ニールセン
2022年08月05日
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エサ=ペッカ・サロネンは、現代音楽や、シベリウスやニールセン等の20世紀前半から中期頃に活躍した北欧の作曲家を、1985年頃から積極的に録音してきた指揮者である。
ちょうどサロネンがスウェーデン放送交響楽団首席指揮者に就任した1985年頃から集中的に録音した作品で、「熱くなりすぎず、スマートな画期的な演奏」として非常に高い評価を得ていた盤。
サロネンのニールセンは素晴らしい。
どの曲においてもニールセンの20世紀的感覚と北欧の冷涼な空気を同時に感じさせてくれる。
ニールセンは、シベリウスと並ぶ北欧の2大交響曲作曲家であるにもかかわらず、シベリウスに比べると録音点数があまりにも少ないと言わざるを得ない。
作品の質の高さを考えると、これは実に残念なことだと思う。
それだけに、録音されたものは、指揮者の思い入れもあるのだろうが、いずれもかなりの高水準の演奏ということができる。
全集では、オーレ・シュミットのものが忘れ難いし、ブロムシュテットの2度にわたるオーソドックスな名演、同じフィンランド人のベルグルンドやヤルヴィの全集も魅力的だし、最近ではラハティの現代的な名演も印象的だった。
個別の演奏ならば、「第4」はバルビローリやカラヤン、「第5」はクーベリックやホーレンシュタインの名演を忘れてはならないだろう。
このような中で、若き日のサロネンの全集はどのような特徴を備えているのだろうか。
一言で言えば、ニールセンの交響曲の特色であるエネルギッシュな生命力と(シベリウスのように直接的ではなく、やや遠慮がちに)ほのかに漂ってくる北欧的な抒情をバランス良く兼ね備えたわかりやすい演奏ということが言えると思う。
ニールセンは、シベリウスと同じ1865年生まれのデンマークの作曲家とはいえ、グリーグやシベリウスよりも北欧情緒は稀薄で、むしろショスタコーヴィチなどに近いところもあるので、北欧の空気感などなくてもよいかもしれない。
「クール」で「スマート」で「現代的」と評されるサロネンの個性が見事にはまって、この名演を生んでいるのだろう。
また、各交響曲の出来不出来が少ないのも、サロネンの全集の魅力である。
併録の管弦楽曲も名演揃いだし、特に、リンと組んだニールセンのヴァイオリン協奏曲は、名作でありながら録音点数が交響曲以上に極めて少ないだけに、現時点でも最高の名演と評価したい(シベリウスの協奏曲もなかなかの名演だと思う)。
これだけの演奏の質、ニールセンの主要な管弦楽曲などを網羅していること、そして価格を考慮すれば、現時点で入手できる最高の全集と言っても過言ではあるまい。
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2020年06月12日
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コンドラシン、コンセルトヘボウのライヴ・シリーズの7枚目になるのがショスタコーヴィチの交響曲第6番及びニールセンの交響曲第5番だ。
前者が1968年1月21日、後者が1980年11月20日のライヴ録音なので客席からの雑音が若干混入しているにしても、音質が鮮明なステレオ録音であることが幸いだ。
コンドラシンはオランダ亡命以降、本人が望まなかったにも拘らず、西側でも引く手あまたのかなりハードスケジュールでの演奏活動が開始された。
彼の最後のコンサートもコンセルトヘボウで行われたライヴだが、残念ながら1981年の急死によって、その後の企画は立ち消えになってしまった。
亡命後はリムスキー=コルサコフの『シェエラザード』の他にアルゲリッチなどと協演した協奏曲以外にはセッション録音には恵まれなかった。
それ故この8枚のライヴ集は全盛期のコンドラシンの西側での記録としても貴重な音源に違いない。
このディスクに収録されたショスタコーヴィチのライヴがあった1968年と言えば、コンドラシンが既にモスクワ・フィルとショスタコーヴィチ交響曲全集を完成すべく録音を進めていた時期の客演だ。
当然ながら彼が生涯で最も力を注ぎこんだレパートリーのひとつだ。
モスクワ・フィルとの演奏には遊びを許さない厳格な印象がある。
それに対してここでは第1楽章に聴かれる対位法の神秘的な表現や、終楽章でのコンセルトヘボウのアンサンブルの巧みさと落ち着いた音色の美しさを活かした、より柔軟な姿勢が特長だろう。
一方ニールセンでは忍び寄る戦争への漠然とした予感と、真夜中の大都会が放射状のサーチライトで照らし出されるような映像的な戦慄が感じられる。
またスネアドラムのアドリブ演奏で軍靴の響きをイメージさせる演奏もスペクタクルだが、コンドラシンの統率力はこうした新時代の交響曲の表現では俄然冴えている。
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2019年08月03日
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フルートの達人、ジェームズ・ゴールウェイは、ジャンルにこだわらずに演奏する真のエンタテイナーで、“黄金のフルートをもつ男”の通称で知られる。
カラヤン率いる1970年代のベルリン・フィルには名だたるスター・プレイヤーがひしめいていた。
当時はヴァイオリンのシュヴァルベ、シュピーラー、ブランディス、チェロのボルヴィツキー、フィンケ、フルートのゴールウェイ、クラリネットのライスター、オーボエのコッホ、ファゴットのピースク、 ホルンのザイフェルト、トランペットのグロート、そしてティンパニのフォーグラーなど超一級プレイヤーがズラリと勢揃いしていた。
彼らがまさにオーケストラの顔であり、カラヤンと共に黄金期のベルリン・フィルのサウンドを創っていたと言っても過言ではないだろう。
その代表的な1人がゴールウェイで、カラヤンも惚れ込んだ彼のサウンドは、輝かしく美しく朗々と鳴り渡るものだ。
その桁外れの美音は、同時期のベルリン・フィルのフルート奏者、ツェラーやブラウもゴールウェイの後塵を拝していたと言わざるを得ない。
彼が楽団から離れた直後の1976年からキャリアを進展させる99年までの録音の中からフルートと管弦楽の為の音楽ばかりを12枚のCDにまとめたのがこのセット。
ソニー・クラシカル・マスターズの初回限定生産になるが、オーケストラ出身の強みを生かしてか協奏曲での演奏も実に巧みだ。
彼の演奏の特徴は、幅広いレパートリーを優れたテクニックとビロードの音色とパワフルな音量に託して大らかで温かに表現するところにある。
またモイーズやランパルに師事しただけあって洗練された粋なセンスとカンタービレの美しさも持ち合わせている。
このセットではバロック、古典は勿論だが、最後の2枚に収録されたロドリーゴ、アーノルド、イベール、ニールセン、メイヤーと続く現代物で聴かせる機知に溢れる演奏と超絶技巧は圧巻だ。
完全節約仕様の為、ライナー・ノーツは省略されて曲目のみが紙ジャケットとボックスの裏に印刷されているが、コスト・パフォーマンスは極めて高く、曲順はクロノロジカルな編集になる。
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2015年05月23日
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カラヤンの長く、広いレコーディング・レパートリーにおいて、生涯ただ1度だけ取り上げたニールセンの作品、それがこの交響曲第4番《不滅》である。
しかし、北欧の音楽に無縁というよりは、シベリウスやグリーグに極めて優れた演奏を聴かせていたことを思えば、カラヤンがニールセンをとりあげたことに何の不思議はない。
むしろ、シベリウスやグリーグに比べると知名度が必ずしも高くないニールセンを1981年にとりあげて録音していたカラヤンの慧眼に感服させられる。
リチャード・オズボーン著の伝記によると、カラヤンがこの曲を録音に選んだのは「第一次世界大戦とその恐るべき遺産に関連していたため」だったという。
また、作曲家自身の発言では「音楽のみが完全に表現しうるもの━━生への根源的な意志」がこの曲のテーマであり、カラヤンがそのテーマに深く共感したのだそうだ。
演奏は、例によって流麗にして豪華、深く広大な息づかいを感じさせ、それでいて力感も不足しておらず、スケールも大きい。
カラヤンの耽美主義的な表現は、総じて遅めのテンポで扱った根本的なアプローチのありかたに強く反映している。
冒頭の対照的な主題でカラヤンが特に意識的にコントラストを与えるようなアクセントづけを行っているところにも明白であるが、その後の進行の曲折のありようをカラヤンほど微細な処置というか、細部拡大主義というか、精密に扱った指揮者を知らない。
ニールセンの6曲の中で特にレコードの数が多いのが第4番の《不滅》であるが、多くの指揮者がニールセン的変化を直線的に扱っているのに対して、カラヤンはエモーションの内面的なものをかつてどの指揮者からも聴かれなかったほど透かし彫りのように浮き上がらせる。
そのいちばん目立った例は、アダージョの静寂たる佇まいの中に込められた内的情熱の沈潜である。
カラヤンのピアニッシモのコントロールの絶妙さは改めて贅言を要するまでもないところだが、《不滅》という暗示的な標題が生命と同じような音楽の永遠性の息吹きを伝えることをモットーに打ち出したニールセンの意図は、カラヤンによってこの上もなく見事に実現されているのである。
ベルリン・フィルの弦がまさに、虹を描くように次々と鮮やかな音色を聴かせ、カラヤンが壮大でダイナミックにまとめている。
素朴さ、土臭さに欠けるという指摘もされたそうだが、カラヤンにそうした要素を求めるのは文字通り「無い物ねだり」であろう。
デンマークでは「日曜日の晴れ着を着た農夫」と評され、日本でも、当時のレコード芸術では、小石氏の推薦評価は貰ったものの、もう1人の評者である大木氏からは「ベルリン・フィルの大運動場」と酷評された演奏である。
しかし、ニールセンはデンマークのローカルな作曲家ではない。
それどころか、シベリウスと並ぶ20世紀の大交響曲作曲家であり、カラヤンは、圧倒的な統率力でベルリン・フィルの技量を最大限に発揮させて、ニールセンの傑作交響曲を等身大に演奏したのに過ぎない。
録音当時のカラヤンは、相当に体力が衰えていたというが、冒頭から、そうとは到底思えないような生命力に満ち溢れた演奏を繰り広げており、筆者はこの演奏を聴いて、ニールセンの音楽の可能性を感じ取ることができた。
第2部の北欧的抒情も実に美しく、第3部の弦楽合奏の重量感もベルリン・フィルならではのもので、第4部の終結部のティンパ二の連打の圧倒的な大迫力。
前述のように、ニールセンを北欧のローカルな作曲家と看做す者からは素朴さを欠くとの批判も予測されるが、筆者としては、ニールセンを国際的な大交響曲作曲家としての認知に導くことに貢献した大名演であると評価したい。
音質はもともと抜群に優れていたが、SHM−CD化により更に目覚ましく向上している。
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2014年12月19日
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本盤は、ラトルとベルリン・フィルの一流奏者、そしてベルリン・フィルと因縁のあるザビーネ・マイヤーが成し遂げた傑作であると言えるだろう。
ニールセンは、グリーグやシベリウスなどと並んで北欧を代表する大作曲家の1人であるが、グリーグやシベリウスなどと比較すると録音点数や人気度において、かなり遅れをとっている。
近年では、交響曲全集の録音点数が急速に増えつつあるのは好ましい傾向にあるが、それでも、本盤に収められたフルート協奏曲やクラリネット協奏曲、そして管楽五重奏曲の録音など、国内盤はおろか、輸入盤さえ殆ど存在しないという嘆かわしい状況にあると言えるところだ。
このような中で、ラトル&ベルリン・フィル、そしてその超一流の首席奏者、ザビーネ・マイヤーが集結した本盤の演奏は、おそらくはこれら3曲の演奏史上でも最も豪華な布陣による演奏であり、それによって生み出された演奏も、おそらくはそれぞれの楽曲の演奏史上最高の名演に仕上がっていると高く評価したい。
このような超豪華な布陣による演奏は、ジャンルは全く異なるが、カラヤンがロストロポーヴィチ、オイストラフ、リヒテルとともにベートーヴェンの三重協奏曲をスタジオ録音した時と印象が重なると言えるところであり、ラトルが現代最高の指揮者であるということを名実ともに知らしめた演奏ということもできるであろう。
フルート協奏曲にしても、クラリネット協奏曲にしても、ニールセンならではの華麗なオーケストレーションが施された交響曲第1番〜第5番までの諸曲とは異なり、むしろ、シンプルシンフォニーとの愛称が付けられた交響曲第6番の世界にも繋がる慎ましやかな作品であるが、ラトルは、ベルリン・フィルを巧みに統率して、清澄さの中にも実にコクのある音楽の醸成に成功しているのが素晴らしい。
エマニュエル・パユのフルート演奏は、もはや表現する言葉が追い付かないほどの美しさを誇っており、これほどの名演奏を聴くと、他のフルート奏者が同曲を演奏することさえ断念せざるを得ないのではないかとさえ思われるほどである。
ザビーネ・マイヤーのクラリネットソロも、女流奏者でありながら線の細さがなく、骨太の音楽が構築されているのが素晴らしい。
カラヤン時代の末期には、失意のうちにベルリン・フィルと物別れしたマイヤーであったが、本演奏を持って名誉の帰還(実際に帰還したわけではない)を果たしたと言っても過言ではあるまい。
管楽五重奏曲に至っては、凄いの一言。
現代を代表する超一流奏者による演奏が悪いはずがなく、まさに非の打ちどころのない圧倒的な名演に仕上がっていると高く評価したい。
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2014年11月19日
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巨匠コリン・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団の演奏によるニールセン・シリーズもいよいよ大詰め。
交響曲第2番と第3番は、前作第1番より2ヶ月後の2011年12月に、いずれも本拠バービカンホールで集中的に行われたコンサートの模様をライヴ収録したものである。
『四つの気質』というタイトルをもつ第2交響曲は、ニールセンが田舎を訪れた際にパブで偶然目にした、人間の気質をテーマとした水彩戯画に霊感を得て生み出されたもので、4つの楽章各々の発想記号に、怒りっぽい「胆汁質」、知的で冷静な「粘液質」、沈んでメランコリックな「憂鬱質」、陽気で快活な「多血質」という性格を暗示する形容詞が与えられ、実際の音楽もこれに沿う形で展開するところがユニークな作品。
いっぽう、第1楽章の発想記号(アレグロ・エスパンシヴォ)に由来する『ひろがりの交響曲』というタイトルで呼ばれる第3交響曲は、第2楽章(アンダンテ・パストラーレ)の曲想から「ニールセンの田園交響曲」ともいわれ、楽章中盤以降に舞台裏からバリトンとソプラノの独唱が相次いでヴォカリーズで現れるところに最大の特徴があり、北欧風の牧歌的な味わいで発表当時から人気の高かった曲でもある。
2012年5月25日、デイヴィスはデンマーク王室より、2011年にロンドン交響楽団と取り組んだニールセンの交響曲録音の功績を認められ、デンマーク大使を通じて由緒あるダネブロー・コマンダー勲章(Commander of the Order of the Dannebrog)を叙勲された。
その評価の正当性はこれまでのシリーズのすぐれた演奏内容からも明らかだが、2012年9月に85歳を迎えたデイヴィスの音楽はここでも、これがニールセンの交響曲に初めて本格的に挑んだ指揮者のものとは到底信じられないほどの高みに聳えて圧倒的な佇まい。
前2作同様に、心酔する巨匠と音楽を奏でる歓びを一丸となって表現するロンドン交響楽団の演奏は迫真そのもので、シリーズを締め括るにふさわしいみごとな内容となっている。
そして、本盤で素晴らしいのはマルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音である。
音質の鮮明さ、臨場感、音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第だ。
いずれにしても、デイヴィスによる素晴らしい名演をSACDによる極上の高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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デイヴィス&ロンドン交響楽団によるニールセンの交響曲チクルスの待望の第2弾の登場だ。
前作の第4番及び第5番、とりわけ第5番が圧倒的な超名演であっただけに、大いに期待して本盤を聴いたのであるが、その期待をいささかも裏切ることがない圧倒的な名演に仕上がっていると高く評価したい。
本盤に収められた交響曲は、初期の第1番とニールセンの最後の交響曲である第6番という、対照的な楽曲どうしの組み合わせである。
第1番といっても、決して習作ではなく、20代半ばで作曲された完成度の高い作品である。
さすがに、第3番〜第5番のいわゆる三大交響曲に比肩するとは言い難いが、ニールセンならではの独特の華麗なオーケストレーションと、北欧風の情感の豊かさも盛り込まれた魅力的な作品であると言えるところだ。
デイヴィスは、そうした同曲の特色を十分に生かすとともに、ライヴ録音ならではの畳み掛けていくような気迫や強靭な生命力が漲った見事な名演奏を繰り広げている。
とりわけブラスセクションの強靭な迫力は、とても80歳の老巨匠によるとは思えないほどの凄まじさであり、デイヴィスが満を持して臨んだニールセンの交響曲チクルスにかける本気度を窺い知ることが可能であると言っても過言ではあるまい。
他方、第6番は、シンプルシンフォニーとの副題が示すように、最高傑作の第5番とは一転して簡潔な書法で書かれた名作である。
トゥッティは殆ど存在せず、室内楽的な静けさが全体を支配しているとともに、打楽器セクションの効果的な扱いが特色と言えるが、それだけに指揮者にとっても、演奏全体を纏めるのに難渋することを強いられる作品とも言えるだろう。
デイヴィスは、そうしたニールセンの最晩年の枯淡の境地さえ感じさせる同曲の魅力を十二分に描出するとともに、巧みにメリハリを施すことによって、聴かせどころのツボを心得たいい意味で明晰な演奏に仕立て上げた点を評価したい。
デイヴィスによるニールセンの交響曲チクルスは、残すところ第2番及び第3番のみとなったが、これまでの演奏はいずれも名演であり、第3弾に大きな期待を寄せる聴き手は筆者だけではあるまい。
ロンドン交響楽団も、老匠ニールセンの下、渾身の名演奏を展開しているのを評価したい。
そして、本盤で素晴らしいのはマルチチャンネル付きのSACDによる極上の高音質録音である。
音質の鮮明さ、臨場感、音圧のいずれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第だ。
いずれにしても、デイヴィスによる素晴らしい名演をSACDによる極上の高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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2014年10月21日
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素晴らしい名演だ。
デイヴィスは、シベリウスの交響曲全集を3度も完成させているのに、ニールセンの交響曲の録音はこれまでしてこなかった。
その意味では、満を持しての挑戦ということになるのであろうが、長年の渇きを癒すのに十分過ぎるくらいの超名演に仕上がっている。
第4番は、物凄い快速のテンポだ。
同曲には、カラヤンによる速めのテンポによる名演があるが、あのカラヤンでさえ全曲に約37分を要しているのだから、この演奏の約31分というのが尋常ならざる速さということがわかろうというものである。
おそらくは、史上最速の第4番ということになるのではないか。
とても、老匠の指揮とは思えないような生命力に満ち溢れており、この交響曲の副題でもある「不滅」の名に恥じることのない演奏ということができる。
それでいて、第3部の美しさも出色のものがあり、必ずしも勢いに任せた一本調子の演奏には陥っていない。
第5番は、間違いなく、同曲演奏史上最高の名演と言える。
筆者は、このニールセンの最高傑作を初めて聴いたのは、今から約15年前になるが、ようやく理想の名演に辿り着いたことに深い感慨を覚える。
テンポは、第4番とは一転して、ゆったりとした堂々たるものだ。
それでいて、同じく超スローテンポのクーベリックの演奏のようなおどろおどろしさはいささかもなく、常に、こうしたゆったりめのテンポ設定に必然性が感じられるのが良い。
冒頭の高弦によるトレモロからして、他の演奏には感じられないような内容の濃さを感じさせる。
その後の緩急自在のテンポ設定、打楽器の巧みな鳴らし方、ダイナミックレンジの効果的な活用など、どれをとっても、これ以上は求め得ないような至高・至純のレベルに仕上がっており、第5番が、ニールセンの最高傑作であることを聴き手に伝えるのに十分な超名演に仕上がっている。
録音も素晴らしい。
マルチチャンネル付きのSACDは、ニールセンの打楽器や金管楽器、木管楽器を巧みに駆使したオーケストレーションの再現には最適であり、各楽器の位置関係が明瞭にわかるような鮮明な解像度には、大変驚かされた。
まさに、演奏、録音ともに超優秀な至高の名CDと高く評価したい。
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2014年10月20日
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ベストセラーのシベリウスやベートーヴェンの交響曲と並んでヴァンスカの名を高めたニールセンの交響曲が全集となり、さらに新録音の管弦楽曲3篇も収められた嬉しいアルバムとして登場。
かつて交響曲のみがCD3枚に渡ってバラで発売されていたものをボックス化したものであるが、交響曲を番号順に並べかえるとともに、新録音の主要な管弦楽曲を加えるなど、付加価値の高い全集と言える。
シベリウスの交響曲や管弦楽曲で素晴らしい名演を聴かせてくれているヴァンスカであるが、本盤のニールセンの交響曲や管弦楽曲でも見事な名演を成し遂げていると高く評価したい。
ニールセンの交響曲全集は、同時代の北欧のシンフォニストであるシベリウスの交響曲全集と比較するとあまりにも少ないが、作品の質の高さに鑑みると、不当に過小評価されていると言えるのではなかろうか。
そのような状況の中で、ヴァンスカによる素晴らしい名演による全集の登場は大いに歓迎すべきことである。
いずれもヴァンスカならではのボルテージの高さで、さらにニールセンの代表作「ヘリオス」まで楽しめる。
ヴァンスカのアプローチは、生命力溢れる力強さが基本であるが、これは、ニールセンの華麗なオーケストレーションの描出には相応しいもの。
どの交響曲、そして管弦楽曲においても、畳み掛けていくような気迫と力感が漲っている。
他方、各交響曲の緩徐楽章(「第4」や「第5」では、緩徐部と言った方が適切と言えるかもしれない)における情感の豊かさは、あたかも北欧の白夜を彷彿とさせるような優美さに満ち溢れており、勢い一辺倒の浅薄な演奏にはいささかも陥っていない。
まさに、硬軟バランスのとれた名演と言うことができるだろう。
また、本全集には、いわゆる超名演と言うものはないが、どの楽曲も名演の名に相応しい水準の演奏で構成されており、不出来な演奏がないというのも、本全集の価値を高める要素となっている点も忘れてなならない。
BBCスコティッシュ交響楽団やラハティ交響楽団も、ヴァンスカの指揮の下、最高のパフォーマンスを示している。
録音も優秀であり文句なし。
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2009年12月30日
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ブロムシュテットの、よりモダンで力強く、多彩な表現をもった個性的指揮者としての主張が明確に表れている。
それぞれ異なった作風と内容を持つニールセンの6曲の交響曲で、ブロムシュテットはそのひとつひとつの特質を鮮明に表す演奏を行っており、ニールセンの音楽的道程を深く印象づけている。
表面的な音の効果にとらわれず、その内面にある孤高の本質をきびしく見据えているブロムシュテット以上に、ニールセンの交響曲を演奏できる指揮者はいないであろう。
ブロムシュテットは作品の本質をよく見きわめ、このニールセンの第1番と第6番の2つの作品の間に横たわる30年の歳月を実感させている。
第1番は内部に秘められた情熱を強い運動性で表出しており、すべての表情をよく手中に収め、デュナーミクも効果的だ。
第6番も楽想をきめこまかく表出しながらも、ディティールだけにとらわれず全体の見通しがよく、各変奏はそれぞれ興趣に満ちた表現で、この曲の真髄を知らしめる優れた演奏である。
第2番は強い確信をもった演奏で、強靭な意志力が曲全体にみなぎり、オケも重量感のある響きで指揮者に応えている。
第3番は動感豊かな、荒々しいといえるばかりの演奏だが、全4楽章が緊密・堅実に表現されているのは、やはりこの人の見識といえよう。2人の独唱者も好演。
第4番では終末的クライマックス形成のティンパニ、第5番では全編で重要な役割を果たしている小太鼓が、ニールセンのモダニズムを象徴しているが、管・打楽器に卓越した奏者を擁するアメリカのオケの起用が図に当たって、面白く楽しめる演奏が生まれた。
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2009年03月26日
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機能性、整合性、詩的情感、迫力、ふんだんに見せ場のある交響曲ゆえ、どのCDも高い技術力に支えられた演奏で魅力的だったが、私は特に心に響くものを選んだ。
バルビローリがニールセンを録音したのは第4番だけだったが、さすが北欧を愛したサー・ジョンの演奏には血がかよっており、"うた"があり、捨て難い。
北欧音楽を得意としたバルビローリは手兵のハレ管を率いてデンマークに演奏旅行を行なった際にも「不滅」を演奏し、ニールセンを国民的大作曲家と仰ぐデンマーク楽界から絶賛を浴びた。
バルビローリ/ハレ管は自然の生命同様、人間の生命に具わる不抜の力、不屈の精神を表現したこの交響曲にふさわしく、他には見られない暖かな音でおおらかに伸びやかに歌い、しかも力強く烈しく燃える生命の躍動感に満ちている。
ニールセンは神秘的でなく人間的である。
音楽の不滅と人間性の不滅を熱っぽく歌いあげるニールセンの魂が翼を得て飛翔するかと思われるような入魂の演奏だ。
バルビローリ自身がシベリウスの第3番を「過渡期の交響曲」と呼んでいたが、彼が実践したボーイングのメソッドの修正が効果的におこなわれ、新しいサウンドが生み出されている。
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2008年05月08日
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カラヤンが残した唯一のニールセン。
第4番の構成美を一大伽藍のように仕上げた名演である。
カラヤンはベルリン・フィルを駆使して、この交響曲のシンフォニックな魅力を豊かなスケール感ともって描き出している。
作品を手中に収めた演奏で、ディティールのすみずみまで明晰をきわめている。
しかもカラヤンはニールセンの構築性に光を当て、強いコントラストと鋭いアクセントの明暗で曲の輪郭を鮮明に浮かび上がらせている。
加えてベルリン・フィルの技術は舌を巻くばかりにすごい。このような明快さ、感情の深さ、彫りの深い立体感はかつてどの演奏からも聴けなかった。
オーケストラの格段の巧さが光るし、響きも重厚で輝かしく、第3楽章など唖然とするような美しさに魅せられる。
ニールセンの交響曲を聴くというよりは、ベルリン・フィルのオーケストラとしての桁外れの表現力を味わうためにあるような録音だが、この作品からこれほど悲劇的で壮大なスケールを引き出した演奏は例を見ないだけに聴き応えはある。
カラヤンのおびただしい録音の中でも屈指の傑作。
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