クヴァンツ

2019年10月31日


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フルートの近代的な奏法に重要な貢献をした作曲家で、フリードリッヒ大王の教師でもあったクヴァンツの7曲のソナタ集になる。

女流トラヴェルソ奏者としては既に中堅として活躍しているマリー・オレスキェヴィチの、楽器の機能を最大限に活かした流麗な演奏が美しい。

良い意味で女性的な演奏で、彼女の大先輩レイチェル・ブラウンのような強い個性や表現力ではなく、あくまでもトラヴェルソの音色の多様性とその変化を巧みに使ったデリケートな解釈を示している。

その点いくらかおとなしい印象が無きにしも非ずだ。

使用楽器はクヴァンツ自身が製作したツー・キー・モデルのコピーで、その太く艶やかな典型的なバロック盛期のトラヴェルソの音色が特徴だ。

通奏低音はチェンバロがデイヴィッド・シューレンバーグ、チェロがステファニー・ヴィアルでピッチの低さにも拘らず、速めのテンポと明確なリズムによって曲想の軽快さや名人芸の切れの良さは失われていない。

オレスキェヴィチは既にバロック時代の作曲家の作品集を5枚のCDでリリースしているが、そのうち4枚はクヴァンツの協奏曲や室内楽を集めたもので、彼女のクヴァンツへの傾倒とその情熱を窺わせている。

ライナー・ノーツの表紙にファースト・レコーディングの表示があるが、ここで使われた楽譜は作曲家の手稿譜からプリントしたものらしく、その意味では確かに初録音で、その10年ほど前にナクソスに入れたソナタ集と曲目を照らし合わせると1曲のだぶりもない。

しかし実際にはレイチェル・ブラウンが2009年2月にやはり同ソナタ集を新録音していて、その中でソナタイ長調no.274を演奏しているので、この1曲に関しては僅かに先を越されている。

尚ピッチはa'=385Hzという現代からすれば長二度以上低い、当時ベルリンの宮廷で好まれた室内楽ピッチを採用している。

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2019年10月09日


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ハンガリーのトラヴェルソ奏者、ベネデク・チャーログが1999年に録音した4曲のクヴァンツのトラヴェルソ協奏曲集で、いずれの曲もピリオド楽器による演奏としては世界初録音になる。

彼はこの時期クヴァンツの作品を集中的に研究していて、2001年には7曲のソナタ集も同様にハンガリー・フンガロトンからリリースしている。

演奏の全体的な特徴は、ピッチがa'=397,5Hzという当時のベルリンの宮廷で好まれた低いものであるために、オーケストラの音色はやや暗いが、速めのテンポが曲集全体を生き生きとさせている。

アウラ・ムジカーレは通奏低音のタンジェント・ピアノを含めて10名の室内楽編成で、コントラバスを一挺加えることによって低音の増強を図り、しっかりした和音進行とドラマティックな曲想を聴かせることに成功している。

ライナー・ノーツによれば、これはポツダムのサン・スーシー宮殿でフリードリッヒ大王が抱えていた宮廷楽団の人数及び楽器編成と一致していて、当時コントラバスはヤーニチュの担当だったことが想像される。

尚チェンバロの替わりにタンジェント・ピアノを使用しているのは、大王が初期のピアノを好んでいたためだろう。

ここで演奏されているピアノはハンガリーの鍵盤楽器奏者、ミクロス・シュパンニの所有になる。

ブダペスト出身でクイケン門下のチャーログは、既にトラヴェルソ用のソナタや室内楽を数多くリリースしていて、その情熱と意気込みはどの録音にも感じられるが、勿論目の醒めるような鮮やかなテクニックはこの協奏曲集でも面目躍如だ。

また緩徐楽章でのピリオド楽器の機能を活かした節度ある音楽性の表出には好感が持てる。

彼がこの録音に使った楽器は1750年にクヴァンツ自身が製作したベルリン・モデルをフィリップ・アラン=デュプレがコピーしたもので、写真は掲載されていないがEs音とDis音を区別する2キー・タイプと思われる。

オーケストラに対抗できる豊かな音量と線の太いクリアーな音色に特色がある。

ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツが作曲したトラヴェルソのための膨大な作品は、大王によって保管されていたために、古楽研究の隆盛と共に近年それらの楽譜校訂と共にその出版が盛んに行われるようになった。

ここに収められた4曲の協奏曲はヴィヴァルディ様式の3楽章から構成されていて、それぞれが後期バロック特有の激しい曲想や、トラヴェルソにとって効果的な華やかなパッセージがちりばめられた、捨て難い魅力を持っている。

収録曲目はト短調No.262、ニ長調No.70、ハ長調No.188及びト長調No.161で、鮮烈な音質が楽しめる優秀な録音であることも付け加えておく。

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2019年09月16日


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アヒム・クヴァンツの作品集になり、ドレスデンと後のベルリン時代の協奏曲4曲が収録されている。

ヴェンツとムジカ・アド・レーヌムは快速のテンポでクヴァンツのヴィルトゥオジティを前面に出した軽快で屈託のないイタリアン・バロック・スタイルを強調している。

テンポ設定に関してヴェンツはアメリカの季刊誌『トラヴェルソ』に寄稿したエッセイの中で、楽譜に記されたアレグロやアダージョなどの速度表示はあくまでも相対的なものであることを認めながら、拍子記号や記譜法からその作品の求める演奏速度を割り出すことが可能だと主張している。

またメルツェルに先立って1696年にはフランスでエチエンヌ・ルリエが既にメトロノームを開発していて、当時の音楽家のテンポ感覚が決して悠長なものではなかったと仮定している。

もともと一介の辻音楽家にも等しかったクヴァンツは、トラヴェルソを趣味としてこよなく愛したフリードリッヒ大王にその演奏の技量を認められて大王の個人教授になるという幸運に恵まれた。

以来彼は宮廷演奏家の中でも最も高額の2000タラーの年俸を受けていた。

これは同じ宮廷に奉職していたバッハの次男でチェンバリストのカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの7倍に当たる。

それはクヴァンツ一流の社交術の成果でもあっただろう。

しかしクヴァンツの音楽は既にオールド・ファッションになりつつあったために、それを理想として信望していた大王のベルリン宮廷は皮肉にもヨーロッパの宮廷では音楽的な大きな遅れをとってしまうことになる。

ヴェンツとムジカ・アド・レーヌムはこの演奏に当たってベルリンとゲッティンゲンの図書館からの手稿譜を採用している。

録音は1992年で、この時期彼らが契約していたヴァンガード・レーベルからのリリースになる。

オランダ、デルフトのオウド・カトリック教会でのセッションになり、潤沢な残響を含んでいるが鮮明な音質で臨場感にも不足していない。

ちなみにアンサンブルのメンバー全員の使用楽器がライナー・ノーツに明記されているが、トラヴェルソについてはパランカ、オーボエはデンナー・モデルに統一されている。

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2018年10月29日


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ジャン=ピエール・ランパルのHMV及びエラート音源の集大成全4巻計69枚のCDのうち、2015年の春にリリースされた2セットに続く後半の2セットのひとつになる。

第1巻から第3巻まではクロノロジカルな編集がされていて、この23枚組にはランパル円熟期の1970年から82年にかけてのステレオ録音がまとめられている。

今回発売されたランパル全集中で、録音も新しく枚数も一番多いボックスになるが、クロエ、ルクレール、ブラヴェ、メルカダンテ、ジアネッラといったあまり著名でない作曲家の作品が数多く含まれている。

バッハやモーツァルトの有名な曲は3回位録音し、音楽史上残されたあらゆる作品を片っ端から録音していく姿勢は、同世代のトランペットの名手モーリス・アンドレと相通じるものがある。

音質も4巻の中では最も良く、全体的に中音部がやや薄い欠点はあるが、音源の保存状態も良好だ。

フルート奏法の芸術的な洗練はマルセル・モイーズを抜きには語れないが、モイーズが去った後のフランスのフルーティストの系譜を鮮やかに更新したのがランパルであることは間違いないだろう。

彼のフルートは奇しくもモイーズの詩的で、ある種哲学的なスタイルとは一線を画した屈託のない即興性と華麗な音色が魅力だ。

1970年代のランパルはまさに絶頂期で、テクニック、音楽性、音色が最高レベルでかみ合っていて、クヴァンツやレクレールといったシンプルな音楽が、愉悦に満ちている。

こういう音楽を生き生きと聴かせるのは存外難しく、ランパルを否定する笛吹きも多いのだが、ランパル以上にこういった作品を聴かせるフルーティストがいないのではないか。

ランパルのほとばしる音楽性と芳醇な音色が、音楽の愉悦を与えてくれるし、鳴らすまで8年かかったというヘインズが神がかり的な音で響いている。

また、ハチャトゥリアンの協奏曲や一世を風靡した『ハンガリー田園幻想曲』、『ヴェニスの謝肉祭』に代表される彼の情熱と天衣無縫さの背後にはそれを裏付けるだけの理論とテクニックが控えていることは言うまでもない。

それぞれのジャケットにLP初出時のオリジナル・デザインがプリントされているが、CD化でのリカップリングでものによっては3種類のが1枚のジャケットに組み合わされて印刷されている。

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2015年08月15日


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ピリオド楽器を使ったバロック室内合奏団コレギウム・ムジクム90は、バロック・ヴァイオリン奏者のサイモン・スタンデイジによって1990年に発足した。

スタンデイジはトレヴァー・ピノックが率いたイングリッシュ・コンサートの最初のメンバーの1人で、彼らの演奏もピノック譲りの快活さを持っているが、更にレパートリーの枝葉を広げて比較的マイナーな曲にも目を向けている。

その音楽の解釈は古楽の忠実な再現が基本的で、比較的地味かも知れないが少数精鋭の隙のないアンサンブルを聴かせてくれる。

この曲集では過去にも多くの協演をしているイギリスの女流トラヴェルソ奏者レイチェル・ブラウンを迎えて3曲を収録していて、ベルリンの宮廷音楽の特質を良く捉えている。

ブラウンは個性的なアゴーギクと強い吹き込みやブレスのテクニックを使って、従来のオランダ系トラヴェルソ奏者とは明らかに対照的な演奏をするが、また強い説得力を持っていることも認めざるを得ない。

フリードリヒ大王の宮廷音楽と題されたこのCDには、当時のベルリンで活躍した4人の音楽家と大王自身の作品の都合6曲が収められている。

選曲で工夫を凝らしてあるのは、宮廷では冷遇されていたバッハの次男カール・フィリップ・エマヌエルの作品を2曲取り入れたことだ。

クヴァンツは1752年に『フルート奏法試論』を世に出したが、彼はすかさず翌年に『正しいクラヴィーア奏法試論第1部』を公表する。

実際クヴァンツの曲は特にチェンバロ・ソナタにその典型が示されているように、曲想やそれに伴う和声の変化が斬新かつ独創的で、こうした作品が後の時代の作曲家に及ぼした影響は測り知れないだろう。

しかし出る釘は打たれるという例えのように、彼の作品はクリストフ・ニシェルの批判に晒され、挙句の果てに減俸になってしまう。

今でこそ弟クリスティアンと並んで高い評価を受けている作品群は、ベルリンでの不運に粘り強く堪えた時期の成果ともいえる。

収録曲目は1.カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ『トリオ・ソナタ変ロ長調』

2.フランツ・ベンダ『ヴァイオリン・ソナタイ短調』

3.フリードリヒ大王『フルート・ソナタハ長調』

4.カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ『チェンバロ・ソナタイ長調』

5.ヨハン・ゴットリープ・グラウン『トリオ・ソナタト短調』

6.ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ『フルート協奏曲イ長調』

ピッチはa'=415で、1993年のセッションで録音レベルがやや低い嫌いはあるが、音質自体は良好だ。

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2015年08月05日


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英国を代表する女流トラヴェルソ奏者、レイチェル・ブラウンが1996年に録音したクヴァンツの7曲のソナタとフリュート・ダムールのためのメヌエットが収録されている。

選曲を見るとフラット系の調性のソナタが前半を占めているが、この手の曲は当時のトラヴェルソでは指使いが複雑になリ、音質も息漏れの多い弱いものになってしまう。

しかしブラウンは楽器の弱点をカバーして余りある恐るべきテクニックを披露している。

彼女の使用楽器は1740年製2キー・タイプ・クヴァンツ・モデルからのルドルフ・トゥッツの手になるコピーで、調性に対してもオールマイティーな性能が示されている。

材質はライナー・ノーツの写真から判断すると拓殖材でa'=415Hzのスタンダード・バロック・ピッチを採用している。

彼女が2009年に録音した2集目のクヴァンツ・ソナタ集『プライベート・パッション』でベルリン宮廷で好まれた低いピッチを採用しているのと対照的だ。

一方通奏低音を受け持つチェロのマーク・コードルは1770年製のシャピイのオリジナル、チェンバロのジェームズ・ジョンストンは1704年製のミートケ・モデルのコピーを演奏している。

尚メヌエットのみに使われているフリュート・ダムール(愛のフルート)と呼ばれる低音トラヴェルソは1720年製デンナー・モデルのコピーで、当時の人々のフルートの音色への好みが後の時代の主流になる、かろやかな高音を活かしたパッセージよりも、むしろ低音のしっとりした情緒が好まれたことを示唆していて興味深い。

この通奏低音付のメヌエットはフリードリッヒ大王の練習帳に含まれるテーマとヴァリエーションからなる小品だ。

ブラウンのトラヴェルソには文学的なレトリックやそれぞれの曲の調性の持つ特質を演奏に活かした知的なアプローチと、男性顔負けのエネルギッシュな推進力が両立している。

私達が現在それほど気に留めない調性の特質から醸し出される雰囲気や、心理的な影響はバッハやマッテゾンによっても伝えられているが、ブラウン自身の著書『初期フルートのプラティカル・ガイド』でも明らかにされているように、彼女自らの演奏で実践していたストラテジーでもある。

このCDでもひとつひとつの作品が極めて個性的な特徴を持って表現され、音楽的な質の高さから言えば二流止まりのクヴァンツの音楽が、実はトラヴェルソの機能を駆使した、当時の宮廷人にとっては最も魅力的な音楽であったことが想像される。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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