ドニゼッティ

2019年07月06日


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レナート・ブルゾンが40代にヴェローナのフィラルモニコ劇場で録音したガエターノ・ドニゼッティのオペラ・アリア集を中心に、更に『レクイエム』から2曲、そしてボーナス・トラックとしてヴェルディのアリア3曲が収録されている。

ブルゾンはカップッチッリ以降のイタリア・オペラ界を担った名バリトンで、幾つかの演目を観る機会に恵まれた。

カップッチッリの声は劇場の隅々まで響き渡る大音声で、声自体の魅力を最大限に発揮した大歌手時代の最後の一人だったのに対して、ブルゾンは高貴な雰囲気の漂う美声を知的な演技に活かした全く別のタイプのバリトンだった。

それは丁度その頃からアバドやムーティによって台頭した原典主義の演奏と無関係ではない。

彼らはイタリア・オペラのレパートリーで歌手が習慣的なカデンツァや高音を付け加えたり、テンポを気ままに動かすことを許さず、スコアに書かれたままの音楽を再現することによって作曲の原典を探ろうとした。

ブルゾンもこうした芸術的な傾向に賛同した歌手だった。

だから彼は作曲者が書き入れなかった装飾音や高音は歌わない。

その意味で彼の歌唱はシンプルだが、それだけにドラマ全体の筋を見極めた精緻な表現に重きを置いた新しい時代のオペラの担い手だった。

ドニゼッティはオペラ・セリアでもバリトンに重要な役柄を託したために多くのバリトン用のアリアを書いたが、ここに選ばれたオペラには『愛の妙薬』もなければ『ルチア』も含まれていない。

メジャーな作品は『ファヴォリータ』と『シャモニーのリンダ』くらいでその他は本家ベルガモのドニゼッティ劇場での上演も稀だ。

また特に英雄的な唱法も求められてはいないが、その代わりにこれでもかというカンタービレの基本が総て示されている。

こうしたアリアを歌いこなすことによって、ヴェルディのよりドラマティックな表現へ発展させることができる一種の通り道でもあり、歌手にとっても更に多様な歌唱力を養う重要な足掛かりになる作品群に違いない。

バリトン歌手がドニゼッティのアリア集のみを録音したという前例もないが、ブルゾン自身は若い頃から多くの舞台経験を積んでいて、ドニゼッティのオペラのレパートリーだけでも13の役をものしていたが、そうした経験がこのアリア集に独自の価値を与えている。

ドニゼッティの『レクイエム』は、友人ベッリーニの夭折を悼んで作曲されたもので、ここではパヴァロッティとのデュエットになる「ユデクス・エルゴ」とバリトン・ソロの「ドミネ・イエース・クリステ」の2曲のみの抜粋なのが惜しまれる隠された名曲のひとつだ。

尚ボーナス・トラックの3曲のヴェルディは、流石に当代のヴェルディ歌いとしての貫禄をみせている。

この3曲だけはライヴ録音で、ブルゾンはそれぞれのアリアでヴェローナの聴衆から大喝采を受けている。

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2011年01月31日


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1958年に収録された、カラスの正規スタジオ録音によるリサイタル・アルバムの名盤。

カラスのオペラ・アリア集は、種々の編集物を含めて多数発売されているが、それらの総集編ともいえる13枚組の「マリア・カラスの芸術」[EMI]も発売済。

その中で私がいちばん大切にしているのが、この「狂乱の場」である。

1957年と58年にカラス主演の復活上演がスカラ座で行なわれて大成功をおさめたドニゼッティの《アンナ・ボレーナ》からの約20分の抜粋に始まり、それに舞台では演じることなく終わったトーマの《ハムレット》と、全曲録音を残さなかったベルリーニの《海賊》からのそれぞれ狂乱の場を収めたもの。

カラスの声は既に短い絶頂期を過ぎてはいたが、それだけになお一層の入念な歌唱設計とコントロール、そして、その中に込める強い自己同化が、まるで自らの生命を削るが如き厳しさで、歌の中に込められる。

コロラトゥーラの「狂乱の場」が、声のサーカスではなく、ドラマとしての真実を描き出せるものであることを、カラスは証明してくれた。

最盛期をやや過ぎてはいたが、幸い喉の調子は最盛期並みで、カラスならではの劇的想像力と相まって、鬼気迫る感銘を呼ぶ。

カラスという存在の「凄さ」を存分に納得させてくれる1枚である。

このアルバムを聴けば、マリア・カラスがどれだけ凄い歌い手だったか、一瞬のうちにわかる。

カラスの芸術の偉大さを実感するのにまさにうってつけ、必聴のアルバムである。

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2010年08月09日


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旧盤はカラスの声の絶頂期を記録した素晴らしい名盤である。

このオペラにおけるルチア像をつくり上げるには、マリア・カラスが決定的といってもいいような強い影響を与えてしまった。

ルチアはコロラトゥーラ・ソプラノの名技を発揮する役として知られたが、カラスは恋に悩み悶える薄幸のヒロインに変貌させた。

彼女の存在を抜きにしては、このオペラ、およびルチアについてふさわしく語ることができない。

ここにおける彼女の声の強さ、凄さは破格のものだし、その性格描写たるや尋常一様のものではなく、聴くたびに圧倒されてしまう。

カラスは後に同じセラフィンの指揮でステレオ再録音し、それも名盤として名高いが、この録音のカラスは声に余裕があるだけでなく、オペラ界に君臨し始めた頃の瑞々しい情感がみなぎり、過度な表情をつけずに物思わしげでデリケートな若い姫君の性格を見事に描き出す。

エドガルドのディ・ステファノも若々しい声の魅力を発揮して、甘く情熱的な中にも感情表現に心をこめているし、エンリーコの若き日のゴッビも、頑迷な性格を創り上げ、すでに非凡な才能を示している。

これらの名歌手を見事にまとめているセラフィンの指揮も特筆すべきであり、フィレンツェ5月祭管弦楽団などを率いて、無駄のない、底力のある音楽性豊かでダイナミックにオペラティックな雰囲気を紡いでいるのも魅力的である。

カラスの録音における最強のコンビ絶頂期の記録で、この名盤を聴かずして「ルチア」の演奏を語ることはできない。

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2008年06月22日


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1955年、ベルリンでのライヴ録音で、音の状態はあまりよくないが、絶頂期にあったカラスの魅力をあますところなく味わうことのできる記念碑的なディスクだ。

ルチアは、カラスの最も得意としていた役で、彼女はこの前後にもセラフィンの指揮で、1953年にモノーラル、1959年にはステレオでこの作品を録音している。

いずれも白熱した名唱だが、ここではカラヤンの巧みな指揮のもとに、ドラマティックでスケールの大きな演唱を行っているところに強くひきつけられる。

心・技・体とも充実の頂点にあったカラスの絶妙な歌と表現は、まさに息を呑むばかり。

ベルカント・オペラの歌唱解釈の世界を根底から変革したカラスの、鋭い心理描写による圧倒的歌唱がここにある。

カラスはその声のトーンと色合いと強弱だけで、ルチアの喜びも幸せも悲しみも絶望も、ひいては実在性の全容までも、あますところなく歌いつくす。

「狂乱の場」はまさにその精髄といえる。

ディ・ステファノのエドガルドも、申し分のないうまさで、パネライも好演。

またこれらの歌を巧みに統率し、豊麗な音楽をつくり出しているカラヤンの指揮も素晴らしい。

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2007年11月15日


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中世の昔からイタリア人は歌を歌い続けてきたが、その結果、16世紀末にはオペラを生み出すことにもなった。オペラはイタリア人にとってはメシよりも好きなもののようで、およそ4世紀の間、彼らはオペラを愛し続けてきたのである。

今、イタリア各地の劇場でとりあげられているオペラのレパートリーは、ロッシーニ、ベルリーニ、ドニゼッティ、ヴェルディ、プッチーニなど、19世紀のロマン派の作曲家たちの作品が圧倒的な割合を占めているが、みんなたっぷりと歌を聴かせてくれるものがほとんどである。

ドイツのオペラは、どちらかといえば演劇的な要素を重視したものが多いが、イタリアのオペラは、まずアリアを重視する。だから、イタリア・オペラを観に行く人たちは、歌手の素晴らしい歌声が目当てだといってもいいのである。プリマ・ドンナの美しい歌声に酔いしれた後、「ブラーヴァ!」と叫んで興奮するのが彼らなのだ。

18世紀以後のオペラでは、このようにアリアを重視して、歌そのものを堪能したイタリア人だが、17世紀のバロック時代には、歌だけでなく、変化に富んだ舞台も彼らの楽しみの一つだった。機械仕掛けを使って、歌手を雲に乗せて空中から登場させたりするなど、スペクタクルな舞台が、17世紀のイタリア・オペラの大きな特徴の一つだった。

ともかく、イタリアの人々にとっては、音楽といえばまずオペラだったといっても過言ではない。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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