クイケン

2016年12月01日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



古楽界の重鎮であり、トラヴェルソ奏法のパイオニアでもあるバルトールド・クイケンがこれまでにリリースしてきたテレマンの作品を4枚のCDにまとめたアルバムである。

但しこのセットにはソニー音源になるクイケン3兄弟にグスタフ・レオンハルトが加わったパリ・カルテットは組み込まれていない。

彼の演奏はどの曲においても基本的にシンプルで、スリリングな部分こそないが流麗かつ柔軟な演奏にはトラヴェルソの機能を熟知した上でのテクニックの再構築を果たした揺るぎない安定感が感じられる。

尚アンサンブル・パルナッススは彼の兄弟でバロック・ヴァイオリンのシギスヴァルト、ガンバのヴィーラントにチェンバロのロベルト・コーエンが加わったピリオド・アンサンブルの草分けで、ネーデルランド派の手堅い演奏を聴かせている。

CD3及び4の『教則的ソナタ』全12曲ではテレマンによってトラヴェルソのパートは記譜と実際に演奏すべき趣味の良いサンプルが2段に分かれて示されているが、ここでもクイケンの装飾音に関する模範的な解釈を聴くことができる。

一言で言えば中庸をわきまえたイタリア式装飾だが、その再現に当たってはかなり高度なテクニックが隠されていることが理解できる。

またブレスの取り方も巧妙で、押し付けがましさや癖のない演奏は洗練された音楽家、そして勤勉な研究者としてのプロフィールだけでなく後進の指導者としても理想的な存在である筈だ。

ベルギーの古楽器製作者で自身トラヴェルソ奏者のアンドレアス・グラットによって創設されたアクサン・レーベルは、1970年代からピリオド楽器による本格的な古楽演奏をリリースしてきた。

古楽の故郷ネーデルランド出身の奏者を中心に、さまざまなソロ楽器やアンサンブルを高い音楽性で再現した当時としては画期的な企画だった。

当初の録音とその音質はそれほど理想的なものではなかったが、2000年以降機材を一新したことから見違えるほど鮮明な音質になり、ジャケットも気の利いたデザインのデジパックに替わった。

ここに収録されたクイケンの演奏は比較的初期のもので音質的には時代相応といったところだ。

例えば彼の秘蔵オリジナル楽器ロッテンブルクで演奏した『無伴奏トラヴェルソのための12のファンタジー』は初めてのピリオド楽器による全曲録音というだけでなく、トラヴェルソの音楽的な可能性を見事に蘇生させた演奏と言えるだろう。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 00:54コメント(0)トラックバック(0) 

2016年11月07日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



ベルギー出身でレオンハルト亡き後のバロック音楽のネーデルラント派としての再現を研究し牽引してきたのがクイケン3兄弟だが、ここ数年では新録音はめっきり減って後進の指導に当たっていることが想像される。

三男のバルトールド・クイケンも現在66歳で、ここにまとめられた11枚のCDは彼がこれまでアクサン・レーベルからリリースしてきた音源のうちフランスの作曲家の作品を集めたものになり、新しい録音ではないことを断っておく必要があるだろう。

また同時にテレマンの作品をまとめた4枚組も企画されている。

クイケンがその奏法の復元を試みたトラヴェルソは、昨年亡くなったブリュッヘンのリコーダーと並ぶ古楽復興には欠かせない重要な木管楽器だったことは言うまでないが、このふたつの楽器の蘇生によって古楽黎明期を力強く支え発展させた彼らの功績は計り知れないものがある。

クイケンはトラヴェルソの欠点であった不安定な音程や少なからず混乱をきたしていた気まぐれとも言えるピッチの問題をひとまず解決に導き、ソロ楽器として充分活用できるだけの基本的なテクニックを開拓した。

そうした彼の研究と実践がこのアルバムに最良のサンプルとして示されていると言えるだろう。

クイケンのフランス物への解釈は、オットテールの演奏に代表されるように装飾音やイネガルを注意深く取り入れて誇張を避けたあくまでも軽妙洒脱な音楽を再現していることだ。

但し、ルイ王朝の奢侈や宮廷生活の思いがけない倦怠感までも描き出したバーゼルゼットの、より濃密な演奏に比べると、ややあっさりし過ぎているように感じられる。

むしろ彼の実力は2枚のルクレール・ソナタ集と最後のドゥヴィエンヌのフルート四重奏に示されている。

前者ではロマン派以降のフルーティストによって歪められてしまったバロック音楽としてのルクレールのオリジナリティーを復活させた模範的な演奏だし、後者はピリオド楽器アウグスト・グレンザーの機能を駆使した華麗なアンサンブルが聴きどころだ。

ここではまた自由闊達にバロック・ヴァイオリンを弾く寺神戸亮のリーダーシップも特筆される。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 19:59コメント(0)トラックバック(0) 

2016年07月15日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



ラ・プティット・バンドの新録音によるJ.S.バッハの『管弦楽組曲』全曲を1枚のCDに収めたもの。

最近の彼らの演奏で顕著なことは、演奏者数を当時の宮廷楽団の慣習に則り、各パートの奏者をぎりぎりまで絞り込んで、従来の管弦楽というイメージよりもむしろアンサンブルに近い形態をとり、曲の解釈の面でもあらゆる面で誇張のない、よりインティメイトな雰囲気でのバッハの再現を試みていることであるが、その基本姿勢はこの曲集でも全く変わっていない。

リーダーだったグスタフ・レオンハルト亡き後も彼らはシギスヴァルト・クイケンを中心に衰えをみせない活動を続けているが、こうした演奏にレオンハルト譲りの厳格さと共に、彼ら自身が古楽を楽しむ洗練された究極の姿を観るような気がする。

それはまた彼らがこれまでに辿り着いた研究の成果を実践に移したものとしても興味深い。

オーケストラのそれぞれのパートを見ると、第1、第2ヴァイオリンが2名ずつ、ヴィオラ1名、通奏低音としてはバス・ドゥ・ヴィオロン2名とチェンバロのみである。

基本的にこの8人の他に曲によってバッハが指示したトランペット、ティンパニ、オーボエ、ファゴット、トラヴェルソが順次加わるが、習慣的に任意で加えることができるリュートやテオルボなどは一切省いた簡素な編成が特徴的である。

またそれほど重要でないと判断された序曲での繰り返しを避け、無駄と思われる装飾や表現も思い切って削ぎ落としたシンプルそのものの解釈で、足早のテンポ設定と相俟って現在の彼らの虚心坦懐の境地を窺わせている。

しかし響きは素朴であっても素っ気ない演奏とは違い、対位法の各声部を明瞭にしてしっかりした音楽構成を感知させている。

それだけに当時バッハがイメージしていた音像がダイレクトに伝わってくるような気がする。

組曲第2番ロ短調の「ロンド」ではフランス風のイネガルを取り入れてこの珠玉の小品に精彩を加え、終曲「バディヌリー」では逆にテンポを落としてソロの名人芸を聴かせるよりもアンサンブルとしての調和を図っているようだ。

2012年のセッションで、会場になった教会の豊かな残響をある程度取り入れているため、ごく臨場感に溢れた録音ではないが音質には透明感が感じられ極めて良好。

ピッチはa'=415Hzのスタンダード・バロック・ピッチを採用している。

アクサン・レーベルの新譜はデジパックで統一されていて、差し込まれたライナー・ノーツにはシギスヴァルト・クイケンによるバッハの『管弦楽組曲』についての歴史的な考察が掲載されている。

そこには第2番が当初トラヴェルソ用ではなく、ヴァイオリン・ソロが加わったイ短調の組曲だったことも述べられている。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 00:22コメント(0)トラックバック(0) 

2015年09月17日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



1978年にベルギーで行われたセッションで、トラヴェルソが加わるバロック後期の5人の作曲家の作品を収録している。

演奏者パルナッスス・アンサンブルは1970年に結成された古楽器奏者の5人のメンバー、バロック・ヴァイオリンのヤンネーケ・ヴァン・デア・メーア、トラヴェルソのバルトールド・クイケン、バロック・オーボエのパウル・ドムブレヒト、バロック・チェロのリヒテ・ヴァン・デア・メーア、チェンバロのヨハン・フイスから構成されている。

この時期は古楽復興の黎明期であり、まだピリオド楽器とその奏法の復元が模索されていた。

バロック・ブームと言ってもその頃はモダン楽器か、一部古楽器を取り入れた混合編成のアンサンブルが主流で、これらの作品が作曲された時代の音響の再現に興味を抱いた人はクラシック・ファンの中でもごく一部に過ぎなかった筈だ。

それにも拘らずこの曲集では、それまで余り知られていなかったレパートリーを作曲者の時代のスピリットさえも感知させる質の高い演奏と響きを再現している。

そうした研究が彼らの出身地ネーデルランドを中心に確立されたことが、古楽の故郷と言われる所以だろう。

録音機器を一新する前のアクサン・レーベルのCDなので、臨場感では現在のものにやや劣るが音質の点では及第点だ。

5曲の中でも特に彼らがアンサンブルの実力を発揮していると思われるのが、ヤーニチュとヨハン・クリスティアン・バッハの2曲で、前者は対位法に織り込まれたバロック後期特有の憂愁を湛えている。

彼は大バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエルがチェンバロを弾いていたフリードリッヒ大王の宮廷楽壇のメンバーの1人だっただけに、優れた室内楽を多く残していて、このヘ長調の四重奏曲は弦楽に管楽器を取り入れた彼の典型的なスタイルで書かれている。

ヤーニチュの作品集自体それほどリリースされていないが、この曲は現在までに録音された彼のカルテットの中でも最も美しいサンプルと言っても過言ではないだろう。

一方バッハの末っ子ヨハン・クリスティアンの作品は既に古典派をイメージさせる明快な和声と屈託のない曲想が特徴で、ギャラント様式の軽快な装飾も心地良い。

こうした音楽はある程度の洒落っ気が欠かせないが、彼らの演奏は古楽の研究者というイメージから離れた親しみ易さがあり充分に愉しませてくれる。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 00:34コメント(0)トラックバック(0) 

2015年09月12日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



ベルギーのトラヴェルソ奏者で、ヨーロッパ古楽界を担うクイケン3兄弟の1人バルトールド・クイケンがカナダのピリオド・アンサンブル、アリオンを指揮したバロック組曲集で、2001年にケベックで録音されている。

演奏曲目はいずれもバロック盛期の作曲家4人の管弦楽のための組曲で、このうちヨハン・ベルンハルト・バッハ(1676-1749)の組曲ト短調はヴァイオリン・ソロ、そして大バッハの管弦楽組曲第2番ロ短調はトラヴェルソ・ソロが加わるが、バロック・ヴァイオリンはコンサート・マスター、シャンタル・レミヤール、トラヴェルソはクイケン門下のクレール・ギモンが受け持っている。

この曲集の選曲の面白いところは、17世紀末にルイ王朝の宮廷でリュリを中心とする作曲家達によって形成されたオペラやバレエ用序曲付管弦楽組曲が、ドイツでどのように発展したか俯瞰できることで、勿論ここに収録された4曲は総てがドイツ人の作品になる。

もうひとつ興味深い点はバッハ・ファミリーから大バッハと彼の又従兄ヨハン・ベルンハルトの曲を採り上げたことで、同時代の作曲家としてお互いに影響しあった彼らの作風と、その違いも明瞭に表れている。

近年の研究では大バッハのロ短調組曲は、当初トラヴェルソではなくヴァイオリン・ソロで構想されたという説もあり、その意味でも比較の対象に相応しい選曲だろう。

全曲とも符点音符でアクセントを強調した序奏と速いフガートが交替する、いわゆるフランス風序曲に続く舞曲を中心とする個性的ないくつかの小曲によって構成されている。

バルトールド・クイケンが自ら指揮をした曲はそれほど多くない筈だが、流石に若い頃からグスタフ・レオンハルトの下で豊富なアンサンブルの経験を積んだだけあって、解釈が手堅くやはりネーデルランド派の古楽様式を引き継いでいるが、それぞれの曲の個性も充分に引き出している。

J.S.バッハの管弦楽組曲第2番でのクレール・ギモンの飾り気のない清楚なトラヴェルソにも好感が持てる。

クイケン兄弟が要になるラ・プティット・バンドは2012年に大バッハの管弦楽組曲全集の2回目の録音を果たし、そちらではクイケン自身がトラヴェルソを吹いているが、速めのテンポでシンプルな解釈はこのCDの演奏に近いものになっている。

アトマ・レーベルのCDの音質は極めて良好で、録音会場になったサントギュスタン教会の豊かな残響の中にも古楽器の鮮明な響きを捉えている。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 22:53コメント(0)トラックバック(0) 

2012年12月26日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



マタイ受難曲は、かつては大編成のオーケストラと合唱団による壮麗な演奏がもてはやされた時代があった。

戦前のメンゲルベルクと戦後のリヒター(旧盤)は双璧とされた名演であり、その他にもクレンペラーやカラヤンによる重厚な名演もあった。

しかしながら、最近では、ピリオド楽器を活用したり、合唱も小編成によるものが主流となり、マタイ受難曲の演奏様式もすっかりと様変わりすることになった。

それも、単に時代考証的な演奏にとどまるのではなく、芸術的な水準においても十分に満足できる極めて水準の高い名演が生まれているのは、マタイ受難曲ファンとしても大変うれしい限りだ。

そして今般、コープマンやレオンハルト、コルボなどの名演の列に、本盤のクイケン盤が加わることになった。

小編成のオーケストラ、そしてきわめて小規模な合唱団故に、スケールの小ささは否めない。

例えば、イエスが逮捕される箇所のつつましい表現など、リヒター盤やカラヤン盤のような劇的迫力を期待していると完全に肩透かしをくらわされる。

しかしながら、一聴すると淡々と進行しているように見えて、実はその曲想の描き方の何と言う純真無垢さ。

恣意的な箇所はいささかもなく、どこをとっても敬虔な祈りに満ち溢れた至高・至純の美しさを湛えていると言える。

ラ・プティット・バンドの演奏はミサ曲ロ短調を上回る素晴らしいもので、これも20数年前のレオンハルトの記念碑的名盤以来であり、もしかすると、ジギスヴァルト・クイケンのキャリアの頂点ではないだろうか。

バッハの音楽の、そして西洋キリスト教文化の奥深さに、深い感動とともに心が誘われる尊い、稀有な名盤だと思う。

残響を取り入れた録音も極上の極みであり、SACDマルチチャンネルによって、この世のものとは思えないような美しい音場が形成されるのが素晴らしい。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 21:44コメント(0)トラックバック(0) 

2012年11月18日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



バッハのミサ曲ロ短調と言えば、筆者は、これまでリヒターやクレンペラー、カラヤンなどの壮麗にして重厚な名演に親しんできたせいか、各パート一人という小編成を売りにしている本盤を聴く前は、いささか不安に感じていたのが正直なところであった。

ところが、実際に聴いてみると、これがなかなかに魅力的な演奏であるのに大変驚かされた。

このような小編成による演奏や、いわゆるピリオド楽器を使用した演奏には、歴史考証学的には価値があると言えるものの、芸術的にはイマイチという凡演も散見されるが、このクイケン盤については、芸術性においても非常に高いレベルに達している名演と高く評価したい。

一聴すると、淡々と演奏しているようであるが、どこからともなく漂ってくる至高・至純の美しさ。

あたかも、ミサにおける敬虔な祈りの声が周囲から聴こえてくるかのようだ。

また、各パート一人であるが故に、各声部や各楽器の動きは明晰そのものであり、演奏の精緻さをより極める結果となっている点も見過ごしてはならないだろう。

この決してごまかしの効かないアプローチを行った点にも、クイケンの並々ならない自信が満ち溢れていると言える。

レオンハルト盤と聴き較べると、同じく中世の響きでもレオンハルトがフランドル楽派の合唱ポリフォニーを想起させるのに対して、クイケン盤はまるでモンテヴェルディのマドリガーレの世界にいるような錯覚すら覚え、どちらも西洋多声音楽の歴史を眼前に蘇らせる奥深い演奏だと思う。

もちろん合唱を使用していないことによる、言わずもがなの欲求は色々と感じはするし、これがミサ曲ロ短調の究極の姿ではないであろうが、少なくともこれまでに出た1パート1人のミサ曲ロ短調の演奏で、最も精緻で美しい名演であることは間違いないだろう。

レオンハルトの記念碑的演奏より20数年、ラ・プティット・バンドが未だに世界最高のバッハ演奏団体であることも実感させる。

ミサ曲ロ短調を愛する人にとっては必聴盤の1つだと思う。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 21:22コメント(0)トラックバック(0) 

2012年02月01日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



クイケン3兄弟のフラウト・トラヴェルソの名手、バルトルドによる再録音。

オリジナル楽器による古楽復興運動のパイオニアとして早くから活動を開始し、現在も第一線で活躍を続けるクイケン3兄弟によるモーツァルトの名盤。

もう録音されてから30年近くも経つアルバムだが、ピリオド楽器を使ったこの作品の演奏としては、未だに最右翼においても良い名演である。

オリジナル楽器による演奏だが、フルートのみがコピーで、木製で直径の太いフラウト・トラヴェルソを使っている。

オリジナル楽器の奏法を完全に手中にした名人の手にかかると、音楽は、まるで我々のまわりを漂っている空気のごとく、これほども自然で人の気持ちに和むインティメイトな存在になるということを証明しているような演奏。

肌のぬくもりを感じさせるバルトルドのフラウト・トラヴェルソを中心に、お互いに手の内を知り抜いた名手揃いのクイケン3兄弟が、まるでハウスムジークをしているような気安さで楽しい音楽的語らいをしているうちに、彼等の高度の音楽性と高い技術によって、いつしか比類のないアンサンブルに結晶したという風の演奏。

この作品に込められたモーツァルトの遊び心と室内楽的対話の妙が、このアルバムほど何の作為も感じさせずに成し遂げられている例は珍しい。

この演奏を耳にしているとモーツァルトが一歩も二歩もこちらに近付いてきてくれているような印象を受ける。

見事な腕を持ちながら、これ見よがしでない自然さを感じさせるバルトルドのフラウト・トラヴェルソが素晴らしい。

このフラウト・トラヴェルソがやはり時代物の弦楽器と組んで生み出す四重奏の雰囲気は、現代楽器では絶対に得られない独特のもの。

穏やかで柔らかくて、ぬくもりがある響きが創り出す和やかなアンサンブルは、古楽器ファンならずとも心惹かれるものがある。

実に感興あふれる演奏で、時の経つのを忘れさせる。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 20:23コメント(0)トラックバック(0) 

2011年12月06日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



クイケン兄弟にはレオンハルトと共演した録音があり(1973年)、そこではブリュッヘンではなくバルトルド・クイケンがトラヴェルソを吹いていた。

レオンハルトの迫真のソロを中心とした気魄の籠った名演だったが、これはその後1994年にクイケン兄弟が、コーネンとともに録音したディスクである。

同曲は決して難解な抽象的音楽ではなく、より「実際的な音楽」であるとジギスヴァルトが述べているように、あまたあるディスクの中でも、過分な気負いや力みのない大変にリラックスした家庭的な雰囲気のなかで奏でられる。

楽器の指定がないので、さまざまな編成で演奏されているが、4人というのは最小の編成だろう。

しかしクイケン3兄弟とチェンバロのコーネンの演奏には、少しも肩張ったり、声高などころはなく、しなやかに音楽する喜びにあふれている。

しかも、ひとりひとりが自発性にとんだ表現をすばらしい呼吸で織りなした演奏は、生き生きと豊かな表情をもち、最晩年のバッハが対位法の粋をつくした傑作の世界を余すところなく再現している。

特殊作品だからといって深刻ぶったところのない、自然体でのぞんでいるかのような彼らの演奏は、有田たちの雰囲気に近いものを感じる。

むしろ、大らかさという点ではクイケンたちの方が上か。

その意味では最もくつろいで聴けるし、親密な気分に溢れた演奏は同曲のイメージを大きく変えてしまうに違いない。

初版楽譜の曲順を採用している。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 19:05コメント(2)トラックバック(0) 

2009年05月04日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



《音楽の捧げもの》は《ゴルトベルク変奏曲》や《フーガの技法》とともに、バッハの晩年を飾る三大傑作のひとつである。

レオンハルト夫妻/クイケン兄弟盤はオリジナル楽器による最も正統的な演奏で、しっかりとした構成美と自然で透明な響きが素晴らしく、正しく、"王の気品"を湛えた演奏だ。

オリジナル楽器の、ごく小編成による演奏で、3声/カノン/6声/トリオ・ソナタ/カノンの順に収め、3声と6声のリチェルカーレはチェンバロのソロによる。

17〜8世紀のオリジナル楽器(ただしチェンバロは1台がコピー)を用いての演奏である。

全13曲、楽器の組み合わせは様々に変化し、音色の対比が耳を慰めてくれる。

作品の性格から古楽器による演奏が多いものの、様式は様々で、聴き手に感銘を与えるのは、楽器の種類を問わず演奏者の力量であることを改めて認識させられた。

その意味で、最も優れているのはレオンハルト夫妻とクイケン三兄弟を中心とした演奏で、堅実な様式力と明晰な知性が解釈の根底にある。

楽器の奏法も正統的で、とくにアーティキュレーションが聴き手を納得させる。

いわゆるバロック奏法による演奏であるが、バロック音楽ファンならずとも愉しめる表現、表情になっている。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 01:08コメント(0)トラックバック(0) 

2008年11月16日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



バッハの「ブランデンブルグ協奏曲」のような曲が、現代の18世紀の演奏スタイルや譜面の研究の急速な進歩に伴い、日進月歩の勢いで、その音楽の新しい本質の発見に迫りつつあるのに比べれば、バッハのヴァイオリンのソロのレコードは、全く遅れていた。

これはある面では進んでいるレコード・プロデューサーたちの意識が、この面に関しては立ち遅れていたことを示している。

そんな中、バロック・ヴァイオリンによるS・クイケンの全集がますます光りを放つことになる。

バロック・ヴァイオリンによる演奏は、当然今日の楽器とは響きも異なり、奏法も異なる。

ガット弦をバロック・ボウで弾いたときの発音の鋭敏さと、響きの軽くのびやかな抜けが、曲のごく細部までの設計と陰影を明らかにしている。

それでいて演奏には少しも説明的なところや、いかにも「至高の芸術との取り組み」といった尊大さが皆無なのが何より好ましい。

その演奏は、このよく知られた作品を別の面から見たような印象を与える。

安定感でもう一歩という個所もないではないが、この強張りのないバッハには強く魅せられる。

最初は物足りなさを感じるかもしれないが、クイケンの演奏は実はそう感じることがおかしいことを説得させる。

ここでは違う美学が力強く主張されているのだ。文字通り耳洗われる演奏である。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 15:49コメント(0)トラックバック(0) 

2007年11月12日


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。

  

こうみてくると、バロック音楽の世界では、イギリス勢が一番充実しているといってもよかった。

しかし、大陸の演奏家たちも負けてはいない。特に、オランダやベルギーの演奏家たちが良い。

例えば、オランダのオルガン奏者およびチェンバロ奏者のトン・コープマンは、今やバッハ演奏の最先端をゆく演奏家だと評してもよいだろう。

コープマンは、こうした鍵盤楽器の独奏だけでなく、アムステルダム・バロック管弦楽団を指揮して、新しいバッハやモーツァルトの演奏などを聴かせてくれる。

ベルギーには、クイケン兄弟がいる。

彼らは、特に室内楽の分野に大変な才能を発揮しているが、バロック・ヴァイオリンのジギスヴァルト・クイケンが指揮するオーケストラ、ラ・プティット・バンドは、イギリスのオーケストラとはまた違った味わい深い演奏をする。

このコンビの「ブランデンブルグ」もまた聴きものである。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 23:15コメント(0)トラックバック(0) 
メルマガ登録・解除
 

Profile
Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ