ジュリアードSQ

2011年02月17日


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精巧なアンサンブル・テクニックと合理的でザッハリヒなアプローチを武器にしたジュリアードSQ盤は、いわばフランス的な雰囲気や余情にはやや欠けるが、作品のイデアを確実につかみ出した演奏であり、そこでは、歪みのない作品像が描かれている。

彼らの知的なアプローチは、ドビュッシーでは思いがけないほどにロマンティックな表現を生んでおり、とくにファンタジーや官能美に溢れる第3楽章などは、その意外性が大きな聴きどころになっている。

一方、作品の精妙さを徹底的に追求したラヴェルは、特有の硬質で緻密なテクスチュアを巧みに捉えた演奏であり、その読みの深い対処に感服させられる。

ドビュッシーやラヴェルの音楽の表現にはフランス的エスプリが期待される。

しかし、そのエスプリ、つまり機知を言葉で説明するのは困難だ。

そこに洗練された洒脱とかヒューマニティといった要素を加えたとしても、作品に漂う香りを説明するのは難しい。

それはドイツ的なものの対極にあるのかも知れない。

調性和声に支配された論理的構築ではなく、自由な感性による豊かな色彩感であり、流麗さだろう。

それは4人の奏者の一致した音楽作りのコンセプト、響きや音色に対する繊細なバランス感覚とコントラスト感覚が不可欠となる。

ジュリアードSQはアンサンブル音楽のひとつの理想を達成している。

ウェーベルンは明晰なテクスチュアの立ち上がり、特殊奏法の異常なまでの冴え、そして身を切るようなシャープな表現等々、今もってウェーベルン演奏の極致といえるのではないか。

ジュリアードSQの演奏は、今聴いても先鋭的でドライに聴こえる。

このウェーベルンで洗礼を受けた作曲家たちも多いだろう。

現在でもひとつの規範となっているアルバムだ。

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2010年06月07日


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ジュリアード弦楽四重奏団は、アメリカのジュリアード音楽院の教授たちによって、1946年に結成された団体で、何度かメンバー・チェンジを繰り返しながら、アメリカを代表する名四重奏団として、現在でもその活躍ぶりは目覚ましい。

そのレパートリーも、こうした古典音楽からバルトークまで驚くほど広い。

これは1977年、第2代のメンバーによる演奏だが、この団体が最も脂ののっていたころだけに、完璧な技巧を駆使しながら、メリハリをきちんとつけたその表現は、安定感を感じさせる。

演奏は透明で明晰。それは一見モーツァルト的だが、様式美に傾きかかっている。

各楽器の均質の音と技巧、完璧なバランスを保ちながら、暖かい血の通った演奏を目指すようになった第2次黄金期の記録である。

ジュリアードSQは、精妙でシャープなアンサンブルを誇る鋭利で研ぎ澄まされた表現を聴かせているが、緻密さの極限を追求したといえる彼らのアプローチは、とても無垢で純度の高い作品像を彫琢する結果をもたらしている。

4人の声部の動きを明確にしながら、各曲の楽想をきめこまやかに描出しているところなど素晴らしい。

各パートが強靭な張りを持ち、恰幅も座りもよい表現のうちに花も実もあるモーツァルトを聴かせているのが特徴。

K.387の逞しいリズムの上に堅牢に組み上げられた音建築の安定のよさ、K.421の充実感、K.464の硬軟両刀を使い分ける熟達した表現も素晴らしい。

〈狩り〉は出色で、牧歌的な情景が彷彿とし、夢見るようで、ユーモアにも富んでいる。

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2008年11月15日


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現存する弦楽四重奏団で最も素晴らしいチームはどれか、と問われれば、私はためらうことなくジュリアード四重奏団の名をあげることになろう。

音楽創造の理念と水準は極めて高く、残念ながらあとのチームとは、桁が一桁違っているのである。

ジュリアード弦楽四重奏団全盛期のベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は、1964年から70年までの長い期間に慎重に録音されている。

よく知られているように、ジュリアードはその初期には自分たちのアイデンティティを、現代や前衛の作品の怜悧な解釈に置いていた。

彼らはベートーヴェンの全曲録音にあたっても、現代・前衛作品を演奏するのと同様に、音楽の骨格や成り立ち、そして外観を厳しく彫琢することから始めた。

表現への意欲や情緒を先立てないこの厳格な取り組みだが、結果としてはそれが作曲者の意図をとてもわかり易い明晰なかたちで、聴き手に伝えられることにつながっている。

彼らの、演奏という名の創造行為には、高度の緊張と献身的な情熱がみなぎっているのだが、それこそは、ベートーヴェンのこうした大作を弾くのに最も適合した条件である。

余剰を排した潔く美しいベートーヴェンである。

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2008年01月07日


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私はこのブログでいわゆる定評のある名盤というものを再確認するとともに、世間一般の評価と違うものを挙げて問題提起しているが、これもそのひとつ。

評論家先生方はみんなアルバン・ベルクだ。

しかし以前仲間と聴き比べした時、明らかにジュリアードの方がバルトークの核心に鋭く切り込んでいたように、はっきり聴こえた。

そのジュリアード弦楽四重奏団はバルトーク弦楽四重奏曲全集を3度録音しており、最も迫真力があるのは第2回目の録音だが、今は入手難ゆえ、第3回目の録音をここでは紹介する。

ジュリアード弦楽四重奏曲のバルトーク演奏は、緊密なアンサンブルを組みながら情緒面も尊重している。

その各人の情緒表現に統一があるために、どの曲も強い迫力を帯びた、表現力に富んだ音楽となり、6曲通して聴いてもマンネリズムにおちいることがない。

情緒だけを大切にするのではなく構成もはっきりしているので、どの曲も聴きごたえ十分だ。

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