ベッリーニ

2022年09月08日


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カラスのベルリーニ《夢遊病の女》唯一のスタジオ録音。

ステレオ以降期の録音のため、モノーラルながら音質は良い。

このスイスの山村を舞台に展開される田園的抒情劇ともいっていいこのオペラは、同じベルリーニの《ノルマ》や《清教徒》とはかなり性格も異なり、違った表現が必要となる。

ロマンティックな牧歌劇がひときわ美しい作品であり、ベルリーニならではの新鮮な音楽の魅力をほぼ満喫させてくれるのは、やはりアミーナ役のカラスが圧倒的に素晴らしいヴォットー盤である。

カラスとヴォットーは、ここでほぼ理想的な再現を行っている。

この曲のもつ室内楽的でロマンティックな情感が余す所なく示されているし、カラスの表現の幅広さを味わう意味でもこれは興味深い。

この時代のオペラを得意にする歌手も増えた現在、そろそろヴォットー盤を凌ぐ演奏が出てきてもと思うのだが、なかなかそうはいかない。

このアミーナでも、カラスがノルマや《清教徒》のエルヴィーラのようなドラマティックな役柄とはまた別の一面を見事に表現しているからにほかならない。

ここでもカラスのベル・カント・オペラにおける声の威力と表現力が申し分なく発揮されているし、共演者たちとヴォットー指揮のスカラ座のアンサンブルも作品のスタイルを見事に表現しているのだが、エルヴィーノ役のモンティの古風なスタイルがやや違和感を感じさせる。

高音と技術、表現力など、さすがにカラスならではの素晴らしさで、相手役のモンティはやや弱いけれどヴォットーの指揮とキャストも立派で充実していて、それを充分に補っている。

デビュー当時のコッソット(当時22歳)の名も見える。

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2022年06月25日


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ピリオド楽器による世界初録音であるとか、主役のアミーナにメゾソプラノを起用した原典版であるとか、本盤にはさまざまなポイントがあるが、そのようなことを度外視しても、十分に存在価値のある優れた名演である。

最近では、オペラの新譜などきわめて稀少な存在になりつつあるが、そのような中にあっては、なおさら燦然と輝く金字塔とも言える。

今日、アミーナ役は、高音域のコロラトゥーラ・ソプラノによって歌われることが、ほぼスタンダードになっているが、当初、作曲者は、メゾの声を意識して書いたもの。

ここでの演奏は、初演当時に近い楽器を使い、楽譜もなるべくオリジナルに沿っている。

何よりも、主役であるアミーナのバルトリと、エルヴィーノのフローレスの若きコンビが最高のパフォーマンスを示しているのが見事である。

今をときめく両者の共演は本盤が初めてと言うが、そうとは思えないほどの息のあった名コンビぶりだ。

特に、第1幕の二重唱は絶美の美しさで、これぞイタリアオペラの真髄を思い知らされるようだ。

また、アミーナがメゾであることも、とても新鮮だ。

バルトリは高度なテクニックも持っているし、表現力も素晴らしく、歌に込める情感が凄い。

こういう『夢遊病の女』も充分に通用する。

エルヴィーノのフローレスのベルカントが素晴らしいのは勿論だし、他の歌手陣では、ロドルフォ伯爵のダルカンジェロの歌唱が重厚な味を見せており、威厳すら感じさせる素晴らしい歌唱、アレッシオのカールマンのナンパぶりもなかなかのものだ。

これからコロラトゥーラ・ソプラノやカラスがアミーナの『夢遊病の女』と、このバルトリの『夢遊病の女』どちらも愛聴していくことになると思う。

指揮者については、筆者もあまり情報を持ち合わせていないが、本盤の見事な演奏を聴く限りにおいては、力量にいささかの不足もない。

オーケストラや合唱団も素晴らしい演奏を行っており、本盤の価値をより一層高めることに貢献している。

結果として、オリジナル楽器のオケとバルトリのメゾは良くマッチしており、指揮も録音も優れていて、このように3拍子揃ったオペラ全曲盤は久し振りであった。

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2020年03月02日


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ホセ・カレーラスが1973年のイタリア歌劇団公演で初来日し、ヴェルディの『椿姫』でのアルフレード役をレナータ・スコットのヴィオレッタとのキャスティングで歌ったのは伝説となっている。

その時まだ20代だった彼の貴公子然とした若々しい舞台姿はわが国でも人気を博した。

その後彼が歌曲をもレパートリーにし順風満帆に思えたが、カレーラスはその全盛期に白血病で倒れた。

1990年に奇跡的なカムバックを果たしてオペラ界を驚かせたが、リリコ・スピントのテノールの魅力を堪能させてくれた時期はまさにこのCDに録音された1970年代から80年代にかけての歌唱だろう。

それは3大テノールとして騒がれる以前のことで、ここでは惜しげもなく聴かせる輝かしい声の迫力と同時にリリカルな美声の魅力で抒情的な歌心を披露しながらも、様式をわきまえた折り目正しい歌唱が清々しい印象を与えている。

彼はロマン派のオペラを重要なレパートリーにしていたが、この曲集では全曲が声を最大限に優先させるイタリアの作品ばかりを集めている。

また普段は滅多に上演されることのないマイナーなオペラからの数曲のアリアがこのアルバムを一層興味深いものにしている。

ベッリーニやドニゼッティのリリシズムは単に英雄的な大音声では表現し得ない豊かな情感とテクニックで聴かせなければ面白くない。

このアリア集を聴いているとカレーラスのそれは鍛え上げられたというよりも、むしろ天性の賜物を豊富な舞台経験によって磨きをかけたという印象を受ける。

それだけに彼の自然な発露としての歌声が際立った演奏だ。

11曲目までがロベルト・ベンツィ指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のサポートによる1976年の録音で、後半のボーナス・トラックはへスス・ロペス=コボス指揮、ロンドン交響楽団との1979年のどちらもフィリップス音源になる。

CDには歌詞対訳が省略された曲目及び録音データのみが記載された素っ気ないパンフレットが付いている。

音質の方はリマスタリングの効果もあってカレーラスの情熱的な声は勿論、オーケストラの音色も瑞々しく再現されている。

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2016年07月09日


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リッカルド・ムーティの虚飾を排した原典主義が貫かれた、ベルカント・オペラの中でも最も美しい作品のひとつで、主役級の3人、クラウス、カバリエ、マヌグェッラの歌唱が指揮者の徹底した指示に良く調和したセッションだ。

ムーティは過去の歌手や指揮者達によってスコアに書き加えられた、見せ場を作るための伝統的なカデンツァや華美な装飾音を躊躇することなく取り除き、ベッリーニによって作曲されたとおりの音楽を再現しようと試みた。

それだけに全体がすっきりして、かえってこのオペラの特質が良く見えている。

しかし総てを記譜されたとおりの原調で歌うとなると、主役アルトゥーロにはテノール泣かせの超高音がこれでもかというように続出して、誰にでも挑戦できる役柄ではない。

アルフレード・クラウスは当時既に52歳だったと記憶しているが、その高貴でスタイリッシュな歌唱を崩すことなく、驚異的なテクニックで目の醒めるようなcis'''やd'''の高音を堪能させてくれる。

唯一彼が避けたのは終幕のアリアに出てくるf'''で、彼はdes'''を2回繰り返すに留めているがそれは妥当な選択だろう。

この音を歌ったのは、古いセッションではニコライ・ゲッダが出しているが、どちらもこの音の部分が強調されてしまい、曲のリリカルなスタイルからすると必然性に欠けるように思える。

ベッリーニのオーケストレーションは極めて簡潔で、声の魅力を極限まで活かすということに主眼が置かれていて、それ以外は劇中の雰囲気を盛り上げるための効果的なアクセントに過ぎないが、逆に言えばそれだけ歌詞とメロディーを密接に結び付けて、アリアや重唱にオペラの全生命を賭けた作品として仕上げた。

ムーティの傑出している点は、楽譜に託された歌詞と音楽の整合性や進行する物語への音楽的変化を注意深く捉えて、ベッリーニの書法を忠実に再現するだけでなく、そこに瑞々しいカンタービレを横溢させていることである。

勿論ムーティの手兵だったフィルハーモニア管弦楽団のオペラ演奏への理解が功を奏していることも注目される。

こうしたアプローチがしばしば指摘される台本の不自然さをカバーして、この作品の芸術性を高めているのだろう。

このセッションは、その音楽的意味合いの違いはあるにせよ1953年のトゥリオ・セラフィン指揮、カラス、ディ・ステファノの協演したEMI盤と並ぶべき名演としてお薦めしたい。

セラフィン盤は伝統的なベルカントの饗宴を実践した演奏であり、一方ムーティのそれは新時代のリニューアルされたイタリア・オペラの蘇生ともいえるのではないだろうか。

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2007年11月15日


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中世の昔からイタリア人は歌を歌い続けてきたが、その結果、16世紀末にはオペラを生み出すことにもなった。オペラはイタリア人にとってはメシよりも好きなもののようで、およそ4世紀の間、彼らはオペラを愛し続けてきたのである。

今、イタリア各地の劇場でとりあげられているオペラのレパートリーは、ロッシーニ、ベルリーニ、ドニゼッティ、ヴェルディ、プッチーニなど、19世紀のロマン派の作曲家たちの作品が圧倒的な割合を占めているが、みんなたっぷりと歌を聴かせてくれるものがほとんどである。

ドイツのオペラは、どちらかといえば演劇的な要素を重視したものが多いが、イタリアのオペラは、まずアリアを重視する。だから、イタリア・オペラを観に行く人たちは、歌手の素晴らしい歌声が目当てだといってもいいのである。プリマ・ドンナの美しい歌声に酔いしれた後、「ブラーヴァ!」と叫んで興奮するのが彼らなのだ。

18世紀以後のオペラでは、このようにアリアを重視して、歌そのものを堪能したイタリア人だが、17世紀のバロック時代には、歌だけでなく、変化に富んだ舞台も彼らの楽しみの一つだった。機械仕掛けを使って、歌手を雲に乗せて空中から登場させたりするなど、スペクタクルな舞台が、17世紀のイタリア・オペラの大きな特徴の一つだった。

ともかく、イタリアの人々にとっては、音楽といえばまずオペラだったといっても過言ではない。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

よろしくお願いします(__)
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