ロドリーゴ

2022年12月06日


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スペイン風の情感に満ち満ちた珠玉の超名演だ。

スペインの盲目の作曲家ロドリーゴは、勇壮華麗なバレエ音楽などで知られるファリャなどとは異なり、情緒豊かなギターのための有名な協奏曲を作曲したことで知られる。

中でも、本盤に収められたアランフェス協奏曲とある貴紳のための幻想曲は、ロドリーゴ、引いてはスペイン、そしてギターのための協奏曲を代表する2大名曲とも評されているところだ。

前世期最高のギタリストの呼び声の高いイエペスは、これら両曲を十八番としていたが、その中でも最も優れた名演は、本盤に収められた1970年代後半に、ナヴァッロと組んでスタジオ録音を行った演奏であると言えるのではないだろうか。

それにしても演奏は実に素晴らしい。

イエペスのギタリストとしての技巧は申し分がない。

どんな難所に差し掛かっても、難なく弾きこなしており、さすがは前世期最高のギタリストだけのことはある。

ただ、イエペスの演奏は単に技巧一辺倒にはいささかも陥っていない。

イエペスは、ロドリーゴならではのスペイン風の若干哀愁に満ち溢れた旋律の数々を心を込め抜いて歌い抜いているところである。

それでいて、いささかもお涙頂戴の陳腐なロマンティシズムに陥っておらず、常に格調の高さを失っていないのが素晴らしい。

このように、イエペスによる本演奏は、いい意味での剛柔のバランスがとれているとも言えるところであり、その意味ではそれぞれの楽曲の演奏の理想像の具現化と言っても過言ではあるまい。

加えて、ガルシア・ナヴァッロ指揮のフィルハーモニア管弦楽団、イギリス室内管弦楽団も、イエペスのギター演奏をしっかりと引き立てるとともに、スペイン風の情緒溢れる見事な演奏を成し遂げていると評価したい。

いずれにしても、アランフェス協奏曲やある貴紳のための幻想曲には、様々なギタリストによって様々な名演が成し遂げられてきているが、本盤の演奏を、それぞれの楽曲の最高の超名演と評価するのにいささかも躊躇するものではない。

音質は、1977年及び1979年の録音ということもあって従来CD盤でも比較的良好な音質であった。

しかしながら、ついに待望のシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD化がなされるに及んで大変驚いた。

音質の鮮明さ、音圧、音場の拡がりのどれをとっても一級品の仕上がりであり、とりわけ、イエペスによるギター演奏が鮮明に再現されるなど、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第だ。

いずれにしても、イエペス、そしてガルシア・ナヴァッロ指揮のフィルハーモニア管弦楽団、イギリス室内管弦楽団による至高の超名演を、現在望みうる最高の高音質であるシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤で味わうことができるのを大いに喜びたい。

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2020年11月28日


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ワーナーのこのシリーズのタイトル、20世紀クラシックスの通りホアキン・ロドリーゴ(1901-1999)は、まさに20世紀の幕開けに誕生し、その終焉に生涯を閉じた。

またギターの名手でもある彼は3歳の時失明したが、音楽への情熱を捨てきれず、勉強に励み、盲目の作曲家として前代未聞の創作活動を成し遂げた人で、ついに現代スペインを代表する作曲家となった。

その彼の作曲した最も有名な曲が、1940年(38歳)の時作曲された、ギターとオーケストラのための『アランフエス協奏曲』である。

アランフェスは、スペインの首都マドリードから南に約50キロほど離れたところにある王家の離宮のことで、その壮麗な建物や、美しい庭園で知られている。

ロドリーゴは、この離宮を訪れた時、栄華を誇っていた当時のスペインを思い浮かべながら、この曲を作曲したのだった。

ギターの特徴を生かしたエキゾチックな旋律と、独特なリズムに、スペイン情緒が溢れている。

ギターとオーケストラの醸し出す哀愁に満ちた流麗な第2楽章はとりわけ有名で、“恋のアランフェス”の題でポピュラー音楽にも編曲され、広く親しまれている。

またこの曲はオーケストラと拮抗するヴィルトゥオーソ・ギターのための協奏曲として、この楽器の新しい可能性を開拓したと言われている。

このダウンロード・ヴァージョンにはCD2枚分に当たる7曲が収められていて、ロドリーゴのさまざまな楽器のための協奏曲を一通り鑑賞することができる。

ソリストとしては比較的馴染みのない名前が並んでいるが、演奏内容はこうした作品に相応しい覇気に満ちた情熱と充実感が感じられ、技術的にも決して二流どまりではないことを付け加えておく。

録音状態は極めて良好だが、幸いアマゾンのページで試聴できるので、購入前に一度聴いてみることをお勧めする。

ロドリーゴの音楽語法の特徴はスペインの民族色が強く、最後まで調性を捨てていないところにあるが、不協和音をぶつけたり、複調性を取り入れたり、あるいは対位法や古い舞曲を巧みに利用するなど、古風なエレメントと新しい技法を混在させて、かえって斬新な曲趣を作り出している。

また管弦楽を分厚く重ねて大音響を作ることは避け、フレッシュなオーケストレーションの中に常に明快なメロディー・ラインを聴かせている。

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2019年08月03日


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フルートの達人、ジェームズ・ゴールウェイは、ジャンルにこだわらずに演奏する真のエンタテイナーで、“黄金のフルートをもつ男”の通称で知られる。

カラヤン率いる1970年代のベルリン・フィルには名だたるスター・プレイヤーがひしめいていた。

当時はヴァイオリンのシュヴァルベ、シュピーラー、ブランディス、チェロのボルヴィツキー、フィンケ、フルートのゴールウェイ、クラリネットのライスター、オーボエのコッホ、ファゴットのピースク、 ホルンのザイフェルト、トランペットのグロート、そしてティンパニのフォーグラーなど超一級プレイヤーがズラリと勢揃いしていた。

彼らがまさにオーケストラの顔であり、カラヤンと共に黄金期のベルリン・フィルのサウンドを創っていたと言っても過言ではないだろう。

その代表的な1人がゴールウェイで、カラヤンも惚れ込んだ彼のサウンドは、輝かしく美しく朗々と鳴り渡るものだ。

その桁外れの美音は、同時期のベルリン・フィルのフルート奏者、ツェラーやブラウもゴールウェイの後塵を拝していたと言わざるを得ない。

彼が楽団から離れた直後の1976年からキャリアを進展させる99年までの録音の中からフルートと管弦楽の為の音楽ばかりを12枚のCDにまとめたのがこのセット。

ソニー・クラシカル・マスターズの初回限定生産になるが、オーケストラ出身の強みを生かしてか協奏曲での演奏も実に巧みだ。

彼の演奏の特徴は、幅広いレパートリーを優れたテクニックとビロードの音色とパワフルな音量に託して大らかで温かに表現するところにある。

またモイーズやランパルに師事しただけあって洗練された粋なセンスとカンタービレの美しさも持ち合わせている。

このセットではバロック、古典は勿論だが、最後の2枚に収録されたロドリーゴ、アーノルド、イベール、ニールセン、メイヤーと続く現代物で聴かせる機知に溢れる演奏と超絶技巧は圧巻だ。

完全節約仕様の為、ライナー・ノーツは省略されて曲目のみが紙ジャケットとボックスの裏に印刷されているが、コスト・パフォーマンスは極めて高く、曲順はクロノロジカルな編集になる。

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2019年07月25日


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クラシック・ギター界の新星、ミロシュ・カラダグリッチが本格的なオーケストラとの合わせものを収めた1枚。

ロドリーゴの『アランフエス協奏曲』及び『ある貴紳のための幻想曲』では、彼の研ぎ澄まされた音楽性とテクニックがヤニク・ネゼ=セガン指揮するロンドン・フィルに支えられて鮮やかに冴え渡っている。

オーケストラからも指揮者のきめ細かな指示による、ロドリーゴの気の利いたオーケストレーションがいたるところで感知される。

この曲のラテン的な熱狂とは一線を画した精緻でクールな表現かも知れないが、それは決して優等生同士の醒めた演奏ではない。

あらゆるバランスが考慮された音楽的に非の打ちどころのない仕上がりになっているのが特徴だ。

聴き手に媚びることのないミロシュの爽快なヴィルトゥオーシティも充分発揮され、如何にもニュー・ジェネレーションのギタリストの登場に相応しい内容を持っている。

その他に管弦楽を伴わないマヌエル・デ・ファリャの『ドビュッシーの墓碑銘への讃歌』、バレエ音楽『三角帽子』より粉屋の踊り「ファッルーカ」、そしてロドリーゴの『祈りと舞踏』の三つの独奏曲が収録されている。

中でも「ファッルーカ」はロンドン王立音楽院時代のミロシュの師であったマイケル・レヴィンによるギター・ソロ用のアレンジで、ミロシュの澄み切った音色がアンダルシアの幻想的な印象を鮮烈に伝える演奏が白眉だ。

ライナー・ノーツの始めのミロシュ自身の言葉「このレコーディングはクラシック・ギターの歴史の流れを変えた作曲家とその作品に対する私的なオマージュ」に示されている。

当CDはホアキン・ロドリーゴとマヌエル・デ・ファリャという革新的な発想と伝統的な民族音楽との止揚を試みたスペインの2人の作曲家の5つの作品で構成されている。

特にロドリーゴはギターに斬新な管弦楽法を交えてソルやタレガによって受け継がれたお家芸のギター・スクールに新局面を切り拓いた人でもあるし。

またデ・ファリャのギターに対するそれまでの娯楽的な大衆楽器というイメージを刷新して、その芸術性に着目した作品は注目に値する。

確かに彼らの存在が将来のギター音楽のあるべき方向を示唆したと言えるだろう。

ライナー・ノーツは26ページほどで、多数のカラー写真を挿入した英、独、仏語による解説付。

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2018年08月17日


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ナルシソ・イエペス(1927-97)がドイツ・グラモフォンに録音した総てのギター協奏曲及びギター・ソロとオーケストラのための作品を5枚のCDに収録したセットで、ライナー・ノーツの後半に初出時のオリジナル・ジャケット写真付の録音データが掲載されているが、当時のLP盤7枚分ほどになる。

イエペスはリュート奏法もマスターしていたようだが、ヴィヴァルディのリュートが加わる協奏曲2曲についてはギター編曲版を演奏している。

尚ロドリーゴの『アランフエス協奏曲』及び『ある貴紳のための幻想曲』の2曲は1969年と77−79年の指揮者、オーケストラの異なる2種類の音源が収められている。

ディスクによってやや録音技術的なレベルが違うが音質は良好。

イエペスは結果的にか、あるいは意図的だったかはいざ知らずアンドレアス・セゴビアのアンチテーゼのように位置付けられている。

ギターを芸術的表現が充分に可能な楽器として、独自の奏法を確立していわゆるクラシック・ギターの演奏水準を飛躍的に高めて世に知らしめたのは確かにセゴビアの功績に違いない。

しかし彼はさまざまな意味において殆んど全ヨーロッパ・ギター界を牛耳るほどの頑固な独裁者的な存在になったことから、後年毀誉褒貶相半ばする大家だった。

セゴビアより30歳以上年下のイエペスが、彼とは全く異なったコンセプトを持って登場することによって、1960年代はギター界にも新風が吹き込まれた時代だった。

つまり感情移入に頼りがちな奏法を抑えて楽器の機能を最大限引き出しながら、作品を一度突き放した形で徹底した客観的な解釈を堅持して、洗練されたテクニックで作品自体に語らせるアプローチは、当時のクラシック楽壇に台頭した共通の傾向だったと思う。

また彼は同時代の作曲家の作品も価値が高いと判断したものは躊躇なく取り上げた。

このセットの後半3枚はロドリーゴを始めとする20世紀の作曲家の作品集になる。

中でもオアーナ及びルイス=ピポの作品は無調で、高度なオーケストレーションに支えられたギターの可能性にイエペスは惜しみない理解と協力を示している。

デ・ブルゴス、ロンドン交響楽団のサポートも白眉だが、イエペスが新時代のギター音楽の旗手としての役割にも果敢に取り組んでいたことの証左でもある。

彼は楽器の改造にも積極的に関わった。

ここで使用されているのは彼自身がスペインのギター製作者ホセ・ラミレスと共同開発した10弦のギターで、倍音を平均化して音量のばらつきの解決を試みたものだが、奏法が複雑化するためか一部の演奏家には支持されているものの皮肉にもギターのスタンダードとしては普及していないのが現状だ。

ただしイエペス本人は流石に開発者だけあって、この楽器をフルに使いこなして明確で豊かな音量を響かせている。

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2014年11月22日


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ジュリアン・ブリームとサイモン・ラトルの、年齢差を超越したイギリスの巨匠2人による、極めつけのギター協奏曲を収録した作品。

ブリームとラトルという、20歳もの年の差がある世代の異なる者どうしの演奏であるが、まさに、現代と古典が融合した見事な名演に仕上がっている。

特に、メインのアランフェス協奏曲において、その特徴が大きく出ている。

ブリームは、本盤が4度目の録音ということだが、それだけにアランフェス協奏曲を自家薬籠中のものとしているのであろう、随所に目が行き届いた情感溢れる演奏を行っている。

それに対して、若きラトルはきわめて現代的なアプローチを試みている。

例えば、第1楽章の冒頭の鋭いリズムなどにも表れており、感動的な第2楽章も、決して甘い情緒に流されることはない。

このようにいささか異なるアプローチでありながら、なぜこのような名演が生まれたのであろうか。

それは、察するに、両者が同曲への深い理解を持ち合わせているからにほかならないだろう。

テンポをゆったりとり、楽曲の隅々にまで目が行き届いたブリーム、それに全く独自のアプローチで迫るラトルの指揮、まさに新時代の《アランフェス》がここにあると言えよう。

武満の「夢の縁へ」は超現実の世界へと誘う楽曲だが、本盤が世界初録音とのことであり、その意味でも貴重。

現代曲で、いかにもラトルが得意とする曲だけにラトルに主導権があるような印象を受けたが、ブリームもラトルの解釈に沿うようなアプローチで見事な演奏を繰り広げている。

アーノルドのギター協奏曲も、両者の絶妙の組み合わせが成功したノリの良い演奏を楽しめる名演である。

いずれにしても、カップリングにおいてもきわめてセンスの良さを感じさせる名盤と高く評価したい。

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2008年05月07日


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以前、新婚旅行でスペインに行った友人がアランフェスで撮った写真を送ってくれた。アランフェスは、スペインの首都マドリードから南に約50キロほど離れたところにある王家の離宮のことで、その壮麗な建物や美しい庭園で知られている。

3歳の時失明したロドリーゴは、この離宮を訪れた時、栄華を誇っていた当時のスペインを思い浮かべながら、アランフェス協奏曲を作曲したのだった。

イエペスはこの曲を有名にした人だけあって、実によく練れた解釈で、作品の民族的な雰囲気を豊かに表出している。

六弦ギターを用いた、アルヘンタと共演した1回目の録音もよかったが、この4回目の録音は、十弦ギターを開発したイエペスが、完全に自分の表現を確立したものといってよい。

イエペスの演奏は音にも表情にも柔らかなニュアンスを濃く漂わせて、細かい表情の変化を魅力的にしている。

聴きどころの第2楽章でも、主題をひきついでからも繊細な情感を反映し、表情に潤いを持たせて演奏している。

この人ならではの音づくりのうまさも徹底しており、隅々にまですこぶる繊細である。

「幻想曲」の方も傑出した演奏だ。イエペスの技巧に目をみはらされる。彼の芸格の高さを示したもので、オケもすぐれている。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

よろしくお願いします(__)
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