セラフィン

2017年07月28日


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セラフィンは中庸という観念からは決して逸脱しない鷹揚なテンポ設定で、小細工をせずに本筋のカンタービレを充分に聴かせながら、次第にスペクタクルなクライマックスを創り上げる、まさにイタリア・オペラ指揮者の鏡のような指揮ぶりが堪能できるアルバムだ。

オーケストラを自在に歌わせ、一方で音楽の起承転結を絶妙にわきまえた老練な手法で聴衆を煽り立てて、弥が上にも場面を盛り上げるような効果的なクレッシェンドやアッチェレランドの術を心得ていた指揮者だった。

それらは単純明快な声の饗宴とも言えるイタリア・オペラでは演奏上の要でもあるが、彼の采配には単なる職人技ではない、殆んど奥義を究めたとも思える巧みなテクニックが感じられる。

セラフィンが多くのスター歌手達を起用して上演したローマ・オペラ座の黄金期は事実上1950年代から60年代にかけてで、それは幸福にもこの序曲集が録音された時期と重なっている。

ロッシーニの序曲では曲中に必ずと言っていいほど管楽器のソロがちりばめられている。

時としてかなりのテクニックを必要とするパッセージが容赦なく現われて、追い討ちをかけるような執拗なクレッシェンドが舞台の緞帳を上げる前に聴衆の気分を高揚させるひとつの聴かせどころであるだけでなく、演奏するオーケストラのメンバーやアンサンブルの技術的な実力が露呈されてしまうという、彼らにとっては決して予断を許さないレパートリーでもある。

ムーティによって頂点を迎えた数年前に比べれば、当時のローマ歌劇場管弦楽団のパートごとの個人的な技術レベルがそれほど高くなかったことは事実で、それはこの序曲集にも現われていることは否定できない。

しかし一見明るく明け透けな開放感の中に、セラフィンによって引き出された豊かな音楽性と軽快な輝かしさ、劇場感覚に密着した融通性などはそれを補って余りある演奏効果を上げている。

1964年にドイツ・グラモフォンからLPでリリースされた音源で、後にCD化されたものの既に久しく製造中止になっている名盤のひとつだ。

このCDは英カルーセル・レーベルからのリイシュー廉価盤なので多くは望めないが、LPに収録されていた『セヴィリアの理髪師』第2幕第2場の2分余りの間奏曲「嵐の音楽」が何故か抜けている。

ただし録音状態に関してはこの時代のものとしてはかなり優れているし、リマスタリングも充分満足のいく仕上がりだ。

1963年10月4日から7日にかけてグラモフォンのプロデューサー、ハンス・ヴェーバー及びレコーディング・エンジニアのギュンター・ヘアマンスが当時ローマ市内にあったRCAイタリアーナのレコーディング・スタジオAで収録したもので、音質が鮮明で分離状態も極めて良好なステレオ録音になる。

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2016年04月19日


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ヴェルディ晩年の傑作オペラ『オテロ』の歴史的録音では、カラヤンが1960年にデル・モナコ、テバルディを主役に起用したウィーン・フィルとの音源と、その6年前エレーデが同じキャストでサンタ・チェチーリアを指揮したイタリア勢による1954年録音の2組のデッカ盤を無視することはできないだろう。

カラヤン盤は流石にオーケストラの実力に物を言わせてドラマを抉り出しているが、歌に関しては音像がやや後退している感じが否めない。

エレーデは全盛期だった歌手陣に全力投球させて声の饗宴を実現しているが、逆にオーケストラの統率力ではいくらか弛緩していて時として冗長に感じられる。

一方セラフィン、ローマ歌劇場管弦楽団による当盤は、声楽とオーケストラのバランスでは絶品で、奏法が拮抗しつつ歌心に満たされた、しかし緊張感溢れる舞台を創り出している。

1960年録音だが新規にディジタル・リマスタリングされて生々しいサウンドが蘇っていて、対訳は省略されているが、トラック見出し付の英、仏、独語による簡易なシノプシスが掲載されている。

皮肉にもカラヤン盤と同年のリリースになったわけだが、こちらはRCAとの契約で主役2人をヴィッカースとリザネックに委ねていて、彼らの良くコントロールされた歌唱は高く評価できるが、持ち声をダイレクトに活かす朗々としたイタリア的美声とキレの良さ、そしてその表現力はデル・モナコ、テバルディには及ばない。

リザネックの声質は若き悲劇のヒロイン、デズデモナにしては暗めでいくらか太いのが玉に瑕だ。

ただしここではヤーゴをティト・ゴッビが演じていて、彼の声による演技は主役の2人以上に展開するドラマの要を押さえて恐るべきものがある。

第1幕の「乾杯の歌」からヤーゴの邪な野望と民衆を焚きつけて煽動する巧みな心理描写が見事だが、第2幕のアリア「クレード」と幕切れの「神懸けて誓う」でこのオペラの実質的なピークを形作っている。

ちなみにゴッビのヤーゴは1959年イタリア歌劇団来日の時の録画も残されていて、彼の舞台上での役者としての優れた演技も忘れ難いものだが、オペラ全体の出来栄えと録音の良さではこちらを採りたい。

ローマ歌劇場管弦楽団はウィーン・フィルやサンタ・チェチーリアに比べればいささか荒削りだが、その前身は『カヴァレリア・ルスティカーナ』や『トスカ』の初演を飾った、オペラ一筋に鍛えられたオーケストラでもあり、歌に付き随う柔軟な融通性と劇場的効果の表出に優れた腕を持っている。

セラフィンは戦前ローマ・オペラ座の音楽監督を10年以上に亘って務め楽団のテクニックを洗練させたが、晩年しばしば古巣に戻ってこのセッションでも聴かれるように1960年代初頭に彼らの一時代を築いている。

彼の指揮は徹底した声の表現による明快なドラマ作りにあり、それを妨げるような一切の小細工を避けているが、管弦楽法にも精通していて、カンタービレの真髄とも言える絶妙な指揮法とバランス技を縦横に駆使し、リリカルな場面と劇的な場面の交錯とその対比で稀に見る効果を上げている。

それは本来の伝統的なイタリア・オペラの姿でもあるだろう。

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2015年12月24日


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セラフィンはスカラ座黄金時代にカラスやテバルディなどのスター歌手を起用したイタリア・オペラを中心とする劇場作品の全曲録音を数多く遺していて、それらは未だにオペラ上演史上燦然と輝く名演であることに間違いない。

勿論この序曲集にもセラフィンの作品に対する演奏上の百戦錬磨のテクニックと劇場感覚的な秘訣が示されている。

それはオペラ劇場という特殊な空間でこそ本来の効果を発揮するものだが、このCDでもその巧みさは充分に感知できる。

そのひとつがオーケストラを呼吸させるように自由自在に歌わせるカンタービレで、しかも歌わせることによって緊張感が弛緩したり、音楽が冗長になることを完璧に避けている。

それはセラフィンが音楽構成の脈絡や起承転結を心得ていたからで、自然で大らかな歌の抑揚を横溢させながらドラマを進めていく手法は現在のイタリアのオペラ指揮者にも伝統的に受け継がれている。

ここに収録されている序曲や前奏曲はいずれもシンプルなオーケストレーションだが直接聴衆の感性に訴えて、幕開けを準備する雰囲気作りに奉仕されている。

トゥリオ・セラフィン(1878-1968)はトスカニーニの後を継いでスカラ座の指揮者に就任してから国際的な演奏活動を始める。

1923年からはニューヨークのメトロポリタン歌劇場にも10年ほど席を置いて、カルーソ亡き後のアメリカでのイタリア・オペラ隆盛にも貢献しているが、彼の劇場作品のレパートリーは多くの初演を合わせると243曲に上り、その中にはドイツ、ロシア物も含まれている。

またローザ・ポンセルやマリア・カラスなどにイタリア風のカンタービレやベル・カントを伝授して歌手の育成にも寄与した。

セラフィンは歌手の長所を巧みに引き出して、それを最大限活かす術を知り尽くしていたマエストロだったと言えるだろう。

アバドやムーティの時代に入ると過去の歌手達が慣習で歌っていたスコアには書かれていない装飾やカデンツァは一切排除する、いわゆる原典主義が定着するが、セラフィンの頃はまだ指揮者や歌手にも音楽への裁量がかなり認められていて、効果的な演奏と見做されれば拒まれなかった。

そうした柔軟なアプローチがこの序曲集を精彩に富んだものにしているのも事実だろう。

メディチ・アーツはBBC音源を中心にリマスタリングしたメディチ・マスターズ・シリーズをリリースしていた英国のレーベルで興味深いカタログを持っていたが、2010年以降新盤は出していない。

現在ではメディチtvという名称でDVD主体の販売を行っていて、これらの映像はベルリンに本拠を置くユーロ・アーツでも扱っているが歴史的音源のリイシューCD盤は打ち切られたようだ。

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2015年11月21日


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マリア・カラスは生涯にドニゼッティの『ランメルモールのルチア』のセッションを2回行った。

どちらも指揮はトゥリオ・セラフィンだが、このセットは1953年のモノラル盤で、ディ・ステファノとティト・ゴッビが協演している。

一方1959年盤ではタリアヴィーニとカプッチッリが他の役を固めているが、主役ルチアの余りにも鮮烈な「狂乱の場」の絶唱と、若き日のディ・ステファノの情熱的なエドガルド、性格俳優を声で体現したゴッビのエンリーコなど、総合的にみてデ・サバタ指揮の同メンバーによる『トスカ』と並ぶオペラ録音史上に残るセッションとして高く評価したい。

勿論カラスのより細やかな心理描写や円熟味、スタイリッシュなタリアヴィーニの歌唱やより充実したオーケストラということでは第2回目のステレオ録音も劣っているわけではないが、ここには短かったカラス全盛期の生々しい歌声が横溢している。

カラス以前のいわゆるコロラトゥーラ・ソプラノによって歌われたルチアは、例外なく声楽的なテクニックを優先させたアクロバティックな連続技の披露に留まり、主人公に隠された心理やおぞましい情念などは表現し得ない綺麗ごとに終始していたのが事実だ。

しかしカラスはゴッビと並んでドラマを声によって描く術を知っていた稀有な歌手だった。

この2人はまた舞台上の演技でも傑出していて、イタリア・オペラが美しいアリアの羅列だけではないことを改めて世に知らしめた。

彼女の声は決して純粋な美声とは言えないが、声の明暗やダイナミクスを自在に使いこなして、何よりも役柄になりきるカリスマ的な才能に恵まれていた。

発狂したルチアの延々と続くモノローグ「狂乱の場」は、作曲家ドニゼッティの霊感が乗り移ったかのように真に迫っていて、音源の古さをカバーして余りあるものがある。

指揮者トゥリオ・セラフィンはトスカニーニの後を継いでスカラ座を振り、伝統的なイタリア・オペラ上演の継承者としての地位を築きながら、逸早くマリア・カラスの才能を見出してイタリア式ベルカントを教え込んで彼女を多くの主役に抜擢した。

彼は歌のパートを活かすということにかけては超一級の腕前を持っていたが、オーケストラの采配も実に巧みで、ここではやや非力なフィレンツェ5月祭管弦楽団を率いて、緻密でしかもスケールの大きな舞台を創り上げている。

また第1幕で歌われるアリア「辺りは静けさに包まれ」や狂乱の場「香炉は燻り」でのカンタービレやコロラトゥーラ唱法からも、カラスが如何にセラフィンからの薫陶を受けていたか想像に難くない。

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2011年03月13日


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このベッリーニ最後のオペラも《ノルマ》と同様、カラスとセラフィンを越える演奏は残念ながらまだない。

半世紀以上も前の演奏だから当時の古い様式感に問題はあるものの、20世紀にベルカント・オペラを蘇らせた偉大なソプラノの才能を後世に伝える歴史的名盤だ。

この《清教徒》はカラス全盛期のエルヴィーラ役の究極の解釈を示す名唱で、この強靭な声の威力と見事なコトラトゥーラ技術が、求心的なドラマを形成する方向へ凝縮していく姿は、この不世出の大歌手の凄絶なまでの素晴らしさを伝えてくれる。

ベッリーニの命とも言えるカンタービレなフレーズにおけるみずみずしさ、レチタティーヴォの驚くべき雄弁さ、〈私は愛らしい乙女〉の優美な鮮やかさから、〈狂乱の場〉の悲劇的な表情とアクロバティックなテクニックの壮絶さなど、どの部分を切り取ってもその歌唱の見事さには感嘆するしかない。

それにこれは痩せる前の完璧なテクニックを誇るカラスなのだ。

さらに絶対的な価値を与えているのがセラフィンの素晴らしい指揮で、全ての歌手の美点を最大限に引き出しつつ、音楽の美しさを余すところなく表現する技は真の玄人芸と呼ぶ見事さである。

共演のディ・ステファノやパネライは力唱しているが、残念ながら様式を外れている。

カラスの凄さに酔う、または圧倒されるためのCD。

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2011年02月02日


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名盤ひしめく《オテロ》だが、その中にあってもっともイタリア的伝統を汲むオーソドックスなアプローチに立ちつつ、しかもこの作品の奥深さと劇的な真実性を表わし出したのが、この録音に聴くセラフィンの名指揮だろう。

セラフィンの指揮は、仕上げに粗さを残してはいるが、この名指揮者ならではの音楽的充実度を示している。

トスカニーニと並んで、イタリアの伝統的ヴェルディ解釈の重みを伝えてくれる。

イタリア・オペラらしいカンタービレ的特質と、音楽の流れに沿った自然な表現性を生かしながら、作品そのものに雄弁に語らせることによって、この傑作の本来の魅力を味わわせてくれる。

歌手も見事で、とりわけイアーゴ役のゴッビの神技とも呼べる性格表現はまさに極めつけ。

このゴッビのうまさに匹敵しうるのは、トスカニーニ盤のヴァルデンゴだけだろう。

タイトル・ロールを歌うヴィッカーズもまさにこの役柄にぴったりのドラマティックテノール。

ストレートな歌いぶりで将軍オテロの直情的な性格を捉えて、オテロの英雄的で凛とした強さと風格を常に感じさせるものがある。

また同時に、その剛直さ故にやがてイアーゴの罠に易々とはまってしまうことも予感させる歌唱と言えようか。

ヴィッカーズは作曲家への奉仕の点で、デル・モナコと決定的に違う。

男性的なその声を、愛に苦しむ将軍を表現するために柔軟に使いこなしているのだ。

やや異質だが、リザネクのデズデモナも高レヴェルの歌唱を示している。

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2010年08月10日


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新盤はカラスの2度目のスタジオ録音による全曲盤で、1959年の収録。

《ノルマ》とともに《ルチア》もまたカラスとセラフィンによる最良の遺産である。

このオペラを語るには、やはりマリア・カラスから始めなければならない。

声そのものの威力・美感に加えて、恐ろしいまでに核心に迫る性格描写。

カラスのルチアは、まさに永遠に不滅である。

傍らに置いて、いつでも聴きたくなるような演奏というのではないけれど、なにはともあれ、一度は体験しておかねばお話にならない。

1953年の旧録音や、1955年のカラヤンとのライヴ録音に比べると、明らかにカラスの声は、美しさもテクニックの切れ味も減退している。

しかし、それでもなお残されたカラス独自の厳しい役作りと歌唱への自己同化の妙には非凡なものがある。

このステレオ録音のカラスの声も瑞々しさを失っているわけではないし、情感豊かな表現も一段と素晴らしい。

イタリア・オペラ最大にして最後の巨匠とも呼ぶべきセラフィンのリードもまた素晴らしい。

すべてを知り尽くした名伯楽は、いぶし銀の味わいを湛えた熟達の音楽作りを聴かせてくれる。

タリアヴィーニの個性的なエドガルド、若き日の声の威力に溢れたカプッチッリのエンリーコも聴き応え充分。

また、カラスとセラフィンの偉大さも2つの録音を聴くとよりはっきりとわかるだろう。

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2010年08月09日


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旧盤はカラスの声の絶頂期を記録した素晴らしい名盤である。

このオペラにおけるルチア像をつくり上げるには、マリア・カラスが決定的といってもいいような強い影響を与えてしまった。

ルチアはコロラトゥーラ・ソプラノの名技を発揮する役として知られたが、カラスは恋に悩み悶える薄幸のヒロインに変貌させた。

彼女の存在を抜きにしては、このオペラ、およびルチアについてふさわしく語ることができない。

ここにおける彼女の声の強さ、凄さは破格のものだし、その性格描写たるや尋常一様のものではなく、聴くたびに圧倒されてしまう。

カラスは後に同じセラフィンの指揮でステレオ再録音し、それも名盤として名高いが、この録音のカラスは声に余裕があるだけでなく、オペラ界に君臨し始めた頃の瑞々しい情感がみなぎり、過度な表情をつけずに物思わしげでデリケートな若い姫君の性格を見事に描き出す。

エドガルドのディ・ステファノも若々しい声の魅力を発揮して、甘く情熱的な中にも感情表現に心をこめているし、エンリーコの若き日のゴッビも、頑迷な性格を創り上げ、すでに非凡な才能を示している。

これらの名歌手を見事にまとめているセラフィンの指揮も特筆すべきであり、フィレンツェ5月祭管弦楽団などを率いて、無駄のない、底力のある音楽性豊かでダイナミックにオペラティックな雰囲気を紡いでいるのも魅力的である。

カラスの録音における最強のコンビ絶頂期の記録で、この名盤を聴かずして「ルチア」の演奏を語ることはできない。

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2009年08月13日


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ヴェリズモ・オペラの激情的特質を最も見事に表現した理想的な名演。

旋律の豊かな肉付き、感情内容の深さ、リリカルな効果の美しさ、そしてオペラティックな魅力のすべてにわたってまったく申し分ない。

ヴェリズモ・オペラの傑作のひとつ《カヴァレリア・ルスティカーナ》は、レオンカヴァッロの《道化師》と共に上演される事も多い。

しかしその音楽の特質は、微妙に異なっている。

《道化師》においては、まず主役カニオの強い個性が全曲の感銘度を左右するが、こちらはサントゥッツァとトゥリッドゥのぶつかり合いとそれをまとめ上げる指揮者の力量のバランスが重要である。

その点で、この1枚は数多くのこの曲のディスクの中でも特に重要なものと言える。

シミオナートのサントゥッツァは、メゾでありながら高音部の輝かしさを持ち、かつドラマティックな表現力においては肩を並べるものがない。

デル・モナコの輝かしい力に満ちたトゥリッドゥもよい。

人間味に溢れたシミオナートのサントゥッツァに対し、利己的な役柄をドラマティックな声と剛直な歌い方でまとめるデル・モナコのトゥリッドゥを、名伯楽セラフィンが支えている。

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2009年06月24日


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《ノルマ》はカラス最高の当たり役で、セラフィンの指揮で全曲を2度録音、いずれも至芸の名盤として知られ、一般的にはステレオ録音が決定盤とされている。

1960年のステレオ録音でのカラスは、声にやや衰えがあるが、声技を駆使して微妙な感情の演出を行い、裏切られた女の悲しみと怒りの心情を鋭く劇的に表現。

ポリオーネのコレッリは、いかにも男臭い声でローマの総監督らしい直情径行の男性を好演している。

セラフィンのスケールが大きく雄弁でエネルギッシュな指揮は前回とあまり変化はないが、ステレオだけにオーケストラと合唱がより鮮明である。

ただし、個人的には1954年のモノーラル録音を推薦したい。

カラスの声が絶頂期のため苦渋を感じさせるところがなく、多彩な声の色での表現に惹かれる。

ポリオーネのフィリッペスキは役の解釈が通り一遍ではあるが素直な美声で、コレッリの凛々しい舞台姿を思い浮かべて聴くのなら別だが、私にはコレッリよりも聴きやすい。

大きな違いはアダルジーザ。ステレオのルートヴィヒは確かにうまくはあるが、声質が暗くてイタリア・オペラ向きとは言えず、重唱にベルカントの味がない。

1937年の最初の全曲録音でもアダルジーザを歌ったモノーラルのスティニャーニはイタリアのメゾ・ソプラノの長年にわたる第一人者。

声が明るく輝かしく、カラスとの2つの二重唱での美しいからみはベルカント歌唱の極みで陶然となる。

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2009年06月11日


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《椿姫》というオペラは、その大衆性と裏腹に、名演・名盤と呼べる録音が驚くほど少ない。

このオペラに今なお決定的な名演がないのは、第2次大戦後、最高のヴィオレッタだったカラスが最盛期に録音する機会を逸したためである。

カラスはこの1955年に行なわれた録音の4ヵ月前に、スカラ座でジュリーニ指揮の《椿姫》で大成功をおさめたばかりだったから、もしこの録音で歌っていたら素晴らしい名演が残っただろう。

しかし、カラスは2年前にチェトラに録音していたので、同じ曲を6年間は他社に録音できないという厳しい専属契約があった当時、EMIに録音できなかった(現在、カラスのヴィオレッタの名唱はライヴ録音で聴けるが音質はよくない)。

だが、この録音にセラフィンが抜擢したステッラのヴィオレッタも、カラスには及ばないとはいえ素晴らしい。

ステッラはこの録音の前年にスカラ座の《オテロ》のデスデーモナで成功をおさめ、EMIに《ドン・カルロ》のエリザベッタを録音しているように、本来の声質はリリコ・スピントだが、カラス同様セラフィンの指導を受けたのだろう、ここでは若々しい柔軟な声でヴィオレッタの悲劇を見事に表現している。

やはり最盛期だったディ・ステファノのアルフレードとゴッビのジェルモンの歌唱も素晴らしく、さらにセラフィンの作品の本質に迫る劇的な緊張感をたたえた指揮、それに鋭く反応しているスカラ座の管弦楽団と合唱団、充実したキャストのオペラティックな感興豊かな表現力も非常に味わい深い。

セラフィン盤は、指揮の玄人好みとも呼べる渋い音楽作りが楽しめる。

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2009年05月18日


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こと、《トロヴァトーレ》に関しては、セラフィン盤をぬきにしては考えられない。

何よりも指揮の素晴らしさに圧倒され、聴けば聴くほどに味わいを増す名演である。

ステッラ、コッソット、ベルゴンツィ、バスティアニーニの4人によるものは、戦後のイタリア・オペラ界が《トロヴァトーレ》のために組めた最強のキャストであった。

このセラフィン盤ほど4人の主役の声のバランスが見事な演奏もない。

これに匹敵するのは、ほぼ同時期に録音されたトゥッチ、シミオナート、コレッリ、メリルによるシッパース盤だが、惜しむらくは指揮がいささか単調すぎる。

それに対し前記4人のキャストを揃えたセラフィン盤は、作品のスタイルと性格を明快に表現する指揮に加えて、スカラ座のオーケストラと合唱団も素晴らしく、このオペラの魅力を満喫することができる。

特にコッソットのアズチェーナ、バスティアニーニのルーナ伯爵は最高であり、殊に後者の存在感は、他に比肩できる者なしの名唱。

《トロヴァトーレ》をつらぬく激情が、この時代のオペラならではのスタイルを明らかにしつつ、炎と化している。

これほど何度聴いても魅了される名演もそう多くはないが、これがまだ国内盤CD未発売とは!

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2008年12月09日


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EMIは1953年にカラスと専属契約を結ぶとスカラ座とも契約し、イタリア・オペラの全曲録音を次々と行ったが、スカラ座の音楽監督だったデ・サバタが病気で引退した後、主要なオペラの指揮を任されたのが、当時スカラ座では指揮していなかった巨匠セラフィンだった。

しかし、一連の録音がすべてセラフィンの確かな手腕を証明しているように、この「リゴレット」も名演である。

録音はセラフィンがステッラを起用した「椿姫」とほどんど同時期に行なわれたものだが、ジルダのカラス、マンドヴァ公爵のディ・ステファノ、リゴレットのゴッビという当時のEMIが誇るイタリア・オペラの黄金のトリオともいうべき名歌手たちもベスト・コンディションであり、いずれの役柄にふさわしい最高の声と表現を聴かせる。

コロラトゥーラの技巧とドラマティックな声を兼ね備えたカラスの深い感情表現、ディ・ステファノの輝かしい美声、ゴッビの多彩な声をたくみに使った性格表現のうまさに加え、セラフィンの作品の様式感を的確に把握した指揮もすばらしい。

とりわけ、リゴレットが最愛の娘ジルダを公爵に奪われたことを知って怒りを爆発させる第2幕後半以後のスリリングなドラマの展開と劇的な迫力は、オペラを知りつくしていたセラフィンならではのものだろう。

また3人の主役以外のスカラ座の脇役たち、管弦楽団と合唱団はいつもながら充実していて、オペラ的な雰囲気を豊かにしている。

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2008年02月24日


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《ノルマ》はイタリア・オペラ全曲録音のなかでも、5指に数えられるべき不屈の名演。

同時にカラスという不正出の天才の全貌を余すところなく結晶させた名唱として、まず第一に挙げられるべきものに違いない。

やはり《ノルマ》はカラスにとどめを刺すといってよいだろう。

聴きかえすたびに鮮烈な感動に打たれる。

数種ある彼女の《ノルマ》録音の中で、この1960年セラフィン盤は、他のキャスや指揮、音質等を含めて、もっともバランスが良く、充実した出来映えを示しているもの。

カラスの声の真の全盛期は1955年を挟む数年間。

それゆえこの盤はその時期からやや外れ、歌唱の上では必ずしも彼女のベスト・ノルマではないけれども、それを持ち前のテクニックで補って余りある彫琢と陰翳をみせる。

セラフィンの棒は十二分までの精妙さ、コレッリ、ルートヴィヒ、ザッカリアの声も実に輝かしい。

総合的な仕上がりという点で、未だこのディスクに匹敵する《ノルマ》演奏はないといってよい。

ボイトの言葉「ベルリーニを愛さないような人は、音楽を愛していないのだ」を思い起こさせるカラス&セラフィンの遺産である。

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2007年12月20日


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プッチーニの音楽はメロディーの美しさによって知られているが、それ以上に音楽とドラマとの結合が見事だ。

カラヤン指揮、フレーニ、パヴァロッティによる《蝶々夫人》がこのオペラの精妙な美しさをきわめた名演だとすれば、このセラフィン指揮、テバルディ、ベルゴンツィのものは、このオペラから最もドラマティックな緊張と悲劇的感動を生み出した演奏として今なお最右翼に位置している。

このオペラは、典型的なプリマドンナ・オペラだけあって、蝶々さんの出来不出来によってすべてが決まってしまう。

その点で、テバルディが歌ったこのディスクは素晴らしい。

なんといっても、テバルディの円熟した演唱が聴きものである。

蝶々さんの役を、これほど完全に、表情豊かに歌った例はほかにない。

声も絶頂期のものだけあって輝かしく瑞々しい。

ベルゴンツィも、この役としてはやや知的で硬質だが、よく歌っている。

他のキャストもいい。

さらに付け加えておきたいのは、セラフィンの指揮で、その整然たる造形は実に見事である。

《蝶々夫人》は日本の長崎を舞台にしたオペラだが、そうした東洋的な雰囲気を、セラフィンは万全な表現力でまとめている。

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2007年12月19日


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セラフィン盤は、このオペラのあるべき理想的な姿を描き出した不滅の名盤である。

イタリア・オペラ演奏の偉大な伝統を最良の姿で具現したこの録音は、聴けば聴く程に、新しい発見と感動を与えてくれる。 

セラフィンがその実力を遺憾なく発揮したこの演奏は、最も正統的な解釈において《ボエーム》の規範といえるもの。

歌手陣も万全。聴き手の涙を誘う。

空前のスケールの中に可憐さと繊細さを漂わせるテパルディ、美声の極にありながら見事な性格表現で物語の奥行きを深めるバスティアニーニ、シエピも比類なく、これほどの優しさを込めた「外套の歌」は他にない。

脇役陣も充実し、この不朽の名盤の価値を高めている。

イタリア・オペラの隠れた味わい、楽しみは、名歌手を統率する名指揮者が生み出す強固なアンサンブルの妙である。

決して独善的ファシズムの強権を発動させるのではなく、アンサンブルをまとめ、オペラに強いフォルムと秩序を与える名指揮者の神技は、オペラの渋い楽しみとなっている。

この《ボエーム》でイタリア・オペラ界の20世紀最高の巨匠セラフィンは、細やかな配慮に満ちた音楽作りでプッチーニの音楽ドラマの緻密な美しさと悲しさの真髄を余す所なく描き出している。

叩き上げの職人指揮者の頂点にあるセラフィンの玄人の芸は、比類が無い。

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