ブレイン
2020年07月16日
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モーツァルトの友人で、ホルン協奏曲を書かせたロイドゲープのように、歴史的に重要なホルン奏者は決して数多くはないが、イギリスのデニス・ブレイン(1921-57)ほど愛され、また事実、圧倒的人気を博したホルン奏者は他にいないであろう。
ロイヤル・フィル、フィルハーモニア管弦楽団の首席奏者を歴任したが、ソリストとしても大活躍し、その人気は著名な指揮者すら羨ましがらせるほどであった。
2008年にリリースされた4枚組EMIイコン・シリーズのボックス・セットで、97年に出された13枚組の全集には及ばないが、ホルンの貴公子デニス・ブレインの奏法のエッセンスが、ソロのみならず室内楽のレパートリーにおいても充分に堪能できる。
しかも録音に関してはモノラルながら最新のデジタル・リマスタリングによって旧盤を凌ぐ鮮明な音質が蘇っている。
モーツァルトの2曲のホルン協奏曲では、1940年代の旧録音と53年のカラヤンとの協演を聴き比べる事ができる。
勿論カラヤンという卓越した指揮者を迎えたことによる結果でもあるだろうが、新録音の方が遥かに緻密で洗練された音楽性が感じられる。
それはブレインが単に天才の名に甘んじていた奏者ではなく、努力の人だったことを窺わせていて興味深い。
彼の演奏の特色は、一瞬の隙も残さない極めて精緻な表現でありながら、それでいて明るく屈託の無い開放的な音色にある。
サヴァリッシュが几帳面に曲の性格を捉えたリヒャルト・シュトラウスの2曲の協奏曲やジェラルド・ムーアのピアノ伴奏による、シューマンの超難曲『アダージョとアレグロ』とデュカスの機知に富んだ『ヴィラネル』、そしてヒンデミット自らの指揮による『ホルン協奏曲』などは現在でも最高水準の演奏として挙げることができるだろう。
ホルンの演奏技術はブレイン以降格段に進化しているはずだが、ブレインの音楽性を凌駕する名手はいないようである。
余談になるが、ブレインはカラヤンのお気に入りでもあり、カラヤンは度々ベルリン・フィルへのヘッド・ハンティングを画策したが、イギリスを離れることはなかった。
カラヤンとはスポーツカーの趣味が一致し、2人ともスピード狂だったので、愛車についての話は尽きることがなかったという。
だがカラヤンはその後次第に飛行機へと関心を移し、それを知ったブレインは「それでも飛行場へは車で行くしかないだろう」と牽制したというから面白い。
だが運命のいたずらか、ブレインは帰宅途中に樹木に激突、36歳の短い生涯を閉じている。
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2017年12月13日
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1997年にEMIからリリースされた13枚の『デニス・ブレインの芸術』は既に廃盤になって久しいが、今回のヴェニアス盤は前者を上回る曲目を収録して、36歳で夭折した彼の多彩なプロフィールを紹介している。
CD18のトラック15及び16はブレインのオルガン演奏だが、どちらも純粋なソロというわけではなくアーノルドの『大大序曲』は冗談音楽フェスティバル『ホフナング音楽祭』での演目としてオーケストラや掃除機に加わって、勿体ぶったパイプ・オルガンがごく僅かに登場する愉快なライヴである。
既に良く知られていたCD13の『水撒きホース協奏曲』と並んでブレインの他の演奏からは想像できない茶目っ気振りが示されている。
一方マスカーニの間奏曲はオペラのスコア通りバックにオルガンを使ったカラヤン、フィルハーモニアとの至ってシリアスなセッションだ。
ただし全収録曲がブレインの演奏ではなく、彼の父でもあり師でもあったオーブリー・ブレイン及び兄弟弟子アラン・シヴィルの演奏も数曲含まれている。
これは編集者のエラーではなく企画に則った、つまりブレインが最も影響を受けた父親と、もう一人の弟子シヴィルの演奏を比較するための収録と思われる。
確かに彼ら3人のホルニストには共通する奏法の特徴がある。
ブレインのソロ、協奏曲や彼が参加したアンサンブルを片っ端から掻き集めた編集だが、データの表記や演奏者名に若干の混乱をきたしている。
例えばCD19のブランデンブルク協奏曲第1番とCD20のモーツァルトのホルン協奏曲第3番は父オーブリーの演奏であることは間違いないだろう。
しかしこのセットも限定生産なのでデータを訂正した再販の可能性は期待できない。
他のヴェニアスのバジェット・ボックス同様ライナー・ノーツはなく、リマスタリングの表示もないが、音質は時代相応といったところでモノラル時代が全盛期だったブレインの演奏集としては多くを望めないし、これだけのレパートリーが一同に会したことは評価したい。
ブレインの奏法の特徴のひとつはヴィブラートをつけない直線的なロングトーンにある。
言ってみれば管楽器の最も基本的なテクニックが演奏にも徹底されているのだが、音程が比類ないほど正確で安定しているために、シンプルな表現の中に冒し難い品位が感じられ、また音楽が決して脆弱にならない。
更にペダルトーンから高音に至るまでの滑らかな音色と、全く難易度を感じさせない余裕からは、まさにホルンの貴公子と呼ぶに相応しい高貴さが醸し出されている。
おそらく彼以上に飾り気のない純粋無垢な音楽性でホルンを聴かせてくれる奏者は現在見出せないのではないだろうか。
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2015年03月01日
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モーツァルトと並ぶ名作と言われているR.シュトラウスのホルン協奏曲集などを収録した、稀代のホルン奏者デニス・ブレインの不世出の才能を伝える不滅の名盤。
今でも伝説的なホルン奏者として絶大な人気を得ているデニス・ブレインのホルン奏者としては冥利に尽きる演目を収めたアルバムである。
名作だが難曲で知られる2曲のR.シュトラウス、そして作曲者との共演となったヒンデミット、{伝説}を裏づける美演だ。
デニス・ブレインのホルンは実に素晴らしい。
朗々として雄大なスケール感のある音色、そして低音の重厚さ、弱音の繊細さ、ホルンという楽器が紡ぎだす音色をすべて兼ね備えている。
あわせて、桁はずれのテクニック。
まさにデニス・ブレインひとりでホルンをソロ楽器として認知させたと言っても良く、デニス・ブレインこそは、史上最高の不世出のホルン奏者と言えるだろう。
モーツァルトもバッハも、ホルンの楽器の特性を考えたうえで作曲をしているが、ということはつまり、この楽器を演奏上の限界あるものとしているという事。
デニス・ブレインのホルンの技巧の真の姿を聴く為には、このディスクに収められたホルンの難曲を聞く必要があるだろう。
残念ながら現代の水準からいうと、驚くほどの名手とは聴こえないかもしれないが、その代わりに、最近のホルニストに無い高雅な品格を見出すことに喜びと深い満足感を得ることができる。
デニス・ブレインの演奏の特色は、一瞬の隙も残さない極めて精緻な表現でありながら、それでいて明るく屈託の無い開放的な音色にある。
R.シュトラウスのホルン協奏曲は、モーツァルトのそれと並んでホルン協奏曲史上の名作だと思うが、それにしてはCDに恵まれていない。
その意味でも、このデニス・ブレイン盤は、R.シュトラウスのホルン協奏曲史上最高の名演と評価すべきであると思う。
高音の美しさ、見事なレガート奏法、スタッカートの小気味よさといった各種表現に冴えをみせるブレインが、輝かしく意気軒昂な第1番、しっとりとした巧みな語り口をみせる第2番で自身の実力を遺憾なく発揮している。
若き日のサヴァリッシュのサポートも几帳面に曲の性格を捉えたなかなかのものだ。
同様にヒンデミットの作品も素晴らしい出来映えだ。
ヒンデミットのホルン協奏曲は、デニス・ブレインのために作曲された曲であるが、逆に言えば、デニス・ブレインにしか表現できない要素を持った難曲ということができるだろう。
表情の起伏の激しいいかにも現代曲と言った趣きであるが、デニス・ブレインの超絶的な技巧と表現力が相俟って、同曲がヒンデミットの傑作であることがよくわかる。
デニス・ブレインにしては珍しいステレオ録音というのも嬉しい限りだ。
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2014年10月12日
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本盤に収められたデニス・ブレインとカラヤン&フィルハーモニア管弦楽団によるモーツァルトのホルン協奏曲は、同曲演奏史上最高の超名演として、現在においてもその地位にいささかの揺らぎがない歴史的な演奏と言えるだろう。
カラヤンは、後年、ベルリン・フィルの芸術監督に就任後、首席奏者であったゲルト・ザイフェルトとともに同曲をスタジオ録音(1968年)しており、それも素晴らしい名演ではあるが、本盤の演奏の持つ後述のような独特の魅力には及んでいないのではないかと考えられるところだ。
また、同曲については、ホルン協奏曲の絶対数が少ないということもあって、これまで名うての名ホルン奏者がこぞって録音を行ってきている。
前述のゲルト・ザイフェルトだけでなく、シヴィル、ペーター・ダム、ヘーグナー、タックウェル、クレヴェンジャー、ティルシャルなど、いずれ劣らぬ個性的な名演を披露してはいるが、デニス・ブレインによる独特の魅力的な演奏には敵わないのではないかと考えられる。
デニス・ブレインのホルン演奏は、卓越したテクニックもさることながら、その音色の朗々たる美しさには際立ったものがあり、どこをとっても技巧臭がせず、コクのある豊かな情感が込められているのが素晴らしい。
旋律の歌い方もごく自然であり、演奏全体のスケール雄大で、線の細さなどいささかも感じられない骨太の音楽が構築されていると言っても過言ではあるまい。
この当時、デニス・ブレインは、若干32歳の若さではあったが、若さを感じさせない成熟した名演奏を展開していると言えるところであり、まさに天才の所業と言っても過言ではあるまい。
かかるデニス・ブレインの圧倒的なホルン演奏を下支えしているのが、若き日のカラヤンとフィルハーモニア管弦楽団による素晴らしい名演奏である。
本演奏でのカラヤンによるアプローチは、後年の演奏のようにレガートを駆使した流麗かつ重厚なものではなく、むしろ颯爽とした新鮮な息吹を感じさせる強靭な生命力が全体に漲っており、デニス・ブレインのホルン演奏を引き立てつつ、気迫に満ち溢れた爽快な名演奏を展開している点を高く評価したい。
音質は、モノラル録音ではあるが、これだけの歴史的な名演だけに、これまで疑似ステレオ化やリマスタリング盤、HQCD盤、LPからの板おこし盤など、数々の高音質化への取組が行われてきたところであり、それぞれに良好な音質に仕上がっている。
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2014年09月20日
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2011年よりSACDの発売を開始したEMIであるが、これまではフルトヴェングラー、アルゲリッチ、ラトルによる演奏に限られていたところであった。
このような中で、今般、その他の大指揮者による数々の名演のSACD化が行われることになったのは何という素晴らしいことであろうか。
クレンペラーやセル、カラヤンなどによる名演のSACD化は、昨年より急速に息を吹き返しつつあるSACDの更なる広範な普及に繋がるものとして、大いに歓迎したいと考えるものである。
本盤に収められたデニス・ブレインとカラヤン&フィルハーモニア管弦楽団によるモーツァルトのホルン協奏曲は、同曲演奏史上最高の超名演として、現在においてもその地位にいささかの揺らぎがない歴史的な演奏と言えるだろう。
カラヤンは、後年、ベルリン・フィルの芸術監督に就任後、首席奏者であったゲルト・ザイフェルトとともに同曲をスタジオ録音(1968年)しており、それも素晴らしい名演ではあるが、本盤の演奏の持つ後述のような独特の魅力には及んでいないのではないかと考えられるところだ。
また、同曲については、ホルン協奏曲の絶対数が少ないということもあって、これまで名うての名ホルン奏者がこぞって録音を行ってきている。
前述のゲルト・ザイフェルトだけでなく、シヴィル、ペーター・ダム、ヘーグナー、タックウェル、クレヴェンジャー、ティルシャルなど、いずれ劣らぬ個性的な名演を披露してはいるが、デニス・ブレインによる独特の魅力的な演奏には敵わないのではないかと考えられる。
デニス・ブレインのホルン演奏は、卓越したテクニックもさることながら、その音色の朗々たる美しさには際立ったものがあり、どこをとっても技巧臭がせず、コクのある豊かな情感が込められているのが素晴らしいと言える。
旋律の歌い方もごく自然であり、演奏全体のスケール雄大で、線の細さなどいささかも感じられない骨太の音楽が構築されていると言っても過言ではあるまい。
この当時、デニス・ブレインは、若干32歳の若さではあったが、若さを感じさせない成熟した名演奏を展開していると言えるところであり、まさに天才の所業と言っても過言ではあるまい。
かかるデニス・ブレインの圧倒的なホルン演奏を下支えしているのが、若き日のカラヤンとフィルハーモニア管弦楽団による素晴らしい名演奏である。
本演奏でのカラヤンによるアプローチは、後年の演奏のようにレガートを駆使した流麗かつ重厚なものではなく、むしろ颯爽とした新鮮な息吹を感じさせる強靭な生命力が全体に漲っており、デニス・ブレインのホルン演奏を引き立てつつ、気迫に満ち溢れた爽快な名演奏を展開している点を高く評価したい。
音質は、モノラル録音ではあるが、これだけの歴史的な名演だけに、これまで疑似ステレオ化やリマスタリング盤、HQCD盤、LPからの板おこし盤など、数々の高音質化への取組が行われてきたところであり、それぞれに良好な音質に仕上がっていたと言える。
しかしながら、今般、ついに待望のSACD化が行われることによって、見違えるような鮮明な音質に生まれ変わったところだ。
デニス・ブレインの息遣いまでが聴こえる鮮明さは殆ど驚異的であり、弦楽合奏の艶やかな美しさなど、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、デニス・ブレイン、そしてカラヤン&フィルハーモニア管弦楽団による歴史的な名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したいと考える。
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2008年06月25日
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R.シュトラウスは、ミュンヘンの王立歌劇場の名ホルン奏者の息子として生まれた。つまり、彼にとっては、ホルンのまろやかな響きは、物心つく以前から親しいものだったのである。
彼は、2つのホルン協奏曲を作曲しているが、これらは、モーツァルトの書いた4つのホルン協奏曲とともに、この種の作品としては、音楽史上の傑作として、広く親しまれ愛好されている。
ブレインは、1957年に自動車事故で36歳という短い生涯を閉じた。これは、亡くなる1年前の録音で、モノーラルなので音の状態はあまりよくないものの、ブレインの至芸を堪能することのできるディスクである。
演奏は、驚嘆すべき名人芸を駆使したもので、どのようなフレーズでも、淀みのないまろやかな音色で歌わせており、その卓越したテクニックと響きの美しさに圧倒されてしまう。
なんといってもホルンならではのカンタービレの素晴らしさにうっとり聴き入る演奏だ。フレージングがしなやかで、なんともいえぬ気品と香りがあり、詩的な余韻すらたたえている。
しかも演奏全体は抒情のみに流れることなく、表現の密度は濃い。
高音の美しさやレガート奏法の秀逸さ、テクニックの凄さ、音程の良さ、全てが音質の古さを越えて我々の心に迫る。
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2008年05月26日
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1957年に、自動車事故で36歳の若さで亡くなった名ホルン奏者デニス・ブレインの貴重な遺産かつ代表的な名盤として知られるものである。
何回聴いても、これに優るホルンの響きは考えられない。
朗々と鳴り響いて力強く、あるいは柔らかく滑らかで、アタックも明快かつ軽やか。そしてその技巧を駆使した歌のうまさ!技巧に角がないことでもベスト。
彼の脂の乗り切った頃のものだけあって、その名人芸には圧倒されてしまう。
テンポが意外に遅いので、テクニックを誇示するようなところは全くない。
一つだけ注文をつけるとすれば、こくのあるカンタービレはことのほか見事なのだが、第2番のフィナーレなど、もっとリズムを弾ませた方が楽しくなるだろう。
音質はあまりよくないが、この演奏を凌駕するものは、ないといってよいほどだ。
第2のブレインは何人もいるが、凌駕する人はもう一生聴けない気がする。
モーツァルトのホルン協奏曲の全曲録音は、今やかなりの数にのぼっており、いわゆるナチュラル・ホルンを用いたのもその数を増しているし、また、ひとりの奏者が回を重ねてレコーディングしている例も徐々に増えてきている。
それだけ、いろいろな面からこの楽器の演奏における水準や評価が高まってきているということかもしれないが、デニス・ブレインがカラヤン/フィルハーモニアと遺した全集は、彼にとって唯一のものであったばかりでなく、その信じ難いような技巧の完全性と品格の高さによって、一般の人々のホルンへの概念を覆したものとさえいえるし、本質的にこの演奏の右に出るものは、いまだに生まれていないともいえる。
カラヤンの指揮は流麗でスマート、さっそうとしていて素晴らしい。
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