スターン

2015年08月26日


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2011年で没後10年の巨匠アイザック・スターンによるベートーヴェン録音を収録した廉価盤BOX。

この9枚のCDにはスターンが1964年から1992年にかけて録音したレパートリーの中からベートーヴェンの作品が集大成されていて、彼の古典音楽に対する典型的な奏法を堪能できるのが特徴だ。

特有の丸みを帯びた、明るく艶のある音色で奏でるヴァイオリンは、どこか天衣無縫な大らかさがあり、しかもメリハリの効いた表現は容易に他のヴァイオリニストと聴き分けることができる。

またスターンは聴衆に対して、尊大で近寄り難い印象を与えることは全く無かった。

彼の魅力はそんな気さくさにも感じられるが、一方ではユダヤ人としての尊厳から、彼は戦後オーストリアとドイツでは決して演奏をしなかった。

そうした不屈の闘志と素朴で飾り気の無い暖かい人間性が、その演奏にも良く反映されていると思う。

彼と同世代のヴァイオリニストにシェリング、グリュミオーそしてコーガンがいたが、いずれも全く異なる演奏スタイルでそれぞれが確固たる哲学を主張していた時代にあって、スターンは活動期間が最も長く、また後進の育成にも熱心だったことから、次の時代への引き継ぎ役としても大きく貢献していた。

このセットでは2曲の協奏曲の他にユージン・イストミンとのヴァイオリン・ソナタ全曲やチェロのレナード・ローズが加わるピアノ・トリオでのアンサンブルの一員としても、毅然としたスケールの大きな演奏を充分に鑑賞できるのが嬉しい。

特に、スターンがバレンボイムと共演したヴァイオリン協奏曲は、この曲のもつ抒情性を尊んだ外柔内剛の演奏で、まさに王者の風格をたたえた名演である。

最高にすばらしいテクニックを持っていながら、それを決して誇示せず、音楽の内面を掘り下げてじっくりと弾いた演奏である。

スターンには1959年にバーンスタイン&ニューヨーク・フィルをバックに弾いたものもあり、それも、きわめて健康的な快演だったが、この演奏には年輪の厚みを加えた大家の、内面から湧き出た心の牴劉瓩ある。

作品の抒情的な面に光をあて、ひとつひとつのフレーズをまごころこめて弾きあげているところがよく、ことに第2楽章の深々とした味わいは絶品だ。

バレンボイムの伴奏も音楽的にきめが細かくスターンの深みのある演奏を見事にサポートしている。

同じく気品と抒情がゆるやかに流れる名作「ロマンス」2曲も、小澤征爾&ボストン響という絶好のバックを得て、これまた秀演と言えるだろう。

スターンは色気のない音で厳しい表現を示し、ともに中間主題の熾烈さが聴きもの。

小澤の指揮は誠実そのもので、充実した厚みと豊かさを持ち、落ち着いた足取りがスターンの音楽にぴったりである。

そして、親しみやすくロマンティックなメロディが春の息吹きを想わせる「スプリング」や、精神の奥深くから溢れ出る心模様をより自由な作風に生かした「クロイツェル」などを含むヴァイオリン・ソナタ全曲。

スターンが、永年の音楽の同志イストミンと紡ぎだす演奏は、純粋であるがままの音楽の流れの中に身をゆだね、幸せな境地に誘う。

巷間、スターンは明るい音色と言われるが、ここでは渋味、厳しさ、枯れた味わいなど彼の音と表現が深く、また広がりを見せている。

そしてレナード・ローズも加わった三重奏曲の全曲も、チャーミングなメロディが横溢する佳品で、まさに知・情・意のバランスが取れた名演奏である。

また時代を感じさせない鮮明な音質も特筆される。

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2015年08月09日


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アイザック・スターンをソロ・ヴァイオリンに迎えた20世紀の作曲家の作品3曲を収めたSACDで、総てバーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルハーモニックとの協演になる。

ベルクの『ヴァイオリン協奏曲』が1959年、バルトークの2曲、『ラプソディー第2番』が1962年、『ヴァイオリン協奏曲第2番』が1958年のそれぞれがセッション録音だ。

プラガは版権の切れた古い音源を続々とSACD化しているが、演奏の質はともかくとして音源自体が劣化している場合もあるので、その出来栄えとなると玉石混交だが、この3曲に関しては初期ステレオ録音であるにも拘らず、DSDリマスタリングの効果が発揮され、音場の広がりや高音の鮮明さも時代を超越した生々しい音響が再現された成功例と言えるだろう。

スターン、バーンスタインの両者も30代後半から40代前半の若々しい覇気に満ちた演奏が何よりも魅力で、彼らの新時代のクラシック音楽に賭けた情熱と意気込みが伝わってくる。

ベルクの『ヴァイオリン協奏曲』では、その精緻な作曲技法の理論は別にしても曲中に仄かな官能性が潜んでいる。

バーンスタインはそうした隠された官能美を意識的に引き出しているように思える。

第1楽章ではウィンナ・ワルツの断片さえ聞こえてくるが、それが如何にもバーンスタインらしく妖艶に響いてくるし、第2楽章のコラールも彼のフィルターを通すと全く斬新なエレメントとなって浮かび上がってくる。

そこにはバーンスタインの作曲家としてのベルクへの強い共感があるに違いない。

また張り詰めた緊張感の中で、あたかも走馬燈のように揺れ動くスターンのソロは、ベルクの鮮烈な回想を見事に音像化している。

この作品はアルマ・マーラーの娘マノンの夭折を追悼するために作曲されたが、奇しくもベルク自身の白鳥の歌になってしまったようだ。

バルトークの『ラプソディー第2番』ではスターンの大地から湧き上がるようなヴァイタリティーに漲るソロが、この曲のエスニカルなイメージを決定的にしているが、『ヴァイオリン協奏曲第2番』では、作曲家によってそうした原初的なパワーがより普遍化され、いわゆる民族主義から昇華された洗練の域に踏み込んでいる。

スターン自身もまた20世紀の作品を多く初演しているだけあって、時代の動向に敏感に反応しながらも独自の新しい演奏スタイルを追求していたことが理解できる。

最後にニューヨーク・フィルのアンサンブルの正確さとパワフルで完全燃焼しているサポートにも注目したい。

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2014年05月12日


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メンデルスゾーンの室内楽曲の中でも、弦楽八重奏曲とならんで人気の高いのがこのピアノ三重奏曲。

特に第1番は、チャーミングなメロディが横溢する佳品として、古くから親しまれてきたもの。

カザルスやルービンシュタイン、ハイフェッツといった巨匠たちもトリオを組んで録音を残しているが、ここで聴けるスターン/ローズ/イストミンのトリオによる演奏は、まさに知・情・意のバランスが取れた奇跡的な名演奏だ。

メンデルスゾーンの音楽は、みずみずしい美しさを湛えつつも、どこかしら哀感が漂わせるものが多い。

ピアノ三重奏曲はその最たるものであり、メンデルスゾーンの特色を体現した室内楽曲の佳作である。

本盤に収められたスターンがヴァイオリンをつとめる両演奏は、歴史的な名演と言われるものであるが、スターンが決して突出した演奏をしているわけではなく、ピアノとチェロとの間で調和のとれた演奏を心掛けている点が、名演と言われる所以だと思われる。

このようなアプローチによって、我々はメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲の魅力を満喫することが出来るのであり、その意味では、室内楽曲演奏の規範ともなるべき演奏とも言えるだろう。

この録音を特徴づけているのは、スターンの異様なテンションの高さで、なんという華のある、艶やかで色っぽい音だろう。

また、この曲のピアノ・パートの難しさはその辺のロマン派のコンチェルト以上と言ってもいいくらいであるが、イストミンのピアノは沈着冷静、盛り上げるところは盛り上げ、抑えるところは抑え、知的なプレイでトリオをまとめあげている。

チェロのローズは一歩下がって、スターンをバックアップする姿勢。

2曲とも3つの楽器の音のバランスが良いので、やや聴こえにくいチェロの音までよく聴こえる。

Blu-spec-CDの音質向上効果は目覚ましく、この歴史的名演をより鮮明な音質で聴けるようになった意義は大きい。

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2010年05月16日


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チャイコフスキーは、スターンが57歳の時に残したこの協奏曲の3回目の録音で、一段と円熟味を加えた演奏は、スケールゆたかで味わい深い。

円熟の境にあったころのスターンの豊かな音楽性が、あますところなく発揮されている演奏である。

スターンのヴァイオリンは悠然としていてスケールが大きく、しかも熱っぽく荒々しいロシア的情感を、もののみごとに表出している。

第1楽章から表情たっぷりで、ルバートの語り方も上手のかぎり。

心のこもった節回し、弦を絞るような粘着力のあるカンタービレ、いずれもチャイコフスキーの音楽によく似合う。

しかも曲想にしたがって、鋼鉄のような威力から無限のやさしさに至るまでの表現の幅が実に広い。

いわば自家薬籠中の作品であるが、ここでのスターンは正面から作品に対して、すばらしい集中力をもって真摯に演奏を織りなしている。

しかも、共感にとんだ表現を存分に歌いあげながらも、その演奏が決して表情過多になったり、感傷の澱を残すことがないのは、心技体のすべてが充実していた円熟期のスターンならではの余裕であり、懐の深さであろう。

そうしたスターンのヴァイオリンを、ロストロポーヴィチがいかにも力強く情熱的な指揮で、ロシア的な情感をゆたかに支えて、演奏の味わいをいっそう深めている。

メンデルスゾーンの方はかなり内容を抉った表現だ。

遅いテンポから気迫をこめ、ルバートや青白いピアニッシモを多用し、深いものを目指している。

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2009年08月05日


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ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの名曲《春》《クロイツェル》2曲を組み合わせたものでは、スターンのヴァイオリン、イストミンのピアノによるものが、やはり巨匠同士の演奏として高く評価されるだろう。

スターンはこの曲を自家薬籠中のものにして、自由闊達な表情でのびのびと弾き上げている。

対するイストミンのピアノも、実にしっかりとスターンを支え、室内楽の醍醐味を存分に味わわせる。

特に《クロイツェル》におけるスケールの大きな巨匠性、また《春》のインティメートな表現も、さすがヴェテラン同士のアンサンブルである。

スケールの大きな演奏で、中身も濃く、腹にずしりとくる点は両曲とも同様。

この録音時スターンは63歳だが、年齢を感じさせないうまさがある。

ただ力強さにはいささか不足しているものの、品のよい味わいに満ちている。

スターンのつややかな音色とピアノがよく絡み合っているときには、さすがに大家だという印象を受ける。

気の合った2人だけに、フレージングとアーティキュレーションはよく一致している。

両曲ともスターン唯一の録音である。

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2009年06月20日


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ブラームスは5指の中に数えられるスケールの大きな名演だ。

3回この曲を録音しているスターンの3度目のもので、2度目のオーマンディが指揮した演奏も名盤として知られていたが、それに比べると、いちだんと表現に深みが増し、さらに充実した演奏となっている。

ごく自然に歌い上げながら、スターンの人間味あふれる、あたたかな音楽が素晴らしく、この曲の精神的な深さにまで肉薄した線の太い演奏で感動的だ。

スターンのソロはかつてのように、名人芸とテクニックの冴えを追求するのではなく、ブラームスの内面に食い込み、オーケストラ・パートと四つに組んで、拮抗する形で音楽と対峙している。

旧盤より多少粗いが、張り詰めた気迫、粘着力にあふれた表情、しみじみとした感慨の深さ、フィナーレにおけるリズムの前進性などすべてが素晴らしい。

メータの指揮もシンフォニックで充実度満点。たくましく、またフレッシュで、ソロと互角の勝負を展開して余すところがない。

円熟の頂点に立つ巨匠の芸というにふさわしい演奏になっている。

ブルッフはスターン全盛期の録音で、スケールの大きい厚みと迫力が最高だ。

ひとつひとつの音をじっくりと弾ききる風格の高さはまさに聴きものである。

オーマンディの指揮もスターンにぴったりだ。

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2008年12月23日


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協奏曲はそれほど技巧を外に表さず、音楽の内面をじっくりと掘り下げて、この曲のもつ抒情性を尊んだ外柔内剛の演奏。

最高にすばらしいテクニックを持っていながら、それを決して誇示せず、じっくりと弾いた演奏である。

スターンには1959年にバーンスタインとニューヨーク・フィルをバックに弾いたものもあり、それも、きわめて健康的な快演だったが、この演奏には年輪の厚みを加えた大家の、内面からわき出た心の"歌"がある。

作品の抒情的な面に光をあて、ひとつひとつのフレーズをまごころこめて弾きあげているところがよく、ことに第2楽章の深々とした味わいは絶品だ。

バレンボイムの伴奏も音楽的にきめが細かく、スターンの深みのある演奏を見事にサポートしている。

2つの「ロマンス」は色気のない音で厳しい表現を示す。ともに中間主題の熾烈さが聴きもの。

小澤の指揮は誠実そのもので、充実した厚みと豊かさを持ち、落ち着いた足取りがスターンの音楽にぴったりである。

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2008年05月16日


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ランパル(Fl)、スターン(Vn)、アッカルド(Va)、ロストロポーヴィチ(Vc)という豪華な顔合わせの話題盤だった。ランパル4度目の全曲録音。

これほど超豪華メンバーによるモーツァルトの室内楽というのも珍しい。だいたい、名人級が揃うと、おのおのの個性が強く表に出すぎて、室内楽の演奏として失敗することが多いが、ここでは各人がその個性を殺し合うような心配はまったくない。

全体的にニュアンスがきわめて豊かで、同一のメロディーに対しての4人のアーティキュレーションもよく揃っている。

しかもそこには、4人が集まって音楽をするという楽しさもあふれていて、聴いていると至福の楽興の時が訪れる。

ランパルのフルートは相変わらず絢爛たるもので、音色、技巧ともに申し分なく、ところによっていい意味での遊びのゆとりもみせていて、微笑ましさを感じるし、スターンのヴァイオリンもよくうたっている。

どの曲もきわめて流麗だが、そこには起伏感があり、ふし目もある。

全体にしっかりと構成された陰影の彫りの深い名演だ。

その優雅な旋律を聴いていると、なぜかしらリッチな気分になってくるから不思議だ。休日のブレックファーストにお薦めしたい。

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2008年02月21日


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メンデルスゾーンはこの曲のベストCDの1つ。

スターンは落ち着いたテンポとリズムで清潔な悲しみの情を実感させる。

ロマンティックなこの曲の性格を、よくつかんだ演奏で、メンデルスゾーンならではの優雅で香り高い旋律を、すぐれた技巧で抒情的に歌わせているのがよい。

優れたテクニック、かっちりとした造形を基に、歪みのない音楽性が匂い出るようだ。

ドヴォルザークは生命力のあふれた美演であり、スターンのヴァイオリンの艶と切れ味には聴いていて改めて感心させられる。

洗練と大胆さを兼備した秀演である。

チャイコフスキーも、したたるような美音をもとに真実性を追求した演奏。

スターンのヴァイオリンは悠然としていてスケールが大きく、しかも熱っぽく荒々しいロシア的情感を、もののみごとに表出している。

シベリウスはチョン・キョンファの表現をやや冷たくしたような演奏で、それだけに緻密な練り上げ方が素晴らしく、沈潜した最も音楽的に純粋なヴァイオリンだ。

たくましさとともに、豊かな抒情性をもった演奏で、いくぶん冷たい音色だが、旋律をたっぷりと歌わせながら運んでおり、その気品と格調の高さには惹かれる。

オーマンディの指揮は、現代風にきっぱりとしたスタイルだが、美しい情緒とニュアンスを持ち、内的な意味において豊穣だ。

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