ヨーヨー・マ
2015年07月15日
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ドヴォルザークのチェロ協奏曲は、古今のチェロ協奏曲の中でも最高峰に聳え、最も愛聴される作品として知られている。
ヨーヨー・マはこれまでこの大作を2度録音しており、本作は、1986年にマゼール指揮ベルリン・フィルと共演した第1回目の録音で(第2回目は1996年、マズア指揮ニューヨーク・フィルと録音)、みずみずしいチェロ、強靭な響きの管弦楽が織りなす充実のハーモニーが絶賛された名盤である。
同曲の代表盤としては、今もなおロストロポーヴィチのチェロ、カラヤン指揮ベルリン・フィルの1968年盤を掲げる人も多いであろう。
しかし1度聴くとその無類の迫力に圧倒されるが、まさにこれはライヴ的な名演なのであり、繰り返し聴くCDとしては、聴くたびに段々と飽きてしまうのも事実だろう。
その点ヨーヨー・マのチェロ、マゼール指揮ベルリン・フィルは、マのソロが実にリラックスしていて、しかもスケールも大きく、この難曲を少しも難しくなく聴かせるのは、さすがというかいかにも現代人らしい実力であり、脱帽である。
マは、既に大家としての名声を博しているが、1955年生まれと意外なほど若い。
マのドヴォルザークは、彼の抜群のテクニックと楽譜の深い読みによって、他のチェリストでは到底到達できないような高みに達している。
マは、驚異的なテクニックを発揮しながらも音楽の品格を失わず、完璧なまでのドヴォルザークを描き出している。
リズム処理の素晴らしい演奏で、マは、どんなに複雑に入り組んだ曲想になっても、驚嘆すべきテクニックで楽々とひきあげており、全体に遅めのテンポでゆったりと流し、スケールの大きな表現となっていて見事だ。
マゼールの指揮も巧みで、全体に遅めのテンポでオーケストラをフルに鳴らし、充分に響かせ、力強く演奏している。
凝りに凝った語り口の巧みなマゼール指揮のオケが、冒頭の長い序奏部から存在感があり、これでは独奏者の影が薄くなってしまわないのか?と心配になるが、マが負けずと多彩多弁なチェロを繰り広げ、表情の豊かさでは、おもしろさ随一の快演だ。
マの演奏はフレージングが滑らかで、技術の限界をまったく感じさせず、のびやかな情感が明るい雰囲気を生み出している。
第1楽章の冒頭からして、マは、実にきっぱりとしたフレージング、テンポ、リズムで音楽を開始しながら、3小節目のfzで急に粘るようなテヌート奏法となり、多彩な表現力を示す。
気持ちを十分に込めながらそれでいて品格を失っておらず、たとえば、第1楽章の第2主題(6分11秒から)や第2楽章の出だし(0分40秒から)、さらには10分56秒からは、すべてppかpの指示があるが、マは、弱音を保ちながらも高らかに歌い上げる。
弱音に気持ちを込めていきながらも、音を解放していくなどということは、超絶的なテクニックに裏打ちされた深い音楽理解によってはじめて可能となる。
第3楽章のラスト(12分25秒から41秒)において、マは信じられないようなスケールの大きなクレッシェンドを、他のチェリストの倍の時間をかけて行なうが、こんな芸当はマにしかできない。
小品の2曲も好演で、「ロンド」の洒落たリズムと節まわしが素晴らしく、「森の静けさ」では厚いカンタービレと音楽が楽しめる。
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2015年05月18日
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バッハの『無伴奏』がチェロにおける「旧約」聖書ならば、ベートーヴェンの『ソナタ』は「新約」聖書に匹敵すると言われるが、デビュー間もないヨーヨー・マと、盟友アックスによる若々しい掛け合いが音楽に溌剌としたエネルギーを与えた快演盤。
まさにベートーヴェンのチェロ・ソナタのエッセンスをとらえた代表的名演として高い評価を得て、世界中でベストセラーを記録した1983年録音作品である。
ヨーヨー・マは、1955年に台湾系中国人を両親としてパリに生まれたが、まもなく渡米し、ジュリアード音楽院でヤーノシュ・シュタルケルとレナード・ローズに師事した。
その優れた才能は早くから評判となり、欧米各地でオーケストラと共演、多くのリサイタルを開いて絶賛を博して、いまや現代のチェロ界を背負う最高の演奏家として注目されている。
彼が、ポーランド生まれで、アメリカを中心に活躍している名ピアニスト、アックスと組んだこの演奏は、新しい資料による新ベートーヴェン全集によっているため、これまでのとは多少違っている。
このふたりの演奏は、ロストロポーヴィチとリヒテルとの熱演とは対照的に、こちらは飛び切り才能のあるふたりの若者(当時)による掛け合いが楽しく、穏やかでのびのびとしている。
ヨーヨー・マのチェロは、きわめて豪胆で明快、曖昧さのない切れ味の鋭いもので、持ち前の美音と優れたテクニックで、実に素直に悠然と弾きあげており、新鮮な音楽をつくりあげているところがよい。
アックスのピアノもヨーヨー・マとぴったりと呼吸が合っており、最上のアンサンブルと言えるところであり、全体に新鮮で引き締まった好演である。
チェロを豊かに、艶やかに鳴らし、ヴァイオリンのように自由自在に扱うヨーヨー・マの特色が生かされ、自由奔放に歌い、弾むようなリズム感は、聴き手を爽快な気分にさせてくれる。
実にしなやかでのびのびと歯切れのよい運びの中にチェロとピアノのぴったりと息の合った二重奏がかもしだす抒情のかぐわしさは、他に類を見ないもので、自然体・平常心で臨んで曲の味わい深さを出した好演と言えるだろう。
アックスのピアノも少しも引けをとらない。
アックスもベートーヴェンの音楽解釈には一家言をもった演奏家であり、両者のデュオのコンセプトを見事に一致させながらも、古典派時代の単なる伴奏ピアノと独奏楽器という様式を脱した真の二重奏ソナタとしての緊張感に満ちた演奏を繰り広げており、過剰表現のない、洗練された形式美に横溢する。
このコンビの息の合った二重奏はある時は朗々とした歌を生み出し、ある時は熱っぽいクライマックスを築き上げてゆく。
特に第3番では、ベートーヴェンがスコアに書き込んだ野卑なユーモアが、特にスケルツォなどで大炸裂、音楽に新しい生命力を与えている。
そして、豪快な第3番に対して繊細緻密な第4番という具合に、その描き分けが完璧にうまい。
「魔笛」の主題による2曲もヨーヨー・マの技巧は優れていて危なげなところはどこにもなく、短調の変奏での深く熱っぽいチェロの歌が胸を打つ。
ネアカのベートーヴェンだが、両者の和気あいあいのアンサンブルと冴えたテクニックのせいで、これらの作品が実に楽しく味わえる。
音質は従来盤ではあるが、十二分に鮮明であり、本盤の価値を高めるのに大きく貢献している。
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2015年02月02日
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ショスタコーヴィチの「第5」については、筆者としてはムラヴィンスキー盤を唯一無二の名演と高く評価してきたが、バーンスタイン盤も著しく世評が高いため、無視するわけにはいかない。
バーンスタインの2度目の録音であるが、旧盤に比較して、全体の解釈にはあまり変更はないものの、抒情的な箇所ではより繊細な表現を見せるなど、外面的な効果や受けを狙った派手な音出しなどしない音楽に深く入り込んでゆくような演奏が展開され、彫りの深い演奏になっている。
バーンスタインは、スタジオ録音よりライヴのほうが本領を発揮するのかもしれないと思うような腹にズシリと響く怒涛のように押し寄せる快感、観客もあまりの迫力に静まり返っているような緊張感が素晴らしい。
特に、第3楽章において、そのような表現が顕著であり、ライヴならではの熱気も相俟って、実に感動的な名演を成し遂げている。
バーンスタインの「第5」の特徴として揚げられるのは終楽章の終結部。
初演者のムラヴィンスキーをはじめ、ほとんどの指揮者がゆったりとしたテンポで壮大に締めくくるが、バーンスタインは快速のテンポで突き進む。
ただ、例えばマゼールのように、素っ気ない感じはいささかもなく、快速のテンポの中に熱い血が通っているのは、さずがと言うべきであろう。
暗くて、ひねくれて、爆発もし、嘆き、皮肉、辛辣な批判、暗号と、生きる為に迎合もせざるを得なかったショスタコーヴィチの音楽、また、バーンスタインの代表的名盤とも言えるだろう。
ニューヨーク・フィルの音はとても明るく、特に管楽器は色彩豊か、そのキラキラした音で深刻な曲を演奏すると表現主義的な特徴が強調されてとてもいい。
ベストの演奏であるかどうかは別として、一発勝負の録音で聴衆を感動させる完璧な演奏は作曲家でもあるバーンスタインという天才指揮者でないと不可能といっても言い過ぎではないであろう。
併録のチェロ協奏曲は、ヨーヨー・マのチェロが実に上手く、なおかつ説得力があり、オーマンディの併せ方も見事というほかはないだろう。
低音域の多用と曲の雰囲気からソリストによっては重たい音楽になってしまいそうな曲だが、ヨーヨー・マの軽やかで、自然に流れていくようなチェロ独奏は、この曲の本来の姿だと思われるショスタコーヴィチ独特のクールさや、シニカルな感じをうまく表現している。
ここには、旧ソ連時代の鬼気迫る暗い雰囲気というような要素はないが、このようなノーマルなアプローチにより、かえってショスタコーヴィチの高踏的な芸術を色眼鏡を通さずにダイレクトに味わうことができるといった点も考慮に入れておきたい。
本盤はSACDでも出ているが、SACDにしては音質はイマイチ。
これに対して、Blue-spec-CD2は、あくまでも筆者の印象ではあるが、SACDよりは多少音質が改善されたのではないかと思われる。
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2010年05月30日
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ヨーヨー・マの上品・柔軟な音楽性が十二分に発揮された美演である。
ハイドンの第1番は彼の小味な繊細さがひときわ目立ち、その豊かな高貴さは比類がない。
あまりとさらりと表現しているので、チェロというよりも、むしろヴァイオリンの演奏でも聴いているかのような感じだ。
フィナーレのリズム感とテクニックの卓越も驚嘆に値する。
チェロならではの力強さを求めようとする人には向かないかもしれないが、特に、この第1番のような曲は、テクニシャンのヨーヨー・マにはまさにぴったりの演奏といえる。
第2番もきわめてすっきりと、鮮やかな技巧で弾きあげた演奏で、速めのテンポから実に伸びやかな音楽が流れてゆく。
音色も美しく磨きぬかれていて、とくに第1楽章の流麗な運びかたはすばらしい。
そしてなによりも、その天真爛漫なおおらかな演奏に魅せられてしまう。
ガルシア指揮のオーケストラもマのソロにぴったりだ。
ボッケリーニも卓越した演奏で、マはすばらしいテクニックで、この曲を鮮やかに弾きあげている。
この曲もチェロらしい力強い響きを求める人には、多少不満が残るかもしれないが、その磨きあげられた美しい音色で、しなやかに、しかもデリケートに表現しており、全体に音楽の流れがすっきりとしているところがよい。
聴いたあとに、さわやかさの残る演奏だ。
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2010年05月13日
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ここにきくサン=サーンスのチェロ協奏曲、およびラロのチェロ協奏曲は1980年に、シューマンのチェロ協奏曲は1985年に録音されている。
ヨーヨー・マはデビュー以来、一貫して音楽界の第一線に在り、今日でも活動は目覚ましいが、音楽的に最も好ましい状態にあったのは1980年代だったのではないかと私は考えている。
最近の彼は自らの器用さ、多才さに、やや足もとを掬われがちのように思う。
ここにきく彼のチェロはしなやかで、フレッシュ。ききなれた曲にもかかわらず、随所に思いがけないような発見をもっている。
他のチェリストが容易になしえないような軽やかな身のこなしが、なんともすばらしい。
サン=サーンスは高貴で上品な音色、しっかりとしたカンタービレやフレージングに驚かされる。
それは曲のいかなる部分も自分の思い通りに弾けるテクニックの勝利だが、同時に最高の音楽性が裏付けになっているのだ。
マの繊細で上品な音色は、このサン=サーンスの作品には、まさにぴったりといえよう。
ラテン的な味わい、という点では、いまひとつであるが、そのみずみずしい表現には魅了されてしまう。
ラロはさらに見事で、マは、抜群のテクニックを駆使しながら、この曲のもつ優美で繊細な性格を、見事に表現している。
優美さの中にこくをもった音色と表情、曲想にしたがって微妙に色合いを変えてゆくあたりは、聴いていて身を乗り出してしまうほどだ。
マの演奏の特色である、多彩に変化させた音色や、微妙な表情づけが、うまく生かされた演奏だ。
指揮者マゼールも、個性的な独奏者の才能にうまく対応し、整理が行き届いた敏感な棒さばきだ。
コリン・デイヴィスとのシューマンは、ミュンヘンでのライヴ録音である。
マは、過度な表現は避けながら、のびやかな、美しい音色で、シューマンの音楽のもつやわらかな情感を、見事に表現している。
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2009年06月06日
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ヨーヨー・マは1955年に台湾系中国人を両親としてパリに生まれたが、まもなく渡米し、ジュリアード音楽院でヤーノシュ・シュタルケルとレナード・ローズに師事した。
そのすぐれた才能は早くから評判となり、欧米各地でオーケストラと共演、多くのリサイタルを開いて絶賛を博した。
いまや現代最高のチェリストの一人として注目されている。
彼が、ポーランド生まれで、アメリカを中心に活躍しているピアニスト、アックスと組んだこの演奏は、新しい資料による新ベートーヴェン全集によっているため、これまでのとは多少違っている。
このふたりの演奏は、ロストロポーヴィチとリヒテルの熱演とは対照的に、穏やかでのびのびとしている。
マのチェロは、持ち前の美音とすぐれたテクニックで、実に素直に悠然と弾きあげている。
マのソロはきわめて豪胆で明快、曖昧さのない切れ味の鋭いもので、全体に引き締まった好演である。
アックスのピアノもマとぴったりと呼吸が合っており新鮮で実によく付けていて、マとともに最上のアンサンブルといえる。
ソナタでは実にしなやかで伸び伸びとした運びの中に、チェロとピアノのぴったりと呼吸の合った二重奏がかもしだす抒情のかぐわしさは、他に類をみないもので、自然体・平常心で臨んで曲の味わい深さを出した好演。
「魔笛」の主題による2曲もヨーヨー・マの技巧は優れていて危なげなところはどこにもなく、短調の変奏での深く熱っぽいチェロの歌が胸を打つ。
アックスのピアノもしっかりしている。
ネアカのベートーヴェンだが、両者の和気あいあいのアンサンブルのせいで、これらの作品が実に楽しく味わえる。
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2009年05月29日
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この演奏を聴いていると、チェロはこんなに従順な楽器であったのかと錯覚してしまう。
ヨーヨー・マの手にかかってはチェロは楽々と演奏されてしまう。
このCDを初めて聴いたとき、チェロ界に新時代が到来した、との思いを禁ずることができなかった。
いかにも伸び伸びとしていて技術上の労苦の痕跡など少しもない。
マの演奏は明るく豪快な音色と闊達なテクニックで、実に楽々とこの難曲を退治し尽くしている。
ここでマが聴かせるのは、あふれるような情熱をもって、おおらかに歌いあげてゆく青春のバッハというほかない。
マの表現からはリラックスした雰囲気が伝わり、深刻なかげりのある深さはまだないが、それは彼の今後の成熟を待たなければならないだろう。
この曲集がこんなに楽しいものかと、いささか疑問に感じられるほどである。
ただ若いうちではできないこともあり、マは身につけた技巧の限りを尽くして、臆せずバッハに挑んでいる。
大バッハの神品といった有難さよりも、音楽を純粋に味わう喜びの方が、ストレートに伝わってくる。
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