれば表情がつきすぎていることだが、私にはこういうこってりとした演奏がこの曲の場合いちばんぴったりくる。
旋律の歌わせ方の身ぶりが大きく、とにかく大変にわかりやすく、ノスタルジックな味のある演奏といえる。
反面やや大味なのも確かで、細かいニュアンスなどには余りこだわらず、音の強弱だけで割り切ってしまう、単純さも耳につく。
ただここでは、パリ管を使っているのがプラスで、このオーケストラの持つ、豊かな色彩感が指揮の足らざるところを補っている感じだ。
そしてヨルダノフの独奏ヴァイオリンが、妖艶な色気で迫り、ロストロポーヴィチの表現に錦上花を添えている。
結果としてスケールの大きな、語り口の巧者な名演になっている。
特に絢爛豪華に描いた第4楽章は好演だ。
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2009年11月08日
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ストコフスキーは「シェエラザード」を全部で5回録音したが、最も彼らしい主張が生かされたのは、ロンドン響とのこの演奏といっていい。
ストコフスキーが大変得意としていた曲だけあって、さすがにうまいものだ。
全体にテンポを遅めにとり、旋律をたっぷりと歌わせながら、この曲の持つ東洋的な雰囲気を巧みに表出している。
彼一流の粘りの強い表現が少々気になるが、聴かせどころのツボをよく押さえた実に達者な演奏だ。
ストコフスキーはスコアを自由自在に改竄し、独特のアクの強い表情を付け加え、実にドラマティックに曲を盛り上げている。
まったくのストコ節ともいえる独特の表現だが、面白く聴けることに関してはこれに優る演奏はちょっと想像することができない。
またロンドン・レーベルご自慢の「フェイズ・4」システムを駆使して、ソロ楽器を思い切りクローズ・アップして、トロンボーンが右チャンネルから堂々と聴こえたりして、トリックの用い方も堂に入っている。
あまりにも仕掛けが多く、品格を欠いているようにも感じられるが、曲そのものがスペクタキュラーなのだから、ストコフスキーの行き方も是認されよう。
ただストコフスキーにはもう1枚、ロイヤル・フィルを指揮したCDもあったが、こちらは4つの楽章を切れ目なく繋げただけで、演奏そのものはあまり面白くない。
「スペイン奇想曲」は大仕掛けが至る所に見られ、名人芸に事欠かないが、全体にかなりもたれ、響きの汚れが気にかかる。
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2009年04月25日
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スイスの大指揮者アンセルメが、最も得意としていたものにロシアものがあるが、その中でもこの曲は十八番中の十八番で、なんと1000回も演奏したと彼は語っていた。
演奏は、東洋的なムードを巧妙な演出で描きながら、交響的に、華麗に仕上げており、この曲のもつ東洋的情感を色濃く表出した壮麗な表現も大変魅力的だ。
全体にテンポを遅めにとり、ゆったりとした呼吸で丹念にまとめており、ことにめくるめくような色彩美にあふれた終楽章は出色の出来だ。
アンセルメは、こういう色彩的な派手なものを手がけると、少しもけばけばしくなく、しゃれた工夫をした演奏をする素晴らしい演奏家である。
金管楽器の表情などはアンセルメが自分でつくってしまうところがあるほど演奏効果を考えた表現なのである。
ややゆっくりとしたテンポで、まるで絵巻物を繰り広げてゆくような劇的設定のうまさにはまったく感心させられる。
バレエ・リュス時代にアンセルメはストラヴィンスキーのみならずロシア音楽を振った好評を博したというが、ストラヴィンスキーの恩師であるリムスキー=コルサコフが悪いはずはない。
近代管弦楽法のテクストともいうべきこの組曲の色彩感を見事に描き分けている。
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2008年03月05日
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「シェエラザード」というのは、「アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)」の中に登場する才色兼備の王妃の名前である。
この曲はリムスキー=コルサコフが「アラビアン・ナイト」のもつ雰囲気を音楽としたもので、全4楽章からできている。
カラヤンはロシアものも大変巧かったが、この「シェエラザード」演奏などそのよい例だ。
カラヤンの演奏は、冒険をスリルと残虐と官能とが入り混じった「千夜一夜物語」をそのまま音で描きあげた絢爛たる絵巻物だといってよい。
全編をシンフォニックで華麗に仕上げながらも、そこに東洋的なムードを巧みに盛り込み、音による豪華絢爛たる絵巻を繰り広げている。
また《近代オーケストレーションの大御所》といわれたR=コルサコフの多彩な管弦楽法の特色をカラヤンは万全に表出している。
それほどカラヤンは、この曲の持ち味というものを的確につかんで表現している。
同時にオーケストラの技術のうまさにもほとほと感心させられるし、ヴァイオリン・ソロのシュヴァルベも錦上花を添える素晴らしい演奏。
ことに劇的にまとめた終楽章は圧巻だ。
併録のイタリア奇想曲や大序曲「1812年」も、カラヤン唯一の録音であるが、これまた全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルの演奏の凄さを感じることが可能な素晴らしい名演だ。
カラヤンは、大序曲「1812年」において、冒頭にロシア正教による合唱を付加している。
さらに終結部にも付加すればより効果的であったのではないかとも思われるが(デイヴィスやマゼールなどの演奏に例あり)、十分に堪能できる名演であり文句は言えまい。
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