ランパル
2018年11月08日
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2015年にワーナーから全4巻計69枚のランパル全集がリリースされたが、こちらは1955年から58年にかけてランパルがプラハで録音したスプラフォン音源総てを2枚のCDに纏めたもの。
全収録曲のリマスタリングはこのセットのために2016年に行われているが、このうちフランツ・クサヴァー・リヒターのフルート・ソナタ及び協奏曲は初CD化になる。
当時まだ再生機器が普及していなかった東欧諸国でのステレオ録音は西側に数年遅れをとっている。
この2枚もモノラル録音ではあるが、チェコでは早くから質の良いレコーディングを手掛けていて、この頃の音源はむしろ旧ソヴィエト圏で録音されたものを凌ぐ、西側レベルのクリアーな音質が再現されている。
ここに集められたレパートリーは多くランパル自身のリサーチによる選曲で、例えば彼が3回に亘って録音しているカール・シュターミッツのフルート協奏曲ト長調は、ランパルがブリュッセルの王立音楽院の図書館で発見したものだ。
このセットの2枚目の最後に収録されているヴァーツラフ・ノイマン、プラハ室内管弦楽団との協演は1955年の第1回目のセッションになる。
演奏曲目はプロコフィエフを除いてボヘミア系の作曲家の作品で占められていて、中でもインドルジフ・フェルトのフルート協奏曲はここに収録された8曲の中では最も注目すべき音源だ。
当時30歳だったフェルトがランパルに献呈した作品で、初演はランパルによって1956年に行われたが、このセッションはその2年後に録音されている。
テクニック的にかなりの難曲と思われるが、流石に魔術師と言われたランパルの手に掛かると、高い緊張感を孕んでいながら全く神経質にならない色彩豊かで華麗な作品に仕上がっている。
プロコフィエフのソナタニ長調でもランパル特有の潤いを持った艶やかな音色が、この曲に垢抜けたセンスを与えているだけでなく官能的でさえある。
オイストラフは作曲家にヴァイオリン・ソナタへのアレンジを奨めて、彼の演奏によるヴァイオリン版も遺されているが、ここではフルートの音色と機能が駆使されたオリジナル・バージョンの美しさが聴きどころだろう。
その他のバロック作品はいわゆるピリオド的解釈とは異なった、広い音域を使った玉を転がすようなモダンなカデンツァで飾られている。
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2018年11月06日
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最終巻はランパルがかつてのHMV傘下のレーベルに録音したCD16枚分のコンプリート・レコーディング集で、4巻の中では1951年から76年にかけての最も広い録音期間からの網羅的なコレクションになる。
多くはモノラル録音だが音源の状態は比較的良好で、第1巻より音質では優っている。
また彼は早くから室内楽にも情熱を傾けていたので、ソロに留まらずファリャ、ストラヴィンスキーやオネゲルなどのアンサンブル作品も豊富に含まれているし、僅かながらオーケストラの首席奏者や指揮者としての活躍も聴くことができる。
一人の名手の出現により、その楽器の歴史が大きく進歩・発展することは決して珍しいことではない。
古くはチェロのカザルスやギターのセゴビアの例が見出せるが、現代でもトランペットのアンドレ、オーボエのホリガーなど、真のヴィルトゥオーゾが楽器の歴史に新しい1ページを与えるとともに、音楽に対する見方そのものすら塗り替えてきた。
1922年、フランスのマルセイユに生まれたジャン=ピエール・ランパルも、20世紀の器楽界に大変革をもたらした音楽家で、戦後のフルート界を大きく変えた巨匠である。
確かに、ランパル以前にも、マルセル・モイーズのように現代のフルート奏法の完成者と言われる巨匠は存在した。
しかし、ランパルの影響力はフルート界にとどまらない広範囲なものであり、音楽界全体に彼の存在が大きな影響を与えたのだった。
それは、稀にみる豊麗な音色と卓越したテクニックを誇る技巧派としての素晴らしさ、バロックから現代の作品に至るレパートリー面の柔軟性、そして洗練された音楽性など、まさに尽きることのない魅力に溢れたものである。
しかも、ランパルのフルートは、従来のフルート演奏からは考えられないほどにダイナミックな表現力を誇るものであり、ランパルの世界はまさに従来のフルート演奏の常識を覆す多彩な魅力で楽壇に衝撃を与えてきたのである。
ランパルの出現により、フルート音楽に対する見方は大きく変わった。
フルート音楽は、それまでの限られたファンにとどまらず、多くの人々にとって、最も身近なものになったと言ってもよいであろう。
ランパルは新しい試みにも意欲的だったが、CD15のラヴィ・シャンカルとの協演は筆者のよく聴く演奏のひとつだ。
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2018年10月29日
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ジャン=ピエール・ランパルのHMV及びエラート音源の集大成全4巻計69枚のCDのうち、2015年の春にリリースされた2セットに続く後半の2セットのひとつになる。
第1巻から第3巻まではクロノロジカルな編集がされていて、この23枚組にはランパル円熟期の1970年から82年にかけてのステレオ録音がまとめられている。
今回発売されたランパル全集中で、録音も新しく枚数も一番多いボックスになるが、クロエ、ルクレール、ブラヴェ、メルカダンテ、ジアネッラといったあまり著名でない作曲家の作品が数多く含まれている。
バッハやモーツァルトの有名な曲は3回位録音し、音楽史上残されたあらゆる作品を片っ端から録音していく姿勢は、同世代のトランペットの名手モーリス・アンドレと相通じるものがある。
音質も4巻の中では最も良く、全体的に中音部がやや薄い欠点はあるが、音源の保存状態も良好だ。
フルート奏法の芸術的な洗練はマルセル・モイーズを抜きには語れないが、モイーズが去った後のフランスのフルーティストの系譜を鮮やかに更新したのがランパルであることは間違いないだろう。
彼のフルートは奇しくもモイーズの詩的で、ある種哲学的なスタイルとは一線を画した屈託のない即興性と華麗な音色が魅力だ。
1970年代のランパルはまさに絶頂期で、テクニック、音楽性、音色が最高レベルでかみ合っていて、クヴァンツやレクレールといったシンプルな音楽が、愉悦に満ちている。
こういう音楽を生き生きと聴かせるのは存外難しく、ランパルを否定する笛吹きも多いのだが、ランパル以上にこういった作品を聴かせるフルーティストがいないのではないか。
ランパルのほとばしる音楽性と芳醇な音色が、音楽の愉悦を与えてくれるし、鳴らすまで8年かかったというヘインズが神がかり的な音で響いている。
また、ハチャトゥリアンの協奏曲や一世を風靡した『ハンガリー田園幻想曲』、『ヴェニスの謝肉祭』に代表される彼の情熱と天衣無縫さの背後にはそれを裏付けるだけの理論とテクニックが控えていることは言うまでもない。
それぞれのジャケットにLP初出時のオリジナル・デザインがプリントされているが、CD化でのリカップリングでものによっては3種類のが1枚のジャケットに組み合わされて印刷されている。
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2018年10月27日
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この第2巻はランパルのエラート音源第2集に当たり、1963年から69年に録音された20枚のCDで構成されている。
第1巻に比べると総てがステレオ録音で音質自体もかなり向上しているので、彼の玉を転がすような艶やかな音色やフレージングの妙が一層際立ったものになっている。
今回のセットでもやはり幾つかの廃盤の復活が注目される。
そのひとつがCD17のスーク、ルージィチコヴァ及びエドヴァルト・フィッシャー指揮、プラハ合奏団との協演になるバッハのブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調とCD16の三重協奏曲イ短調だ。
LP初出時にはこの2曲がカップリングされた、当時としては高音質のしかもコレクション仕様の豪華なジャケットに収納されていた。
その後CD化されたかどうか定かではないが、現在のエラートのカタログからは完全に消えていたものだけに復活を歓迎したい。
特にブランデンブルク第5番は宮廷風の典雅な響きと3人のソリストの名技主義が傑出した演奏で、第2楽章アッフェットゥオーソの可憐なトリオは、アンサンブルの完璧なサンプルと言えるだろう。
もうひとつが名コンビロベール・ヴェイロン=ラクロワと組んだCD18のソナタ集『忠実な羊飼い』全6曲で、実際にはヴィヴァルディの作品ではなく、ニコラ・シェドヴィユがヴィヴァルディ風に仕上げた贋作だが、第2番ハ長調は一時期NHK.FMの『バロック音楽の楽しみ』のテーマ音楽として流されていた。
筆者も少年時代にこのラジオ番組を通じてバロック音楽の魅力に開眼した懐かしい思い出がある。
ランパルの流暢なソロを引き立てるヴェイロン=ラクロワの気の利いた即興的なチェンバロが軽妙洒脱に仕上げている。
20世紀の作品ではCD2のイベール、ジョリヴェ、リヴィエのフルート協奏曲集、CD11のジョリヴェとティスネの作品集及びCD15のプーランクとプロコフィエフのソナタ、ドビュッシーの『シランクス』、バローの協奏曲、更にCD20のダマーズやアルマなどの一連の演奏がそれぞれ味わいのあるパッショネイトな名演だ。
とりわけフランス現代物ではメカニカルな技巧に優れていても、クールになり過ぎるとコケティッシュな魅力や特有の軽やかさが充分に出てこないものだ。
ここでのランパルの解釈と演奏は多くのフルーティストにとっても常に模範的だったし、将来もその価値を失わないだろう。
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2018年10月23日
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ジャン=ピエール・ランパル没後15周年記念としてリリースされた全4巻計69枚のCDセットの第1巻に当たり、この10枚はコンプリート・エラート音源の第1集目となっている。
以降順次ワーナー傘下のレーベルの総ての録音が復活しリリースされたので、順次取り上げてみたい。
これらの中には廃盤の憂き目に遭ったものも多く、筆者自身LPでしか持っていない演奏もあったので結局購入することにした。
周知の通りレパートリーに関してランパルはオールマイティーで、どの作曲家の作品を聴いても期待を裏切られることはないが、一大ブームを惹き起こしたバロック音楽ではいわゆるピリオド奏法とは一線を画したモダンでスマートなアプローチが特徴的だ。
当然それは古楽の再現ではなく、あくまでも現代的センスに溢れたユニークな解釈と言えるだろう。
このセットは4巻の中では最も古い1954年から63年までの多くのモノラル音源を含んでいて、時代相応の稚拙な録音やヒス・ノイズも目立つが、彼の多彩な芸術観を知る上で一聴の価値がある。
筆者がランパルの演奏をLPで初めて聴いたのは少年時代に遡るが、その後実際のコンサートで見た金色に輝くフルートを携えた彼の姿は、その演奏からも殆んどマジシャンのようなイメージを残した。
今でこそ鍍金されたフルートは珍しくないが、少なくとも筆者が見た初めての金のフルートが彼のものだったと記憶している。
その燦然と輝くような艶やかで垢抜けした音色と軽やかで流麗な奏法は如何にもフランスの奏者に相応しいものだった。
ランパルはその録音の多さでもモーリス・アンドレと並んで同時代の他の管楽器奏者を圧倒的に凌駕している。
その代表的な部分がエラート音源なので第2巻以降も期待できるが、また彼と協演した当時の多くのソリスト、指揮者やアンサンブルの一時代を画した名演が再現されるのも嬉しい。
例えば指揮者としてはジャン=フランソワ・パイヤール、クルト・レーデル、フリッツ・ヴェルナー、ソリストではハープのリリー・ラスキーヌ、オルガンのマリー=クレール・アラン、チェンバロではロベール・ヴェイロン=ラクロワなど往年のメンバーが花を添えている。
ライナー・ノーツは27ページほどで曲目一覧及び演奏者、録音データの他に英、仏、独語による簡易なランパルのキャリアが掲載されている。
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2015年09月01日
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ジャン=フランソワ・パイヤールがこの協奏曲集を録音したのは1973年で、現在でこそバロック音楽の演奏形態では主導権を握っているピリオド楽器のアンサンブルは、当時はまだ古楽の再現を模索していた時代で、ごく一部の聴衆しか獲得していなかった。
その頃既に全盛期を迎えていたのがモダン楽器による演奏だった。
その草分け的な存在がパイヤール室内管弦楽団で、ジャン=フランソワ・パイヤールによって1953年に創設されたジャン=マリー・ルクレール器楽合奏団を母体として59年に結成された。
彼らの品のある大らかなサウンドはバロック・ブームの隆盛にも大きく貢献したが、中でもソリストに名手を揃えたバッハのブランデンブルク協奏曲集は一世を風靡した画期的な録音だった。
リヒター、ミュンヘン・バッハ管弦楽団のような厳格に統率された厳しさこそないが、より開放的で屈託のない表現と垢抜けた音響に惹かれたファンも多かった筈だ。
ここに彼らの演奏をお薦めするのは懐古趣味ではなく、一時代を築いた音楽家達の情熱とその洗練を極めた演奏に聴くべき価値があると思うからで、難解な理論を振りかざすことなく常に彼らの柔軟な感性に沿って平明な音楽の再現に務めた姿勢は、忘れ去られてしまうには余りにも惜しい。
その後モダン・バロックの衰退と共にパイヤールも他のレパートリーを開拓することになるが、この6曲は彼らが頂点にあった頃の演奏を刻んだ贅沢な記録でもある。
廉価盤なのでリーフレットに曲目データ、演奏者とアンサンブルについての簡易な紹介が印刷されているだけだが、幸い音質は良好な状態に保たれている。
当時の話題のひとつが第1番の第1ホルンをモーリス・アンドレが吹いていることだった。
第2番で彼はピッコロ・トランペットを演奏しているが、このあたりのキャストにも融通性があり、彼のホルンもなかなかの熱演だ。
また第3番第2楽章の即興による短いカデンツァと第5番のチェンバロ・ソロはアンネ=マリー・ベッケンシュタイナーで、彼女はパイヤールの通奏低音奏者としても個性的なモダン・チェンバロの響きを聴かせている。
その他にもフルートのランパル、オーボエのピエルロ、ヴァイオリンのジャリなど当時のフランスの名手を揃えたオール・スター・キャストのスタイリッシュな演奏を楽しむことができる。
尚第1番でバッハが指定したヴィオリーノ・ピッコロは通常のヴァイオリンで、第2番と第4番の笛のパートはリコーダーではなくベーム式フルートで、そして第6番のヴィオラ・ダ・ガンバのパートはチェロで演奏されている。
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2015年07月23日
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LP時代初期、ヴィヴァルディの《四季》と並ぶ大ヒットを記録したバッハの《管弦楽組曲》。
ミュンヒンガーは、後発のレコードメーカーながらいち早くLPレコード製作に着手したデッカに成功をもたらした。
埋もれていた名曲《パッヘルベルのカノン》を世に出したのもミュンヒンガーで、バロック音楽ブームの火つけ役も担い、ローマ教皇やイギリス女王の御前でも演奏した。
ミュンヒンガーにとって3度目の当録音は、前2作よりも遅めのテンポで骨組みのしっかりした純ドイツ風の演奏になっている。
近年のバロック研究の成果として生まれた新たな解釈ではなく、オーソドックスなスタイルを根底においたバッハである。
ミュンヒンガーはバロック音楽作品を小編成のオーケストラで忠実に再現することにより、作品が持つテクスチュアそのものを浮き上がらせることに成功した指揮者だった。
だが、バロック音楽に飽き足らずフルオーケストラを志向し、シュトゥットガルト・クラシック・フィルを結成、そこでモーツァルトやベートーヴェンの交響曲を録音し、また、彼とシュトゥットガルト放送交響楽団との録音もある。
だが、ミュンヒンガーの名盤となるとバロック音楽を取り上げていたシュトゥットガルト室内管弦楽団のものになるだろう。
本盤に収められたバッハ《管弦楽組曲》、それに《ブランデンブルク協奏曲》《パッヘルベルのカノンーバロック音楽の楽しみ》は気品あるバロック音楽のスタンダードである。
ミュンヒンガーのバッハの演奏は、骨組みがドイツ的にがっしりしており、流麗で、しかも色調が渋く、古典的な香りをたたえているのが特色である。
この演奏も解釈そのものは、前2回の録音とほとんど変わりはないのだが、全体にややテンポを遅めにとり、丹念に仕上げており、音楽の内容がいちだんと円熟味と深みを増しているのが素晴らしい。
さらに今回は、今までの2回の録音よりも、響きと表情に丸みが加わり、柔らかくコクのある演奏になっている。
フルートにジャン=ピエール・ランパルではなくウィーン・フィルの首席フルート奏者、ヴォルフガング・シュルツを起用。
第2番のソロ・パートでウィーン風の洒脱な演奏が楽しめ、シュルツのテクニックも大変見事だ。
また、デッカから彼らのバッハの《管弦楽組曲第2番、第3番》と《ブランデンブルク協奏曲第2番、第6番》を1枚に収めたタイトルもリリースされている。
こちらは廉価盤シリーズでの発売なので比較的入手しやすく、ミュンヒンガー入門盤としてはお手ごろである。
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2014年09月25日
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これは素晴らしい名演だ。
極上の美演と言っても過言ではないのではないだろうか。
モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲の古典的な名盤としては、他にトリップ(フルート)、イェリネック(ハープ)の各ソロ奏者とミュンヒンガー&ウィーン・フィルによる演奏(1962年)が存在している。
当該演奏に対して、本演奏はすべてフランス人音楽家たちによる演奏。
録音年も1963年でありほぼ同じ時期。
あらゆる意味で対照的な名演が同時期に生み出されたというのも、実に興味深い事と言える。
前述のミュンヒンガー盤がドイツ風の重厚さの中にもウィーン風の優雅さを兼ね備えた素晴らしい名演であったが、本演奏は徹頭徹尾フランス風の名演。
ランパルのフルート、ラスキーヌのハープのいずれもが、フランス風のエスプリに富んだ瀟洒な味わいに満ち溢れている。
加えて、パイヤール指揮のパイヤール室内管弦楽団も、これら各奏者の演奏を巧みに引き立てつつ、実に洒落た味わいの優美な演奏を展開している。
確かに、ミュンヒンガー盤にあった重厚さにはいささか欠けているきらいがないとは言えないが、演奏全体に漂うフランス風の洒落た味わいには抗し難い魅力が満ち溢れており、その味わい深さ、エレガントとも評すべき気品の高さにおいては、本演奏の方に若干軍配が上がると言っても過言ではあるまい。
カップリングされたフルート協奏曲もランパルならではの名演だが、とりわけ、フルートとハープのための協奏曲については、本演奏はミュンヒンガー盤と並んで2強の一角を占める超名演と評価し得るところであり、今後とも、この2強を超える演奏を成し遂げるのは至難を極めると言えるだろう。
録音は、今から50年近く前の録音であるにもかかわらず従来盤でも比較的満足できる音質である。
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2014年04月17日
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ミュンヒンガーのバッハ演奏はドイツ的でがっしりと構築されており、色調が渋く、古典的な香りを湛えているのが大きな特色である。
この演奏もそうで、ドイツ音楽の伝統をふまえ、バッハの音楽の本質を真摯に追求するミュンヒンガーならではの演奏と言えるだろう。
管弦楽組曲第2、3番は骨格のしっかりとした表現に貫かれ、ブランデンブルク協奏曲第2、6番も素晴らしい出来栄えだ。
いずれも古典的な美しさを十全に追求した名演奏で、驚くべき鮮明な音色と、一糸乱れぬアンサンブルで一貫している。
遅めのテンポで細部に至るまで入念に練り上げ、極めて精緻に仕上げた典雅で格調高い表現には強く心を打たれる。
ミュンヒンガーの客観的なアプローチとシュトゥットガルト室内管弦楽団の華やかな響きは、古典と現代の結合を目指しているようだ。
その意味で、同じドイツのオケでもカラヤン&ベルリン・フィルの演奏とミュンヒンガー&シュトゥットガルト室内管の演奏で聴き比べたら、かなり違うことに驚く。
教会音楽と同じイメージで慈悲深さのようなものを求めるなら、ミュンヒンガーのこのアプローチによる演奏は、ちょっと違う。
もっと、器楽合奏の楽しみ、躍動美、そんな雰囲気をミュンヒンガーの演奏からは感じられるのだ。
特に管弦楽組曲第2番では、ミュンヒンガーは第1ヴァイオリンとフルートを重ねて書いてある部分を、協奏曲仕立てでフルートを際立たせたり合奏で盛り上げたりと工夫しているようで、それをバックにしたジャン=ピエール・ランパルの名人芸を十分に堪能できる。
初めて聴く人は、淡白過ぎて拍子抜けするかも知れないが、そこに溢れ出る器楽合奏の躍動は、何度も聴くうちに楽しみと快感に変わってくる。
まさにバッハの音楽がミュンヒンガーの血となり肉となっている感じがする。
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2013年06月23日
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本盤には、パイヤールがパイヤール室内管弦楽団ほかとともにスタジオ録音したバッハのブランデンブルク協奏曲全集(1973年)から抜粋した第1番、第4番及び第6番が収められている。
既に、昨年11月には、当該全集のうち、第2番、第3番及び第5番が既にシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化されて発売されており、本盤をもって、不朽の名盤とされている当該全集全体がシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化されたことになったことは誠に慶賀に堪えないところだ。
それはさておき、演奏は実に素晴らしい。
ブランデンブルク協奏曲は、現在では古楽器奏法やピリオド楽器を使用した軽妙な演奏が主流となっているが、本演奏が行われた当時は、現代楽器を使用した比較的編成の大きいオーケストラによる重厚な演奏が主流であった。
フルトヴェングラーやクレンペラー、カラヤン、リヒター、ブリテンなど、このタイプによる名演は枚挙に暇がないほどであり、ブリテンによる演奏は若干その性格が異なるが、バッハという大作曲家を意識したドイツ風の重厚な演奏が行われていたと言っても過言ではあるまい。
ところが、パイヤールによる本演奏はまるで異なるタイプの演奏だ。
パイヤールの演奏は、現代楽器を使用した比較的小編成のオーケストラによる、どちらかと言えば伝統的な演奏様式によるものであるが、醸成された音楽は、前述のような大指揮者による重厚な演奏とは全くその性格を異にしている。
本盤の演奏のどこをとっても、フランス人であるパイヤールならではのフランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいが付加されていると言えるところであり、まさに洒落たセンスの塊のような演奏とも言えるだろう。
ドイツ風の重厚な演奏が主流であった同曲の演奏に新風を吹き込んだセンス満点の演奏とも言えるところであり、あたかも同曲がフランスの宮廷音楽のように聴こえるほどだ。
高貴にして典雅、そして優美にしてなおかつ愉悦性に富んだ本演奏は、同曲のこれまで誰も気が付かなかった魅力を引き出すことに成功したものとして高く評価すべきであり、前述のような大指揮者による名演にも十分に対抗し得るだけの内容を兼ね備えた素晴らしい名演と高く評価したいと考える。
パイヤール室内管弦楽団や、フルートのランパルをはじめとした各奏者のセンス満点の美演も、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。
音質は、1973年のスタジオ録音ではあるが、グリジー=スウィヌ、ノートルダム・デ・ローズ教会の残響を生かした名録音であったこともあり、従来CD盤でも十分に満足できるものであった。
しかしながら、今般、ついにシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤が発売される運びになった。
本シングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤は、従来CD盤とはそもそも次元が異なる極上の高音質であり、音質の鮮明さ、音圧、音場の広さのどれをとっても一級品の仕上がりである。
いずれにしても、パイヤール&パイヤール室内管弦楽団ほかによるセンス満点の極上の美を誇る名演を、このような極上の高音質SACD盤で味わうことができるのを大いに喜びたい。
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本盤には、パイヤールがパイヤール室内管弦楽団ほかとともにスタジオ録音したバッハのブランデンブルク協奏曲全集(1973年)から抜粋した第2番、第3番及び第5番が収められている。
当該全集は不朽の名盤とされているだけに、残る第1番、第4番及び第6番についても、シングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化されたとのことであり、足掛け2年にわたって高音質化がなされるということになった。
それはさておき、演奏は素晴らしい。
ブランデンブルク協奏曲は、現在では古楽器奏法やピリオド楽器を使用した軽妙な演奏が主流となっているが、本演奏が行われた当時は、現代楽器を使用した比較的編成の大きいオーケストラによる重厚な演奏が主流であった。
フルトヴェングラーやクレンペラー、カラヤン、リヒター、ブリテンなど、このタイプによる名演は枚挙に暇がないほどであり、ブリテンによる演奏は若干その性格が異なるが、バッハという大作曲家を意識したドイツ風の重厚な演奏が行われていたと言っても過言ではあるまい。
ところが、パイヤールによる本演奏はまるで異なるタイプの演奏だ。
パイヤールの演奏は、現代楽器を使用した比較的小編成のオーケストラによる、どちらかと言えば伝統的な演奏様式によるものであるが、醸成された音楽は、前述のような大指揮者による重厚な演奏とは全くその性格を異にしている。
本盤の演奏のどこをとっても、フランス人であるパイヤールならではのフランス風のエスプリ漂う瀟洒な味わいが付加されていると言えるところであり、まさに洒落たセンスの塊のような演奏とも言えるだろう。
ドイツ風の重厚な演奏が主流であった同曲の演奏に新風を吹き込んだセンス満点の演奏とも言えるところであり、あたかも同曲がフランスの宮廷音楽のように聴こえるほどだ。
高貴にして典雅、そして優美にしてなおかつ愉悦性に富んだ本演奏は、同曲のこれまで誰も気が付かなかった魅力を引き出すことに成功したものとして高く評価すべきであり、前述のような大指揮者による名演にも十分に対抗し得るだけの内容を兼ね備えた素晴らしい名演と高く評価したいと考える。
パイヤール室内管弦楽団や、フルートのランパルをはじめとした各奏者のセンス満点の美演も、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。
音質は、1973年のスタジオ録音ではあるが、グリジー=スウィヌ、ノートルダム・デ・ローズ教会の残響を生かした名録音であったこともあり、従来CD盤でも十分に満足できるものであった。
しかしながら、今般、ついにシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤が発売される運びになった。
本シングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤は、従来CD盤とはそもそも次元が異なる極上の高音質であり、音質の鮮明さ、音圧、音場の広さのどれをとっても一級品の仕上がりである。
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2010年12月18日
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《ブランデンブルク協奏曲》をマリナーは3度録音したが、これは、1980年に録音された2度目のもの。
1971年録音の旧盤では、故サーストン・ダートの校訂した版を使用していたが、今回は通常の版によっている。
旧盤ほどの新鮮な解釈はみられないにしても、演奏の洗練度やアンサンブルの緻密さなどには1日の長がある。
弦の軽快な流動感、明確な造形感覚、そして生き生きとした情感が演奏の隅々にまで行き渡っている。
シェリング(vn)、ホリガー(ob)、ランパル(fl)などの名手を迎えたことが演奏を充実させ、雰囲気を豊かに、華やかにしている。
マリナーの表現自体は極めてオーソドックスで、バロック・スタイルを際立たせることなく、スコアをあるがままに音化しようとしており、そこに独特な解釈は殆どみられない。
《管弦楽組曲》は全体に現代的感覚にあふれた若々しい表現で、マリナーが緩急起伏の対比をくっきりとつけながら、それぞれの曲を精巧にまとめている。
ことに第2,3番の序曲や「ガヴォット」は、彼の長所がよく現れていて聴かせる。
いずれもバッハの音楽の精神をしっかりとつかんだ秀演で、ソリストたちも立派。
《ヴァイオリン協奏曲集》は、シェリングのバッハの音楽に対する深い傾倒と研鑽が集約的に示された演奏。
旧録音と解釈上に大きな変化はないが、どのフレーズも一段と身についたものになり、表現に深みが加わっている。
例えば第2番の第1楽章の中間部のアダージョの深々とした感情の表し方に、それが出ている。
第1番もよくまとまった演奏で、両曲ともに第2楽章が傑出している。
マリナーの指揮も柔らかで美しく、オケも控えめではあるが見事な演奏。
《2つのヴァイオリンのための協奏曲》では、アッソンも好演。
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2010年01月01日
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ランパルの同曲異演盤中最高の録音で、ランパルがフルート革命とでもいうべき旋風を巻き起こしていた1960年代に日本で録音した永遠不滅の名演。
ランパルが十八番としていた曲のひとつだけあって、誰にでも躊躇なくおすすめすることのできる名演である。
これらの作品の構成的な美しさを存分に引き出しながら、これほど闊達で華麗に吹きあげることのできる人というのはほかにない。
丸みをおびて、しかも温かい豊麗な音色は太陽の微笑みを思わせるし、屈託のない音楽性もぬける青空のように明るく、清々しい。
それまでのフルート演奏といえば、もっと知的で、こぢんまりとした表現の綾を楽しむものだったが、ランパルはすべての窓を開放し、比較すべきもののないヴィルトゥオジティ、そして輝かしい表現力で、フルート演奏の新時代を切り開いたのである。
第1番を例にとっても、第1楽章に聴く艶やかな音色と華麗なる名人芸、第2楽章の息の長い、それでいて肉付きのよいカンタービレの素晴らしさ、終楽章に聴く嬉々とした音作りの楽しさ、そしてもっともっと聴いていたいと思わせるカデンツァなど、どこをとっても至芸というにふさわしい。
バックのウィーンふうの表現も素敵だ。
録音から45年あまりが過ぎ、ランパルも天に召されたが、音楽ファンに贈られた巨匠からの宝である。
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2008年05月16日
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ランパル(Fl)、スターン(Vn)、アッカルド(Va)、ロストロポーヴィチ(Vc)という豪華な顔合わせの話題盤だった。ランパル4度目の全曲録音。
これほど超豪華メンバーによるモーツァルトの室内楽というのも珍しい。だいたい、名人級が揃うと、おのおのの個性が強く表に出すぎて、室内楽の演奏として失敗することが多いが、ここでは各人がその個性を殺し合うような心配はまったくない。
全体的にニュアンスがきわめて豊かで、同一のメロディーに対しての4人のアーティキュレーションもよく揃っている。
しかもそこには、4人が集まって音楽をするという楽しさもあふれていて、聴いていると至福の楽興の時が訪れる。
ランパルのフルートは相変わらず絢爛たるもので、音色、技巧ともに申し分なく、ところによっていい意味での遊びのゆとりもみせていて、微笑ましさを感じるし、スターンのヴァイオリンもよくうたっている。
どの曲もきわめて流麗だが、そこには起伏感があり、ふし目もある。
全体にしっかりと構成された陰影の彫りの深い名演だ。
その優雅な旋律を聴いていると、なぜかしらリッチな気分になってくるから不思議だ。休日のブレックファーストにお薦めしたい。
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2008年03月02日
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モーツァルトは1778年のパリ旅行で、芸術の都の雰囲気に触発され、多くの傑作を書き残した。「フルートとハープのための協奏曲」もその一つである。
モーツァルトの作品の中でも、これ以上、雅びな音楽は例があるまい。
フルートは日本の尺八に似ている。ハープは琴に似ている。両者の掛けあいには、どこか東洋的な、わび、さびの世界が感じ取れる。
この曲は貴族のサロン音楽として書かれたのだが、モーツァルトは少しも手を抜かずに、エレガントな名作に仕立て上げたのである。
第1楽章は、フルートとハープの音色美を燦然と発揮させ、華美なメロティーに埋まっているが、第2楽章以下は前述のわび、さびをたたえ、わけてもフィナーレの見事さは、何度聴いても魅惑的だ。
特に中間部は愉悦と哀しみが不思議に混ざりあい、その複雑な味はモーツァルトを聴く醍醐味といえよう。
ランパルとラスキーヌの演奏はともにこれらの楽器の第一人者の顔合わせだけあって、その目のつんだ合奏と表情の豊かさは比類のないもので、聴くたびに、新たな魅力が発見できるような名演奏である。
第1楽章のオーケストラの序奏からして、聴き手をぐっとひきつける、柔和な表情とあたたかな音色をもっており、独奏とパイヤール指揮のオーケストラとのからみあいもすばらしく、エレガントな雰囲気をもっている。
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